あの人のアートコレクションが見たい!:自宅を再現するような展覧会を開催した大木俊明さん
急増しているアートコレクター。作品が飾られているコレクターの自宅を、自身もコレクターであるコバヤシマヒロが訪問して紹介。作品を愛するそれぞれの人柄が現れるような、千差万別のアートコレクションをお届けします。
今回ご紹介するのは、山梨県で花生産者として会社を経営する大木俊明さんのアートコレクションです。山梨県に住んでいるため、東京を中心に開催されている展覧会に足を運ぶ機会は月に1回あるかないか、ということですが、それを感じさせないほど多彩な作品が大木さんのコレクションには並びます。
初めてのコレクションは2001年のこと。大木さんが大学卒業後、「コム デ ギャルソン」に勤務していたころだそうです。ファーストピースは、仕事で知り合った写真家・北島敬三が主宰している、新宿の「photographers' gallery」で展示されていた笹岡啓子の写真作品です。 彼女の最初のコレクターだったようでその後も、個展のたびに1点ずつ購入して、当時はずっと部屋に飾っていたそうです。
「もともと母方の祖父が日本画や陶器のコレクターで、お正月に母の実家に行くたびに、床の間に飾ってある掛け軸を見ていいなと憧れていました。 10年ぐらい前に映画『ハーブ&ドロシー』を見たのも大きかったです。郵便局員のお給料でコツコツと作品を買い集め、それがアメリカン・アートの重要なコレクションになるというという映画ですね。自分もわずかな資金であんな素敵なコレクションができたらと思いながら買う作品を選んでいます」と大木さん。
コレクション歴は22年にも及び、まさに『ハーブ&ドロシー』を実践するようにコツコツとコレクションを築いてきました。ここ最近になって、購入点数が増え、ご自身の所有する作品点数も300〜350点になったとか。好きな作家の作品は複数点所有されています。西村有、やましたあつこ、横山奈美、那須佐和子などの作品は10点ほど所有しているそうです。
自身初の「コレクション展」を開催
先日、大木さんは自身初の「コレクション展」を山梨で開催。会場となった山梨・北杜市の「Gallery Trax」は現在の仕事場の近くにあり、以前はギャラリーの2階に住んでいたこともあるような深い関係にあるとのことです。そのような経緯もあって、「自分の家にいるような感じで展示を構成してみました」そうです。
実際に訪れてみると、自然光が降り注ぐギャラリーの展示空間は広いリビングのようで、大木さんのコレクションが空間によく馴染んでいるように見えました。
「コレクションの軸や方向性、傾向やこだわりなど、人によっては明確にある場合がありますが、僕はまったくないんです」と大木さんは話します。「なんか『いいな』と思ったら買う感じですが、ジャンルとしてはペインティングが多いですね」。