富岡鉄斎 ―文人として生きる―

　近代日本を代表する文人画家のひとり・富岡鉄斎。若い頃より学問に打ち込み、豊かな学識と、中国北宋の文人・蘇軾をはじめとする東洋の先哲たちへの敬慕のもと、多彩な書画作品を生み出した。鉄斎は生涯、「万巻の書を読み、万里の路みちを行く」という中国文人の理想を実践し、日本の様々な地を訪れた。

　本展では、奈良にゆかりのある鉄斎作品を展示。月ヶ瀬の梅を描いた《名士観梅図》、吉野の桜を咲く《華之世界図》などを通して、鉄斎が、古より文人墨客に愛された奈良の名所旧跡とどのように向き合っていたかを見ていく。

　さらに、後年の鉄斎が文芸界の重鎮として活躍した、京都の文雅での交流を示す《扇面新居雅会図》をはじめ、知人らとの交遊の中で生まれた作品も紹介する。