コミュニケーションの中にある
相互関係の不明瞭さとは?
川内理香子が個展開催
食への関心を起点にしながら、身体と思考の相互関係の不明瞭さを主軸に作品を制作している川内理香子の個展「Tiger Tiger, burning bright」が、東京・文京区のWAITINGROOMで2018年5月19日から6月17日まで開催される。
川内理香子は1990年東京生まれ。2015年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、17年に同大学大学院を修了し、現在東京を中心に活動している。東京だけではなく、16年には台湾で個展「ART TAIPEI 2016 ‒ WAITINGROOMソロブース」(TaipeiWorld Trade Center / 台北・台湾)を開催したほか、14年に参加した公募グループ展・第1回CAF賞展では保坂健二朗賞を、15年にはshiseido art egg賞を受賞するなど、活躍が目覚ましい若手だ。
その川内の展覧会「Tiger Tiger, burning bright」が、東京・江戸川橋のWAITINGROOMで2018年5月19日から開催される。川内が同ギャラリーで個展を行うのは2年ぶり2回目。
食事やセックスといった、コミュニケーションの中で見え隠れする相互関係の不明瞭さを作品のモチーフとしている川内。その表現は、ドローイングやペインティングに留まらず、針金やゴムチューブ、ネオン管など、多岐にわたるメディアを横断している。18世紀イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクの詩『The Tiger』から引用したタイトルを冠した本展では、ペインティング、ドローイング、針金による半立体作品に加え、初めての試みとして樹脂を用いて制作された立体作品を含む、約20〜25点の新作で構成される。
川内が食への関心を起点に、身体と思考、自他の不明瞭さとその揺らぎを作品に描き出すきっかけとして、自分の身体が他者のように思えたという経験が影響している。「食べ過ぎたときや風邪をひいたとき、普段は自身の体を保持し、意のままに動かしていると思っているものの、本来はその逆で、生々しい肉体それ自体が、自身の意識や精神をも規定しているように感じられる」という。
また、川内は自身の制作について、肉体と精神、そして自己と他者の間に存在する「コントロールできない領域を一瞬のうちに留め、つねに動き続ける不安定な状態のものに、つかの間の理解と変化を促す境界探しの綱渡り」と語る。
「絶対的な物質である肉体と目に見えない精神、そして自己と他者。対立する両者はどのように繋がり、重なり合い、分断し、共に動いているのか」を問い続け、動き続けるそれらの揺らぎも「美しさ」として表現していく川内の新作群に注目したい。