2024.10.4

マティスの油彩画、銀座で無料公開。ポーラ美術館の所蔵作品

東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスが、ポーラ銀座ビル15周年を記念した展覧会「マティス ― 色彩を奏でる」が始まった。会期は10月27日まで。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

展示風景より、アンリ・マティス《リュート》(1943)
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 今年が没後70年にあたるアンリ・マティス(1869〜1954)。その作品を無料公開する展覧会「マティス ― 色彩を奏でる」が、東京・銀座一丁目にあるポーラ ミュージアム アネックスで始まった。会期は10月27日まで。

 アンリ・マティスは20世紀を代表する画家のひとり。フランス北部に生まれ、パリへ出て美術学校などで学んだ後、1905年のサロン・ドートンヌに原色を多用した荒々しい筆致による作品を出品。「フォーヴ」(野獣)の画家と評された。1917年以降は制作の拠点をニースへと移し、地中海の明るい光のもと、あざやかな色彩によって室内の女性像を数多く制作。晩年には、戦争や自身の病といった困難のなか、「切り紙絵」の手法を採り入れて意欲的に作品を制作し、挿絵本『ジャズ』やロザリオ礼拝堂の装飾プログラムなど、精力的な活動を見せた。日本ではここ2年で「マティス展」(東京都美術館、2023)、「マティス 自由なフォルム」展(国立新美術館、2024)が開催され、大きな注目を集めたことはい記憶に新しい。

 本展は、ポーラ ミュージアム アネックスが入るポーラ銀座ビルの15周年を記念するもの。ポーラ美術館所蔵のマティス作品が銀座に集結した。

展示風景より

 まず注目したいのは油彩画だ。会場に並ぶのは、ポーラ美術館が収蔵するマティスの油彩画7点のうち5点、《紫のハーモニー》(1923)、《中国の花瓶》(1922)、《室内:二人の音楽家》(1923)、《襟巻の女》(1936)、そして《リュート》(1943)だ。いずれもマティスが生涯を通して描き続けた室内画で、ニース時代の作品となる。

 とくに《リュート》は、すでにマティスが切り紙絵に取り組んでいた頃にニースのレジナ・ホテルで描かれた作品。鮮やかな赤と青と緑で構成された画面の中で繰り返される葉のモチーフ、リズミカルなドレスの模様などからは、制作の厳しさの向こうにあるマティスの描く楽しみが読み取れるだろう。

展示風景より、アンリ・マティス《紫のハーモニー》(1923)
展示風景より、アンリ・マティス《中国の花瓶》(1922)
展示風景より、アンリ・マティス、《室内:二人の音楽家》(1923)
展示風景より、アンリ・マティス《襟巻の女》(1936)、《リュート》(1943)
展示風景より、アンリ・マティス《リュート》(1943)の部分

 いっぽう、マティスが晩年取り組んだ切り紙絵の傑作と言われる『ジャズ』(全20図)にも注目だ。同作は、マティスの版画20点と手書きの文章が組み合わさったもの。もともと「サーカス」と名づけられていたこの作品。躍動感と緊張感に満ちた画面をじっくりと鑑賞してほしい。

展示風景より、アンリ・マティス『ジャズ』(1947発行)
展示風景より、アンリ・マティス『ジャズ』(1947発行)
展示風景より、アンリ・マティス『ジャズ』(1947発行)

 なお、会場中央には中世フランスの王侯詩人シャルル・ドルレアンの詩からマティスが詩篇を選び、手書きのテキストとイメージで構成した挿絵本『シャルル・ドルレアン詩集』も展示されている。

展示風景より。『シャルル・ドルレアン詩集』(1950刊行)

 各作品を間近で楽しめるように、コンパクトな構成となっている本展。それゆえに、大型展では難しい、1点1点とじっくり向き合う体験ができるだろう。

 なお、会期中には対話型鑑賞会(10月7日)、赤ちゃん鑑賞会(10月15日)、ギャラリートーク(10月13日)、切り紙のワークショップ(10月13日・14日)などの関連プログラムも用意されているので、興味のある方は同館公式サイトをチェックしてほしい。