いよいよ芸術祭シーズン到来!2018年に開催される芸術祭をピックアップ
2018年も全国各地で数多くの芸術祭が開催される。そのなかから、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」をはじめ、注目の8つの芸術祭をピックアップ!期待の新作など、その芸術祭でしか見られない注目のポイントそれぞれ紹介する。
道後オンセナート2018
聖徳太子や正岡子規、夏目漱石といった、歴史上のそうそうたる著名人も多く訪れたとされる愛媛県・松山市の道後温泉。このエリア一帯で多彩なアート作品やプロジェクトを展開する「道後オンセナート 2018」が4月14日から開催中だ。
2014年に初開催され、今年2回目を迎える「道後オンセナート 2018」。今年は、2014年より継続公開中の作品や常設作品を含め、約25名による作品を見ることができる。道後のトレードマークといえば、国の重要文化財に指定され、夏目漱石が頻繁に通ったことから「坊っちゃん湯」としても親しまれる道後温泉本館。ここでは、写真家の浅田政志による《鷺の恩返し》が展示されている。
ほかにも歴史ある旅館やホテルも展示会場となるのが「道後オンセナート」の特徴。黒川紀章が設計を手がけた宿泊施設・道後舘では、ブックデザイナー・祖父江慎によって一室丸ごとを『坊っちゃん』の文章で埋め尽くした《部屋本 坊っちやん》が展示されるほか、ホテル椿舘ロビーでは鈴木康広による《湯玉の気配:空気の人》《まばたき証明写真》が、道後温泉本館東側の休憩所「振鷺亭(しんろてい)」では三沢厚彦による《Animal 2017-01-B2(クマ)》などが展示されるなど、バラエティ豊かな作品を温泉街のなかで楽しむことができる。
道後オンセナート2018
会期:2017年9月2日〜2019年2月28日
(※ホテルプロジェクトなどは作品によって会期設定あり)
会場:道後温泉及びその他周辺エリア
実施回数:2回目
参加アーティスト:三沢厚彦、祖父江慎、大巻伸嗣、梅佳代ほか
水と土の芸術祭2018
2009年から始まり、今年で第4回目を迎える「水と土の芸術祭」は、「私たちはどこから来て、どこへ行くのか〜新潟の水と土から、過去と現在(いま)を見つめ考える〜」という基本理念のもと、「メガ・ブリッジーつなぐ新潟、日本を世界にー」という新たなコンセプトを掲げる。
参加作家に塩田千春や冨井大裕など、多彩なアプローチを持つ美術家を迎え、これまでにない新潟市の魅力を発信。新潟と日本各地、そして世界を結び、市民同士を結ぼうと試みる。
また本芸術祭では、アート以外にも、新潟の水と土がもたらした「食」「農」「伝統芸能」「おどり」などを、「にいがたJIMAN」と称して紹介。 新潟の食の提供や伝統芸能の公演など、新潟を五感で楽しめる充実のプログラムが企画されている。音楽家の大友良英や、劇団・マームとジプシーを主宰する藤田貴大によるワークショップとパフォーマンスにも注目が集まる。
なお、新幹線で移動しながらも現代美術を楽しめる「現美新幹線」は越後湯沢〜新潟間を走行中。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」と「水と土の芸術祭」を同時に楽しむことができる。
水と土の芸術祭2018
会期:7月14日~10月8日
会場:万代島多目的広場(メイン)、ゆいぽーと 新潟市芸術創造村・国際青少年センター(サテライト)、新潟市全域
実施回数:4回目
総合ディレクター:谷新(美術評論家)
参加アーティスト:青木野枝、浅葉克己、岩崎貴宏、塩田千春、冨井大裕、日比野克彦、松井紫朗、友政麻理子、ハヤシヤスヒコ(パラモデル)ほか
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018
今年で7回目の開催となる「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、「均質空間への疑義」「人間の土地に生まれるアート」「アートを介する人の移動」「人類の始原に還る企画展」の4つのワードにもとづいて選ばれたサイトスペシフィックなアートを通して、人間の根源的な部分にアプローチしていく。
とくに注目したいのは、豪雪地では珍しい半屋外の回廊が特徴的な越後妻有里山現代美術館[キナーレ]。同館は、京都駅や札幌ドームで知られる建築家・原広司が、十日町の名称のもととなった節季市をイメージし、ヒト・モノ・情報が交差する現代アートミュージアムを目指して設計した。そんなキナーレ中央の池には、今年森美術館で大規模な個展を開催し、60万人以上を動員したレアンドロ・エルリッヒの新作が登場。池の底面には空が描かれるという。
そのほか、クリスチャン・ボルタンスキーや金氏徹平など、注目の美術家が新作を展示予定。ボルタンスキーは2006年から旧東川小学校全体で展開している大規模なインスタレーション《最後の教室》内に、新作の《影の劇場》を制作。暗闇に浮かび上がる教室の壁面に骸骨、コウモリ、天使など、生と死の狭間をゆく生き物たちの影が映し出され、それは幻想的でユーモラスな空間でありながら、「誰にも普遍的に訪れる死」を連想させるだろう。
金氏は豪雪地の越後妻有で活躍する除雪車やスノーダンプなど、夏は倉庫に眠っている道具を組み合わせ、タイムマシーンのような立体作品を展開するという。夏季に、越後妻有の冬の風物詩がどう組み合わさるのか注目が集まる。
また、開催期間中は、有名ミュージシャンや海外のダンスカンパニーによる豪華イベントも予定されている。作曲家・柴田南雄の楽曲を、音楽家・小林武史がプロデュースし、弦管楽器や合唱を施した独自の編成で演奏する「ゆく河の流れは絶えずして(仮)」は、キナーレの企画展「2018年の<方丈記私記>〜建築家とアーティストによる四畳半の宇宙」展との連動コンサートだ。合わせてチェックしたい。
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018
会期:7月29日~9月17日
会場:越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)
実施回数:7回目
総合ディレクター:北川フラム
参加アーティスト(新作出品予定):レアンドロ・エルリッヒ、サンティアゴ・シエラ、クリスチャン・ボルタンスキー、島袋道浩、イ・ブルほか
みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018
東北芸術工科大学が主催する「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」。国の重要文化財である「文翔館」をメイン会場とし、9月1日から24日までの週末限定で様々なプログラムが展開される。
今年のメインテーマは「山のような」。東北の郷土が生んだ世界的な絵本作家として知られる荒井良二を芸術監督に迎え、東北の暮らしと地域文化への深い洞察をベースに、現在の山形を表した(=山のような)作品を展示するとともに、山形の過去と未来に光をあてる創造的なアイデアや協働を「山のように」生み出す芸術祭を目指す。
展示のほかに、東北芸術工科大学が2017年に実施した「市(いち)プロジェクト」の成果も合わせて発表となる。「市(いち)プロジェクト」は、人口減少が進む地方都市で、ものづくり中心の暮らしを成り立たせていくための新しいコミュニケーションの場を考え、実践していくアートマネジメント人材育成プログラムだ。先人たちの知恵や技術を、アートやデザインの視点から掘り起こして、これからの地域づくりに活かしていく道筋を考えていこうと試みる。
みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018
会期:9月1日〜9月24日(期間中の金、土、日、祝のみ開催)
会場:文翔館(旧県庁舎および旧県会議事堂)、とんがりビル、郁文堂書店、BOTA theater、gura、長門屋ひなた蔵・塗蔵、東北芸術工科大学キャンパス
芸術監督:荒井良二(アーティスト/絵本作家)
プログラムディレクター:宮本武典
参加アーティスト:荒井良二、WOWほか
六甲ミーツ・アート 芸術散歩
六甲山の自然を感じながら現代アート作品を楽しむ「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2018」。すばらしい眺望やオルゴールの澄んだ音色、高山植物や紅葉など、自然豊かな六甲山の魅力を楽しみながら、ピクニック気分でアートに触れることができる。
今年は、建築家・安藤忠雄が設計した《風の教会(六甲の教会)》を新たに会場に加え、国内外で活躍する映像作家・さわひらきの作品を展示するという。なお、展覧会の開催に先駆け《風の教会(六甲の教会)》では、8月1日〜9月7日の期間に先行展示を行う。
六甲ミーツ・アート 芸術散歩
会期:9月8日〜11月25日
会場:六甲ガーデンテラス、六甲山カンツリーハウスほか兵庫県六甲山
実施回数:9回目
総合ディレクター/キュレーター:高見澤清隆(六甲オルゴールミュージアム シニアディレクター)
参加アーティスト:日比野克彦、大宮エリー、さわひらきほか
BIWAKOビエンナーレ
「BIWAKOビエンナーレ」の会場となるのは滋賀県・近江八幡旧市街。江戸期に建てられた町家が軒を連ねる新町通り、永原町通り、 八幡堀沿いの町並みおよび日牟禮八幡宮境内地など「近江八幡市八幡伝統的建造物群保存地区」の名称で知られる場所だ。
本芸術祭では、国の重要伝統的建造物群保存地区としても選定されていながら、長く放置され荒れ果てた多くの空き町家が点在している現状を打開すべく、残された貴重な建物の保存と活用を試みる。
長年放置されていた建物を、地元住民や日本全国から集まる有志たちの手で清掃することから始め、国内外より集まるアーティスト達によって生み出される新しい空間は、長年忘れ去られていた建物が蘇るそのさまを、作品とともに楽しませてくれるだろう。
BIWAKOビエンナーレ
会期:9月15日~11月11日(火曜定休)
会場:滋賀県近江八幡市旧市街
実施回数:8回目
ディレクター:中田洋子
参加アーティスト:榎忠、伊島薫、市川平、ステファン・ラーソン、ローレント・フォート、エメリック・シャンティエほか
アニッシュ・カプーア in BEPPU
「in BEPPU」は、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の後継企画として2016年より始動したアートプロジェクト。毎年、国際的に開催する1組のアーティストを別府に招聘し、地域性を活かしたアートプロジェクトを実現する個展形式の芸術祭だ。第3回目となる今回、招聘するのは、現代美術界において最も重要なアーティストの1人として、国際的注目を集めるアニッシュ・カプーア。
ヴェルサイユ宮殿での個展(2015)や、ロンドンオリンピックの記念モニュメント制作(2012)など、大規模な作品で知られているカプーア。「in BEPPU」では、世界初公開となる新作を含む作品を10点以上の展示を予定しており、国内では過去最大規模の展示になる。
世界初公開となる新作パビリオン《Sculptural Void Pavilion(仮称)》は、近年カプーアが取り組んでいる彫刻と建築が融合した作品だ。奥行12mほどの空間内部に入ると、正面に暗黒の壁が現れ、時が経つにつれて、不思議な知覚体験を引き起こすというもの。ぜひ実際に足を運んで体感したい。
ほかにも見逃せないのが、日本初公開となる代表作《Sky Mirror》。直径5m、ステンレス製の本作は、光を反射し空を映し続け、その場所にぽっかりと異世界の入り口が広がっているかのような効果を見せる作品だ。
大掛かりな作品だけではなく、ドローイングや彫刻も展示される。前述した2つの大型作品のちょうど中間にギャラリーを設置し、ドローイングや彫刻が展示されるほか、イギリスBBCが制作したカプーアのドキュメンタリー映像も上映予定だ。様々な角度からじっくりとカプーアが作り出す世界を楽しみたい。
アニッシュ・カプーア in BEPPU
会期:10月6日〜11月25日
会場:別府公園
実施回数:3回目
総合プロデューサー:山出淳也(NPO法人 BEPPU PROJECT)
参加アーティスト:アニッシュ・カプーア
糸島国際芸術祭
福岡大都市圏に隣接する糸島は、美しい自然と豊かな農業などの生産現場に恵まれている。近年は九州大学の移転も進んでおり、多くの工芸家、デザイナー、芸術家が移り住み、全国でもっとも注目されている地域の一つだ。
創作活動の発信においてはまだ試行錯誤の状況にありながら、「アート」の可能性を広義にとらえ、糸島の魅力を再発見しようと「糸島国際芸術祭」を開催。本芸術祭のねらいは、生活と密着するアートのあり方を提示し、地域単位でのアートへの関心や理解を深め、文化的な発信力をつけるというもの。
民俗学者の折口信夫の「マレビト(稀人・客人)を、海の彼方から村人の生活を幸福にして帰る霊(みたま)を意味する」という発言から「マレビトの通り道」というテーマを着想。本芸術祭は、糸島を訪れるアーティストやアートと出会うために来る客人を「マレビト」と重ね、糸島の文化を盛り上げていく。
糸島国際芸術祭
会期:2018年10月20日、21日、27日、28日
会場:福岡県糸島市二丈松末地区、一貴山地区、深江地区
実施回数:4回目
実行委員長:松崎宏史(美術家)
アドバイザー:藤浩志(美術家)
参加アーティスト:藤浩志、廣末勝己、片山雅史、鈴木淳、
トークゲスト:櫛野展正(クシノテラス主宰、アウトサイダー・キュレーター)