「形而上絵画」の初期作品も登場。「デ・キリコ展」が東京都美術館、神戸市立博物館で開催へ
20世紀を代表する巨匠ジョルジョ・デ・キリコの大回顧展「デ・キリコ展」が東京都美術館(2024年4月27日~8月29日)、神戸市立博物館(2024年9月14日〜12月8日 [予定])で開催される。
20世紀を代表する巨匠ジョルジョ・デ・キリコ(1888〜1978)。その画業を広く紹介する大回顧展「デ・キリコ展」が東京都美術館(2024年4月27日~8月29日)、神戸市立博物館(2024年9月14日〜12月8日 [予定])で開催される。
本展は、デ・キリコのおよそ70年にわたる画業を「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分けながら、初期から晩年までの作品が約80点を通じて余すことなく紹介するものとなる。
例えば、最初のセクションではデ・キリコによる「肖像画」を紹介。とりわけ、様々な衣装をまとい、自己演出された自画像に注目したい。
1910年代にニーチェの哲学に影響を受けて描かれ、デ・キリコの名声を高めた作品シリーズ「形而上絵画」も登場。簡潔明瞭な構成と歪んだ遠近法、脈絡のないモチーフなどから生み出される、幻想的かつ非日常な空間を描いた作品群は、数多くの芸術家や国際的な芸術運動に大きな影響を与えてきたものだ。本展は、世界中に散らばったこのシリーズをまとめて見られる貴重な機会となる。
その「形而上絵画」にたびたび現れるようになるのが「マヌカン(マネキン)」の存在だ。個展絵画の重要なモチーフである人物像に代わり登場したマヌカンは、ミューズや預言者、占い師、哲学者など、様々な役割を演じている。
1920年代に入ると、デ・キリコはマヌカンなどの従来のモチーフに加えて、新たなテーマである「剣闘士」や「室内風景と谷間の家具」に取り組むようになる。海や山など、本来は屋外にあるものが室内に、逆に室内にある家具が屋外に描かれるなど、不穏なイメージが生み出されている。
さらに同時期には伝統的な西洋絵画へと回帰していく様子も見受けられる。ルネサンス期やバロック期の作品に傾倒し、それに基づいて制作された絵画群も展示される予定だ。
デ・キリコは晩年、改めて形而上絵画に取り組み、「新形而上絵画」シリーズをスタートさせる。過去に描いてきたモチーフが画面上で再解釈されながら、新たな境地を生み出している作品群となっている。
ほかにも、デ・キリコが手掛けた彫刻や挿絵、舞台衣装のデザインなども合わせて展示され、様々な角度からその魅力に迫るものになるという。