EXHIBITIONS

内藤礼「breath」

内藤礼 タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください) 2023
水、ステンレスに塗装 ミュンヘン州立版画素描館「breath」展展示風景 撮影=畠山直哉

 タカ・イシイギャラリー京橋で、内藤礼の個展「breath」が開催される。

 内藤は1961年広島県生まれ、現在東京を拠点に活動。1985年に武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業した。91年に佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、97年には第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館にて同作品を展示。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫したテーマとした作品を手がけている。

 本展で発表される《color beginning / breath》は、2020年、紙に絵具を置き「色彩(生)」が顕れた瞬間に心に沸き起こる純真な驚きと喜びの経験を契機とし、人間の無意識を見つめようとした《color beginning》から始まった。同作品群は、翌年「breath」展と冠する個展(MtK Contemporary Art、京都)で発表後、23年、作家の生へのオマージュから生まれる立体作品と絵画がひとつの息吹に溶けあうように共鳴しあった同名の展覧会(ミュンヘン州立版画素描館、ミュンヘン)へとつながっていった。

 本展の制作中、内藤は白い画面を「母型」空間として感じるようになったとい言う。その気づきは、画面に色を置くことで、そこにある大気や光が露わになる絵画作品を支える根であり、画面では内藤の空間作品と同質の現象が生起しているように感じられる。こうして生まれた絵画は、生と死を分けられないものとする水や水路、鏡の立体の作品群とひとつの空間を生成し、鑑賞者をとりまく事物(もの、人、動物、植物、大気、光)や、死者、未生の者たちが人々の生(呼吸)と切り離せないほど親密な関係を織りなしている世界を浮き彫りにする。