すべては応挙にはじまる。円山・四条派の系譜をたどる展覧会「円山応挙から近代京都画壇へ」が東京、京都で開催へ
18世紀の京都に彗星のごとく現れ、円山派を確立した絵師・円山応挙。また、与謝蕪村に学んで応挙に師事した呉春はそれに続いて四条派を興し、この二派は円山・四条派として近代にいたるまで京都画壇に大きな影響を与えた。こうした流れを追う展覧会「円山応挙から近代京都画壇へ」が、東京藝術大学大学美術館(8月3日〜9月29日)と、京都国立近代美術館(11月2日〜12月15日)で開催される(前期/後期、会場ごとに大幅な展示替えあり)。
江戸後期の京都に現れ、円山派を確立した絵師・円山応挙。堅苦しい狩野派の絵に不満を覚え始めていた都の人々は、その写生画に魅了された。多くの絵師が後に続き、なかでも応挙に師事した呉春は、写生画に瀟洒な趣を加えて新たに四条派を興す。この二派は円山・四条派として近代にいたるまで京都の画壇に影響を与え、多くの画家を輩出。長沢芦雪、竹内栖鳳、上村松園らもその伝統を受け継いで活躍した。
円山・四条派の系譜は、いかに近代日本画へと継承されたのか。これまでにない規模でその歴史をたどり、全貌に迫る展覧会「円山応挙から近代京都画壇へ」が、東京藝術大学大学美術館と京都国立近代美術館で開催される。
本展では、東京・京都あわせて重要文化財12件を含む約120件を一挙に紹介。とくに注目したいのは、応挙最晩年の最高傑作である「大乗寺襖絵」の特別展示だ。大乗寺は兵庫県の日本海側に位置し、またの名を応挙寺という。障壁画の制作は、1787年から応挙が一門を率いて開始。応挙は初めに山水の間、芭蕉の間を描き、没年である95年に孔雀の間を完成させた。本展では《松に孔雀図》《郭子儀図》などの応挙作品を中心に、応瑞(応挙の息子)や呉春、山本守礼らの作品が再現展示され、大乗寺客殿各室の雰囲気を体感することができる。
加えて本展では、自然、人物、動物といったテーマごとに円山・四条派の作品を紹介。従来の絵画では、現実と違った名所絵の世界や、見たこともない山水世界が描かれてきた。応挙はまず実際の場所を好んで描き、その場の臨場感を写し出すことを試みた。こうした写生の手法は自然のみならず、孔雀や虎など生きた動物を描いた作品群にも見ることができる。
また、意外にも知られていないのが応挙による美人画。応挙は「唐美人」と呼ばれる中国の貴婦人を描く伝統を踏まえつつ、新たな女性表現を生み出した。本展では美人画に加えて、応挙が古くから画題としてきた仙人や物語の登場人物を描いた作品も展示される。
写生画の名手として活躍した応挙と、その姿勢を受け継ぎ、近代にいたるまで画壇に影響を与えた円山・四条派の作家たちの作品が一堂に会する本展。その系譜をたどりながら、生き生きとした表現を堪能することができるだろう。