Museum from Home:東京ステーションギャラリー「神田日勝 大地への筆触」
新型コロナウイルスの影響で、会期途中で閉幕した展覧会や臨時休館となってしまった展覧会を紹介する「Museum from Home」。第26回は、開幕が未定となっている東京ステーションギャラリー「神田日勝 大地への筆触」をご紹介します。
32歳という若さで世を去った画家・神田日勝。1937年に東京の練馬で生まれ、7歳のときに神田一家は北海道に入植。敗戦後、国からの援助もほとんど得られないなか、荒れ果てた土地を開墾して農業で生計を立てていた。
後に東京藝術大学に進む兄の影響で油絵を描き始めた日勝。中学卒業後は、農業を続けながら絵を描く道を選んだ。北海道内の展覧会が主な発表の機会だったが、その作品は徐々に高い評価を得るようになっていく。
64年には独立展に初入選。その後も順調に入選を重ね、日勝の作品は同時代美術の影響も取り込みながら、大きな変貌を遂げていく。しかしながら70年の夏、日勝は農作業、制作、展覧会の準備などに忙殺されるなかで体調を崩し、最後の作品を完成させないまま逝去した。
日勝没後50年となる今年、40年ぶりの本格的な回顧展として開かれる「神田日勝 大地への筆触」。短い活動期間ながらも、農耕馬や牛を緻密な描写で表現した時期から、カラフルな色彩と明瞭な形態が躍動する大画面の作品、そして最晩年の原点に回帰したかに見える丹念な描写まで、代表作を網羅して日勝芸術の全体像を提示する。
また、これまで「農民画家」という括りで語られることの多かった日勝だが、前衛画家という一面をもっていた。最新の研究をもとに、同時代作家の曺良奎や海老原喜之助、北川民次、海老原暎らの作品を併せて展示。その芸術の時代性と位置づけを探り、新たな日勝像も明らかにする。