新型コロナを受け発足。香港アートコミュニティによるオンラインプラットフォーム「ART Power HK」とは?
香港の美術館・博物館やアートセンター、ギャラリー、オークションハウスなどが立ち上げたオンラインのプラットフォーム「ART Power HK」が、3月16日にスタートした。一連のプログラムを通し、目指すものとは何か?
新型コロナウイルスによって活気を失った香港。そのアートシーンを活性化させるため、地元のアート関係者らが有志で立ち上げたのが、オンラインプラットフォーム「ART Power HK」だ。3月16日にオンラインで開催された記者会見では、その詳細が発表。約2ヶ月にわたるキャンペーンがスタートした。
香港では、新型コロナウイルスの影響で「アート・バーゼル香港2020」をはじめ、一連のアートイベントや展覧会が中止となった。これがきっかけとなり発足した「ART Power HK」では、3月から5月末にかけ、ギャラリーツアーやアーティスト・インタビュー、スタジオ訪問など、ギャラリー・美術館・博物館などのパートナーによって提供されるオンライン・プログラムが、ウェブサイトに公開される。
主催のひとつであるアジア協会香港センターのディレクター、S・アリス・モンは記者会見で、「『ART Power HK』はコマーシャルなものではなく、コラボレーティブでコミュニティを前提とした理念に基づいたもの」と強調。「香港のアート・コミュニティの存在感を高め、芸術やテクノロジー、ビジネスなど複数の産業を横断した、香港が持つグローバルなリーダーシップに光を当てる」と語る。
また、ワーキング・グループのメンバーのひとりで「シンクレア・アーツ」設立者兼CEOであるキリ・シンクレアは、ART Power HKでは「アートを販売しない」と言う。「芸術や文化、デザインのためのリソースを活用するとともに、企画の範囲を拡張していくことで今後の活性化につなげたい」。
5月には、成果物として一連のイベントを開催。アーティストやキュレーターによるトークやツアー、ギャラリーや美術館での新たな展覧会、慈善・非営利活動、企業によるパブリック・アートの設置、オープン・スタジオ、オークションセールス、教育プログラムなどが予定されている。
モンは、「このプログラムは香港地域全体にわたるアートカレンダーを強化する」としつつ、「2020年の香港アートシーンにおいて中核的な役割を果たし、あらゆる組織が香港の芸術を寿ぐための触媒になることを目指す」と期待を寄せる。「『ART Power HK』は、アート・コミュニティを団結させるプログラム。(これまでと)形式が違うだけ」。
なおART Power HKは、資金調達のためにクラウドファンディングを実施。単独の企業や組織に支配されないため、スポンサーシップ・プログラムは設立しない。
新型コロナウイルスの影響でこれまでにない事態に直面する今年のアート界。この香港の新たな試みはどのような効果をもたらすだろうか。