EXHIBITIONS

付箋girl®「記憶の合唱」

2025.02.04 - 03.08

メインヴィジュアル

 Sho+1で、付箋girl®による個展「記憶の合唱」が開催されている。

 付箋girl®は、東京藝術大学絵画科日本画大学院修了。2020年1月1日から1日1枚、付箋紙に架空の人物を描いてSNS投稿を続けている。2023年より付箋紙という支持体の枠を飛び越えた「fusengirl alt.」シリーズに取り組み、キャンバスやレコードジャケット、包装紙などを用いた制作をスタートさせた。2025年3月に開催されるアートフェア東京19では、同シリーズの新作を発表予定。

 以下、展覧会ステートメントとなる。

「付箋girlは、付箋紙に1日1枚、架空の人物の顔を丹念に描いています。そこにはハイライトや影の線など、繊細なタッチの重なりが見られると同時に、背景を一色で塗り潰すなど、画面全体を鮮やかに見せるような大胆さも見受けられます。このような繊細さと大胆さの対比がコントラストを生み出し、結果として画面全体の引き締まりを生んでいます。作品に強いインパクトを与えつつも、感情やストーリーがより際立つ効果が生まれているのです。

 アンディ・ウォーホルはかつて、ポラロイドカメラを日常的に使用し、被写体の瞬間をとらえる方法を好みました。依頼主のために何十枚も撮影し、そのなかから最適な4点を選ぶというプロセスは、彼のアート制作の一部であり作品の制作において重要な要素でした。両者の制作のプロセスの共通点は、時間や空間の制約を感じさせることです。しかしながら、ウォーホルのポートレートの無機質な画面構成とは異なり、付箋girlの作品には感情的な強さや視覚的なインパクトを持たせる要素が含まれています。また7.5センチメートルの正方形の付箋紙に描き込むスタイルは、アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインの作品をアプロプリエートするリチャード・ペティボンの、極小の画面にイメージを展開するスタイルと共通点があります。

 付箋girlの作品にはサインとともに必ず日付が記入されています。コンセプチュアル・アートの分野で知られる河原温(かわら・おん)は代表作『Today Series(日付絵画)』において、日付とその日の新聞をセットにして時間の流れと記録自体を作品としていましたが、付箋紙に日付を記入することにより、時間の流れや変化を意識的にとらえるという自由な発想は、河原の試みに共鳴する部分を感じさせます。日付を入れることで、作品が『その日』の感情や出来事を反映していることを強調し、観る者に『いま』という瞬間を感じさせることができるのだと思います。

 SNSを通じて多くのファンに共有されている付箋girlの作品は、たんなる視覚的な美しさだけでなく、日々の感情の移り変わりを視覚的に表現することで、観る者に共感や新たな視点を提供しています。そして、日本画のバックグラウンドを支えに、ウォーホルやポップアートの精神を引き継ぎながら、日本的な視点を持つ現代的な試みを探求しているといえるでしょう」(展覧会ウェブサイトより)。