「第11回 shiseido art egg」展で見る3人の新進アーティストのいま
2006年にスタートした新進アーティストの活動を応援する公募展「shiseido art egg」(シセイドウアートエッグ)が今年、11回目の開催を迎える。本年は吉田志穂、沖潤子、菅亮平の3作家がそれぞれ個展形式で作品を発表する。
1919年のオープン以来「新しい美の発見と創造」という考えのもと、100年近くにわたり、活動を継続してきた資生堂ギャラリー。2006年にスタートした新進アーティストの活動を応援する公募展「shiseido art egg」(シセイドウアートエッグ)では、活動理念、作品のクオリティー、「資生堂ギャラリーの空間でなにをどのように表現しようとしているのか」の3点を評価のポイントとして審査を行い、毎年3組のアーティストを選出し、個展形式で展覧会を開催してきた。
第11回目となる17年度は、全国各地より279件の応募があり、吉田志穂、沖潤子、菅亮平が入選。6月2日~8月20日にかけ、それぞれの個展を開催する。
第1弾の吉田志穂は、ウェブやスマートフォンによって写真が日常生活の身近な存在になった現在、写真の可能性を自在に探究するインスタレーションを制作している。自ら撮影した写真とウェブ上に存在する様々なイメージを取り混ぜながら、新たな写真表現の次元に迫る。
また沖潤子は、個人的な、あるいはなんらかの物語が垣間見える古布に、自己流で始めたという繊細な刺繍を施す。布が経てきた時間と、その記憶に沖の針目が重ね合わされることで、偶然性が含まれたオブジェが出現。既存の刺繍や工芸といったジャンルにとらわれない独自の表現を探求する。
菅亮平は、美術館やギャラリーに特有の展示スペースである「ホワイトキューブ」をモチーフとして作品を制作。美術作品が消し去られた空虚な空間が展示スペースの壁を越えて、際限のないイメージとして連続していく。実在する展示スペースの中に迷路のような錯覚を出現させ、そこで美術作品を見るという鑑賞者の視覚体験を揺さぶる。
この3人の新進作家たちが、資生堂ギャラリーをどのような空間に変容させるか、注目が集まる。会期中にはそれぞれのギャラリートークも開催。
なお3つの個展終了後、宮永愛子(美術家)、中村竜治(建築家)、岩渕貞哉(『美術手帖』編集長)、が審査員となり、3つの個展のなかから「shiseido art egg賞」が選出される。こちらもあわせてチェックしたい。