ライブペインティングも披露。金魚絵師・深堀隆介の個展が日本橋三越本店でスタート
立体的な金魚絵を描く「金魚絵師」として知られる深堀隆介の個展「深堀隆介展『金魚解禁 日本橋』」が日本橋三越本店で開幕。初日となる7月27日には、深堀によるライブペインティングも披露された。
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独自の技法により立体的な金魚絵を描くことで知られる美術作家・深堀隆介。その個展「深堀隆介展『金魚解禁 日本橋』」が、日本橋三越本店で始まった。会期は8月8日まで。
深堀は1973年愛知県生まれ。2000に制作に行き詰まりアーティストを辞めようとした時期、部屋で飼っていた一匹の金魚に初めて魅了され、以後はこの体験を「金魚救い」と呼び、金魚絵の制作を開始。器のなかに樹脂を流し込み、その表面にアクリル絵具で金魚を少しずつ部分的に描く作業を繰り返すことにより、まるで生きているかのような金魚が現れる代表作シリーズ「金魚酒」が誕生した。
昨年12月から今年1月にかけて上野の森美術館で開催された「金魚鉢、地球鉢。」をはじめ、近年はニューヨーク、ロンドン、ミュンヘン、香港など世界各地で個展を開催し、大きな注目を集めている。また、ライブペインティングやインスタレーションにも力を入れ、表現と活動の幅を広げている。
本展の初日となる7月27日には、本館1階 中央ホールにおいて深堀によるライブペインティングが披露。5階まで吹き抜けの空間にそびえ立つ高さ約11メートルの壮大な天女像の前で、サウンドスケープ(音風景)をデザインする音楽家・斉藤尋己によるシンセサイザーの音色にのせて、巨大な金魚絵が生み出された。
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ライブペインティングの作品は約70分にわたって完成。事前に描かれた日本橋のモチーフのなかに、江戸時代にこの場所にたどり着くための屋形船や、日本橋三越本店の内装に使われている大理石のなかに含まれたアンモナイト、ライブペインティングの会場にある天女像、コロナ前の生活に戻るという願いが込められた花火など、事前にツイッターで募集したという様々なモチーフや、江戸時代の日本橋を起点に伸びる「五街道」や「PEACE」「NO WAR」などの文字が描かれていく。
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描かれた画面に、深堀は水鉄砲で水を与えてそれらのモチーフを馴染ませる。乾燥させた画面に金魚の鱗を描き、そのうえに顔料を加えながらブラシで馴染ませる作業を繰り返すことで、色彩豊かでありながら透明感もある金魚の体が現れる。そして、躍動感のあふれる筆致で紫色の胸ビレや尾ビレが描かれ、作品が完成する。
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ライブペインティング後のミニトークで深堀は、五街道の最初の拠点である日本橋は「架け橋」のような場所であり、「平和」など様々なモチーフを金魚のなかに描いたと話す。「紫色の金魚はいないけど、(通常の金魚の色である)赤や黒のあいだにある紫色も掛け橋のように、いろんなものを繋ぎ合わせる、『手を繋ごうよ』という思いで描いた」。
また、本館7階 催物会場で始まった展覧会では、深堀の代名詞である「金魚酒」をはじめ、絵画の大作など約40点が展示。なかでも、日本橋の江戸前寿司「蛇の市本店」や日本料理「日本橋 ゆかり」など、地域の店で実際に使われていた爪楊枝入れや寿司下駄、器のなかに金魚を描いた新作も発表されている。
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