写真家としての落合陽一が見せる質量と物質感。「質量への憧憬」展がamana squareで開幕
メディア・アート作品の制作、実世界志向コンピューティングの研究、教育活動、書籍執筆など多岐にわたる活動を行う落合陽一。その写真家としての一面に迫る展覧会「質量への憧憬 ~前計算機自然のパースペクティブ~」が東京・天王洲のamana squareで開幕した。
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メディア・アートを含む一連の制作において、「イメージによる表現」と「物質による表現」の間にある表現の可能性について探求し続けてきた落合陽一。その表現方法のひとつとして、「写真」を通して、デジタルでしか見えない世界認識で失われつつあるものを切り取るとともに、手触りを与えるプロセスを通した時間と空間の解像度との対話を試みてきた。
amana squareで1月24日に開幕した「質量への憧憬 〜前計算機自然のパースペクティブ〜」は、そんな落合の「写真家」としての一面に迫り、美的感覚やイメージをたどろうというものだ。
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年間約2万点近くの写真を撮影するという落合自らがピックアップした約2000点が並ぶ会場は大きく2部に分かれる。まずは、落合が「自分が好きなものをひたすら撮影した写真が集まっている」というスペース。
ここには、落合が「質量と時間性を感じるから」と語る、枯れゆく花の写真や街角の看板写真、「波」が好きだという落合が神戸港で撮影した海辺の写真や、ピンボケの生じやすいレンズをあえて使用した写真などが並ぶ。
また本展には写真作品だけでなく、新作インスタレーション作品も展示されている。「自宅に飾ることがイメージしやすい、卓上サイズのインスタレーション作品」という落合の最近の取り組みもここでは見ることができる。
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「これまでの自分のメディア・アート作品では表現できていなかった物質性、そしてデジタルの次にある触感を探求したかった」と話す落合が奥のスペースで展示を行うのは、「質量」とともに重要なテーマである「物質性」を標榜する作品たち。会場の各所にはコンクリートブロックが置かれ、被写体にもコンクリートが目立つ。それは、朽ちていく様子から「物質性」が喚起されるからだという。そして、郊外に立ち並ぶ送電線、海岸の電柱なども同様の文脈によって撮影されている。
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「風の谷のブレードランナー」とは、落合とその友人との会話の中で生まれた、『風の谷のナウシカ』と『ブレードランナー』の物語の中間にあるようないまの日本の姿を表す言葉。そんな落合の日本観が投影された光景が壁一面に並ぶ。
いっぽうでは、落合が集中して原稿を執筆していた時期に撮影した写真や、写真技術の先駆者であるタルボットが発明した写真印画法「ソルトプリント」による写真作品など、落合にとって自らを振り返る契機・実験としての作品も発表。会場全体には写真家として、あるいはひとりの人間としての眼差しが立体的に立ち現れてくるような、これまでの落合作品とは一線を画すイメージが表出している。
本展にあわせて写真集『質量への憧憬』も200部限定で発売されるため、こちらもチェックしてほしい。
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