チームラボボーダレスの注目作品をピックアップ
お台場から麻布台ヒルズに移転した「チームラボボーダレス」(2月9日開館)。すべての作品がボーダレスにつながるこの施設で、とくに注目したい作品をピックアップしてお届けする。
2022年8月に閉館したお台場の「森ビル デジタルアート ミュージアム:チームラボボーダレス」が、麻布台ヒルズ内に移転。施設面積約7000平米というこの巨大施設の全貌が公開された(開館日は2月9日)。
チームラボボーダレスは、アートコレクティブ・チームラボの境界のないアート群による「地図のないミュージアム」。全体で50以上の作品があるが、アートは部屋から出て移動し、他の作品と関係し影響を受け合い、ときに混ざりあう。まさにボーダレスなひとつの世界を構成しているのが大きな特徴だ。
ここでは、膨大な作品のなかから新作を中心に注目作品を紹介したい。
まずはエントランス。この空間を指定の位置付近でカメラで見ると、「teamLabBorderless」の文字が空間に浮き上がる。しかし、同じ場所で肉眼で直接見ても、文字は浮き上がることはない。この作品は、「人間はレンズのように世界を見ていない」ということを示唆するもので、チームラボを設立した猪子寿之のレンズへの興味関心を端的に表したものだと言えるだろう。
《人々のための岩に憑依する滝》は、チームラボボーダレスを象徴するような作品。「人々のための岩」を仮想の三次元空間に立体的に再現。そこに水を落下させ、岩の形による水の動きをシミュレーションすることで滝が描かれている。床に流れ出した水は、鑑賞者の動きによって変化を見せる。またこの作品の周囲では、プログラムによってリアルタイムで描かれ続ける《花と人、コントロールできないけれども共に生きる》をはじめとする別作品も混じり合う。
新作となる「ライトスカルプチャー- Flow 」シリーズは、複雑に制御された光によって巨大な「彫刻」を生みだし、それらが押し寄せ、広がり、人々を飲みこんでいくというもの。現実空間とミラーの中の世界を光が行き来する。
無数の光の柱で埋め尽くされた《Infinite Crystal World》は、2013年のクリスタルツリーから続く「Light Sculpture - Point」シリーズのひとつ。光の彫刻群が無限のように広がっており、鑑賞はがスマートフォンから自ら選んだ世界の構成要素を投げ込むことで、そこに立体物のような像が生まれるというものだ。
《マイクロコスモス- ぷるんぷるんの光》は、奥行きが判別できないほど広がる空間の中を、無数の「ぷるんぷるん」の光が走り続けるというもの。「構成要素が空間的時間的に離れていたとしても、全体に異なった秩序が形成され、重なり合う時、それは、宇宙か?」を模索する作品だという。
《中心も境界もない存在》は、目の前にある黒い核のようなものを掴もうととすると反応して変化するが、決して実体に触れることはできない。まさに空を掴むような感覚を抱く作品で、認識と存在について問いかけるものだ。
《Bubble Universe》は、チームラボの新たなアートプロジェクトである「認識上の彫刻」をテーマにしたインタラクティブな作品。空間は無数の球体群によって埋め尽くされ、それぞれの球体の中には異なる光の存在が入り混じっている。
高低差のある空間に広がる《地形の記憶》は、里山の景色を描くもの。現実の時間の流れとともに作品世界も移ろい、作品の中を人々が動き回ることで空気の流れが変わり、稲や散る花びらの動きに影響を与えることができる。自然の景色が二度と同じものではないように、同じ瞬間は二度と見ることができない作品だ。
「共創」をコンセプトにした作品《スケッチオーシャン》は、来場者が紙に描いた魚が、他者が描いた魚たちと共に目の前の海で泳ぎだすというチームラボの人気作品。魚は人々にインタラクティブに反応しながら、部屋を出て、他の作品の境界を越えてチームラボボーダレスの中を泳いでいく。またマグロは世界の他の場所で行われているチームラボの展覧会へと国境を超えていくという、まさにボーダレスな作品だ。
なお、チームラボボーダレス内にあるティーハウスでも作品を楽しめる。一服の茶を点てると、そこに花が生まれ、無限に咲き続けていく《小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々》。無限に広がる世界をそのまま飲むティーハウスは、同館の最後に体験したい。