銀座の三愛ドリームセンターに「RICOH ART GALLERY」がオープン。立体印刷技術を使った梅沢和木の個展を開催
東京・銀座の三愛ドリームセンター内に「RICOH ART GALLERY」が6月5日にオープン。オープニングを飾るのはリコーの立体印刷技術を使用した梅沢和木の新作個展「画像・アラウンドスケープ・粒子」だ。会期は6月5日〜7月3日。
東京・銀座4丁目の交差点に1963年に設立された全面ガラス張りの円柱型ビル「三愛ドリームセンター」。6月5日、その8階と9階のスペースに「RICOH ART GALLERY」がオープンする。
「RICOH ART GALLERY」は、リコーのテクノロジーをアーティストが活用し、「アナログとデジタルの融合」をテーマに新たな価値を目指すというコンセプトのもと誕生したギャラリーで、展示作品の販売も行う。
オープニングを飾る展覧会は、梅沢和木による「画像・アラウンドスケープ・粒子」(6月5日〜7月3日)。白い壁面で囲われホワイトキューブとなった8階のスペースを中心に開催され、リコーのプリント技術「StareReap」の技術者と対話をしながら制作された新作が並ぶ。「StareReap」とは、インクジェットプリンタ技術を応用し、インクの粒子を噴射し定着させることで、細かな凹凸をつくり上げていく技術だ。
これまで、インターネット上に存在する画像データなどをコラージュし、ときにはペインティングを重ねながら、デジタル画像を現実の物質として定着させる試みを行ってきた梅沢。今回は「StareReap」の技術を使用し、いくつものレイヤーが積層したフォトショップのデータをベースに、各層の高さなどを調整しながら立体的にプリント出力。そこにペイントを施すことで、作品をつくりあげた。
梅沢は今回の試みについて次のように語る。「今回の作品は『StareReap』の技術者と対話をするようにつくりあげた。データ上の各レイヤーをどのように立体化するのか指示はしたが、それだけでは伝えきれない情報をデータから技術者が汲み取って表現をしてくれた。さらに私がアクリル絵具で加筆をしたが、この過程によって技術によって生み出された造型と対話をするような経験ができた」。
デジタル画像はピクセルを最小単位として生み出されるが、今回の作品群もインクの粒子が噴射され定着することでつくられており、展覧会タイトルのキーワードとなる「粒子」も、ここから取られたものだという。
また、梅沢は加筆する過程で、モチーフとなっている「キャラクター」についても示唆を得ることができたという。「平面のキャンバスへのペイントとは異なり、立体的な造型という制限のなかで筆を動かすのは、例えば顔に化粧を施す行為にも似た感覚が得られた。これは、立体的な造形物となったキャラクターがこちらの筆を制限しているとも考えることができる。このことで、キャラクターがより実存を持って現れてきた」。
9階スペースはビルの特徴である曲面のガラス張りのラウンジとなっており、銀座の街を見下ろすことができる。ここでも、梅沢による壁画や、過去のドローイング作品、プリントされたままの試作品などを見ることが可能だ。
今後「RICOH ART GALLERY」では、横田大輔や金氏徹平が展示を予定している。多くのギャラリーや画廊を有する銀座の中心地に、新たなアートスポットが加わった。