2019.7.18

虫の世界へようこそ。21_21 DESIGN SIGHTで「虫展 −デザインのお手本−」が開幕

虫の多様性や人間との関係性からデザインの新たな一面を学ぶ展覧会「虫展 −デザインのお手本−」が、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTでスタート。ディレクションにグラフィックデザイナーの佐藤卓を、企画監修に解剖学者・養老孟司を迎えた本展の見どころとは?

展示風景より、隈研吾建築都市設計事務所+佐藤淳《極薄和紙の巣》
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 人類よりもはるかに長い歴史のなかで進化を続けてきた虫。多様なその姿を着想源に、デザイナーや建築家、アーティストが作品を発表する展覧会「虫展 -デザインのお手本-」が21_21 DESIGN SIGHTで開幕した。

 ディレクションにグラフィックデザイナーの佐藤卓を、企画監修に解剖学者・養老孟司を迎えた本展。佐藤は「小さい時から昆虫採集に勤しんでいて、いつか虫の展覧会をやりたいと考えていたんです。今回企画をして、もっと虫が好きになってしまいました」と語る。

展示風景より、佐藤卓《シロモンクモゾウムシの脚》

 会場ですぐ目に入るのは、佐藤卓が手がけた巨大な《シロモンクモゾウムシの脚》。昆虫写真家・小檜山賢二による精密写真を元に、シロモンクモゾウムシの左中脚を700倍に拡大した作品だ。壮大なスケールを感じさせる同作の向かいには大小様々な虫の標本が展示され、鑑賞者を小さな生き物の世界へと引き込む。

 またその奥では、阿部洋介《虫のかたち》が展開。写真を小檜山と丸山宗利が、音楽を蓮沼執太が手がけた同作は、まさに虫たちの美しさを体験できる「昆虫のミュージックビデオ」となっている。

会場風景
展示風景より、隈研吾建築都市設計事務所+江尻憲泰《磁石の巣》

 続く大きな展示室では、虫を「デザインのお手本」とした作品群が一堂に会する。養老による虫のための慰霊碑「虫塚」のデザインでも知られる建築家の隈研吾は、日本の建築構造設計を代表する3人とともに、トビケラが水中で身近な材料を集めてつくる巣をモチーフに作品を発表。磁石と接着剤を用いた人間のためのシェルターである《磁石の巣》、髪の毛とナッツの殻を組み合わせたパネルで建てた《髪の巣》、そして世界で最も薄い和紙で作られた《極薄和紙の巣》を見ることができる。

会場風景

 また、東京大学教授・山中俊治を中心としたチームは《READY TO FLY》を発表。同作は甲虫が翅(はね)を折り畳む精巧な構造を3Dプリンターで再現したもので、実際に作品に近づくと翅を広げる動作が始まる。そのほかにも虫のメカニズムの応用として、アメンボの数百倍の大きさのドームが表面張力によって水の上に自立する吉泉聡(TAKT PROJECT)による《アメンボドーム》などの作品にも注目してほしい。

展示風景より、山中俊治+斉藤一哉+杉原寛+谷道鼓太朗+村松充《READY TO FLY》のモチーフである甲虫(カブトムシ)
展示風景より、岡篤郎+小林真大《MAO MOTH LAOS》

 加えて会場には、人間が自然を扱う際の「名付け」や、虫を前にしたときの気持ち悪い/美しいといった感情など、人と虫との関係にもフォーカスを当てた作品が並ぶ。特定の虫をモチーフとした作品の隣にはその虫の標本が展示されているため、見比べて楽しむこともできる。また、養老の言葉を記した「養老語録」や豆知識のほか、虫をもっと知るための「虫トピックス」が点在。こちらも探しながら歩いてみてはいかがだろうか。

展示風景より、虫の標本群

 ありとあらゆる問題に直面し、それを解くことで生き延びてきた虫たち。本展では知れば知るほど不思議な虫の世界を通して、デザインの新たな一面を描き出すことを試みる。「虫は苦手」という人も、この機会にぜひ奥深い虫の世界へ飛び込んでみてほしい。