2024.10.11

三連休に見たい展覧会ベスト10。アレック・ソスから若冲激レア展、テレンス・コンランまで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

温泉「五浦幽谷隠田跡温泉源泉掛け流し&グランピング」(茨城・五浦) ©︎ 株式会社創輝
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もうすぐ閉幕

「Lines(ラインズ)ー意識を流れに合わせる」(金沢21世紀美術館

展示風景より、大巻伸嗣《Plateau》(2024)

 金沢21世紀美術館で、展覧会「Lines(ラインズ)─意識を流れに合わせる」が10月14日まで開催されている。レポート記事はこちら

 本展は、英国の人類学者であるティム・インゴルドの著作『ラインズ 線の文化史』(左右社、2014)からインスピレーションを得て構想されたもの。世の中に存在するすべてのものを「線」という視点から考察し、線が生活や人間関係をどのように形づくっているかを、作品を通じて考えようというものだ。

 日本、ベトナム、オーストラリア、ガーナ、フランス、オランダ、デンマーク、チェコ共和国、アメリカ、ブラジルの10ヶ国から多種多様な文化的背景を持つ16作家(グループを含む)の35作品が並び、「線」という制作行為において基本的な要素をベースに、様々な実践を目撃できる機会となっている。

会期:2024年6月22日~10月14日
会場:金沢21世紀美術館
住所:金沢市広坂1-2-1
電話番号:076-220-2800 
開館時間:10:00~18:00(金土〜20:00) ※観覧券販売は閉場の30分前まで
料金:一般 1200円 / 大学生 800円 / 小中高生 400円 / 65歳以上 1000円

「空間と作品」(アーティゾン美術館

展示風景より、佐伯祐三《テラスの広告》(1927)

 クロード・モネ、ポール・セザンヌ、藤田嗣治、岸田劉生、琳派から抽象画にいたるまで、石橋財団の潤沢なコレクションより、「空間」という視点から構成された展覧会「空間と作品」が、10月14日にアーティゾン美術館で閉幕する。レポート記事はこちら

 美術館の展示室に整然とならぶ美術品、それらは、今日だれもが鑑賞することのできる公共的なものとなっている。いっぽう、その美術品が生まれた時のことをふり返ると、それは邸宅の建具としてつくられたり、プライベートな部屋を飾るために描かれたりと、それを所有する人との関係によって生み出されたものであることがわかる。また、時を経るあいだに、何人もの手をわたり、受け継がれてきたものもある。

 本展では、美術品がどのような状況で生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたのかを想像して体感できる。ぜひ足を運んで体験してほしい。

会期:2024年7月27日~10月14日
会場:アーティゾン美術館
住所:東京都中央区京橋1-7-2
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00)※入館は閉館の30分前まで 
料金:1200円(ウェブ予約)、1500円(窓口販売チケット)/ 大学生、専門学校生、高校生 無料(要ウェブ予約)/ 中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名 無料(予約不要)

「P.O.N.D.2024 SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」(PARCO MUSEUM TOKYO)

メインヴィジュアル

 PARCO MUSEUM TOKYOで、アート&カルチャーイベント「P.O.N.D.2024 SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」が10月14日まで行われている。

 「PARCO Opens New Dimension(P.O.N.D.)」では、アーティストと鑑賞者のなかに新たな視点とインスピレーションを生む場となるべく、エキシビションやパフォーマンスなどのイベントを実施。5回目を迎える今年も、渋谷PARCOを拠点にアート、音楽、ファッションなど多様な表現者たちが集結している。

 今年のコンセプトは「SIDE BY SIDE/となり合う、広がる」。アートディレクターは加瀬透が担当し、Camelostrich、Dawoon JUNG、Kou Nishikawa、LOVEDAVID、Nils Junji Edström、yoh murata、王之玉、奥村美海、黒瀧藍玖、黒田零、ケビン・リー、佐野虎太郎、スクリプカリウ落合安奈ら13名の国内外の若手アーティストの作品を見ることができる。

会期:2024年10月4日~10月14日
会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4階 PARCO MUSEUM TOKYO
電話番号:03-6455-2697
開館時間:11:00~21:00(最終日は〜18:00)
料金:無料

今週開幕

「歴史の未来―過去を伝えるひと・もの・データ―」(国立歴史民俗博物館

展示風景より、阪神淡路大震災の震災資料

 千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で、歴史資料を未来へつなぐための営みについて紐解く企画展示「歴史の未来―過去を伝えるひと・もの・データ―」が開幕した。レポート記事はこちら

 過去から伝えられた記録類や生活道具、人々によって語り継がれた記憶などは、現代を生きる我々に多くのことを伝えてくれている。また、これらを伝えようとした人々の営みに注目すると、ありふれた事象のなかに歴史的な意義を見出し、未来の人々に継承する意思が存在したことにも気づくことができる。

 本展はこのような歴史を伝える様々な営みを紹介することで、未来を見通す手がかりを6章構成とエピローグによって考えるものだ。人々の生活や文化の歴史の断片をどのように未来に伝えるのか、また、どのような方法をとればより良いかたちで残すことができるのか。ぜひ会場で考えてみてほしい。

会期:2024年10月8日~12月8日 ※会期中一部展示替えあり
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B
住所:千葉県佐倉市城内町117 
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30~16:30 ※入館は16:00まで ※開館日・開館時間を変更する場合があります。 
休館日:月(ただし祝日の場合は開館し、翌平日休館) 
料金:一般 1000円 / 大学生 500円

「チームラボ 幽谷隠田跡」(茨城・五浦)

チームラボ 隠田跡 © チームラボ

 茨城・五浦(いづら)に、チームラボによる「夜の森のミュージアム」として「チームラボ 幽谷隠田跡(ゆうこくおんでんあと)」がオープンした。レポート記事はこちら

 これは、茨城に拠点を構える株式会社創輝が運営するグランピング施設と併設されるもので、岡倉天心が晩年居をかまえた五浦の深い森の先にある谷で展開されている。チームラボは、ミュージアム開設にあたってこの森の植生を調査しており、そのうえで谷にある棚田跡を覆う森全体を植物と一体となった作品空間として生まれ変わらせたという。

 森のなかで楽しめる作品のほか、同グランピング施設のコテージ内にも特別な部屋が設置されており、万華鏡のような小宇宙を織りなす空間となっている。また、同施設内にある源泉掛け流しの混浴温泉にもチームラボの作品が登場し、作品を楽しみながらの入浴も可能だ。

開業日:2024年9月30日より常設
住所:茨城県北茨城市大津町2132
時間帯:
2024年10月8日〜25日 18:00〜22:00
2024年10月26日〜31日 17:30〜22:00
2024年11月1日〜30日 17:30〜21:00
休館日:第1火
料金:大人(高校生以上) 2200円 / 小・中学生 800円 / 未就学児 無料 / 障がい者割引 1100円

「アレック・ソス 部屋についての部屋」(東京都写真美術館

展示風景より

 東京都写真美術館でアレック・ソス(1969〜)の個展「アレック・ソス 部屋についての部屋」が10月10日に開幕した。

 アレック・ソスは1969年アメリカ生まれ。国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした作品で、世界的に高い評価を受けてきた。ソスは「ポートレートや風景、静物などを定期的に撮影しているが、もっとも親しみを感じるのは室内の写真だ」と述べている。部屋とそこに暮らす人をテーマとするこのシリーズが、本展を生み出すきっかけとなった。

 本展では、初期を代表するシリーズ「Sleeping by the Mississippi」から、今秋刊行予定の最新作「Advice for Young Artist」まで、約60点の作品を6つのセクションで紹介。30年に及ぶソスの歩みを振り返るだけでなく、「部屋」をテーマにソスのこれまでの作品を編み直す、同館独自の試みとなる。

会期:2024年10月10日〜2025年1月19日
会場:東京都写真美術館 2階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話番号:03-3280-0099 
開館時間:10:00〜18:00(木、金は〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(祝休日の場合は翌平日)、12月29日〜2025年1月1日
料金:一般 800円 / 学生640円 / 中高生・65歳以上 400円

「若冲激レア展」(福田美術館

伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)の部分

 10月1日で開館5周年を迎えた京都・嵐山の福田美術館で、略称「若冲激レア展」が開催される。世界初公開となる伊藤若冲《果蔬図巻(かそずかん)》を、同館が所蔵する若冲の作品約30点とともに紹介するものだ。

 《果蔬図巻》は寛政2年(1790)以前、若冲が70代のときに描かれた全長3メートルあまりの大作で、若冲ならではの美しい色彩を用いて様々な野菜や果物が描かれた巻物。70代で色絵を描いた例は少なく、重要文化財に指定されている「菜蟲譜(さいちゅうふ)」(佐野市立吉澤記念美術館所蔵・重要文化財)の前年に描かれていることから、今後若冲に関する研究を進めるうえで大きな意味を持っていると考えられる。

 本展では《果蔬図巻》に加え、現存する若冲の作品のなかでもっとも若い時期に描かれたとされる《蕪に双鶏図》や、相国寺の僧・梅荘顕常(大典)とともに京都から大阪まで舟で移動したときの風景をもとに制作された版画《乗興舟》も展示。紅葉の嵐山で若冲にどっぷり浸る機会だ。

会期:2024年10月12日~2025年1月19日
会場:福田美術館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
開館時間:10:00〜17:00 ※最終入館は16:30まで
休館日:12月3日屏風の入れ替え、年末年始(12月30日~1月1日)
料金:一般・大学生 1500円 / 高校生 900円 / 小中学生 500円 / 障がい者と介添人1名まで 各900円

「MEET YOUR ART FESTIVAL 2024 『NEW ERA』」(天王洲運河一帯)

 東京・天王洲運河一帯(寺田倉庫を中心とした7会場)で、国内最大級のアートとカルチャーの祭典「MEET YOUR ART FESTIVAL 2024『NEW ERA』」が10月11日~14日の4日間で開催される。

 MEET YOUR ART FESTIVALはアートを軸に、音楽・食・ファッション・ライフスタイルなどの隣接したカルチャーを一堂に会することで、領域を超えてそれぞれの魅力に気付きを生み出すとともに、アートに対する新しい出会いや発見を設計することを目指す、領域横断型のアートフェスティバルだ。

 今年は、日本とアジアの新しいムーヴメントやアーティスト・クリエイターを複合的に扱うことで、日本のみならずグローバル目線で最新のアートやカルチャーシーンを体験できるアートフェスティバルへの深化を試みる。フェスティバルテーマを「NEW ERA」とし、未来の文化芸術の担い手となる国内外の気鋭のアーティストやキュレーター・ディレクターと協働して、さらなる新しいうねりが生まれる起点となることも目指している。

会期:2024年10月11日~10月14日
会場:天王洲運河一帯 (寺田倉庫ほか)
住所:東京都品川区東品川2丁目1-11
開館時間:11:00~20:00(11日は16:00〜21:00、最終日は〜18:00)
料金:一般 2500円 / 学生 1500円 / 中学生以下 無料

「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」(東京ステーションギャラリー

コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」 1952年撮影 レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵
Photo © Estate of Raymond Williams / Courtesy of the Conran family

 東京ステーションギャラリーでは「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展が10月12日から開催される。

 サー・テレンス・コンラン(1931〜2020)は、シンプルで機能的なデザインが生活の質を向上させると信じ、個人の生活空間から都市全体に至るまで、デザインの力で変革を追求したデザイナーだ。戦後すぐにテキスタイルや食器のパターンデザイナーとして活動を開始し、1960年代には「ハビタ」というホームスタイリングを提案する革新的なショップを展開し、チェーン展開で成功を収めた。その後、1970年代には「ザ・コンランショップ」を通じてセレクトショップの概念を広め、世界のデザイン市場、とりわけ日本に大きな影響を与えた。

 本展では、コンランがデザインした食器やテキスタイル、家具のマケット、ショップやレストランのためのアイテム、愛用品、著書、写真、映像など、300点以上の作品や資料を展示。また、彼から影響を受けた人物たちのインタビューも交え、コンランの人物像を多面的に掘り下げる。日本で初めてとなるこの大規模展は、彼のデザイン哲学とその影響力を再評価する貴重な機会となる。

会期:2024年10月12日~2025年1月5日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、10月14日、11月4日、12月23日は開館)、10月15日、11月5日、12月29日~2025年1月1日
料金:一般 1500円 / 高校・大学生 1300円 / 中学生以下 無料

「カナレットとヴェネツィアの輝き」(SOMPO美術館

カナレット 昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ 1760
キャンバスに油彩 58.3×101.8cm ダリッジ美術館、ロンドン Dulwich Picture Gallery, London

 SOMPO美術館で「ヴェドゥータの巨匠カナレット展」が10月12日から開催され、日本で初めて18世紀イタリアの画家カナレット(1697〜1768)の全貌を紹介する展覧会だ。

 本展は、スコットランド国立美術館をはじめとする英国コレクションを中心に、油彩、素描、版画など約60点を展示するもの。カナレットは精密な透視図法を駆使し、ヴェネツィアの壮麗な風景を描いたことで知られており、その作品は「グランド・ツアー」でイタリアを訪れた英国の上流階級にとくに人気があった。

 本展では、カナレットによるヴェネツィアの壮麗な風景画を通じて、18世紀の景観画の成立過程をたどるとともに、彼以後の画家たちが描いたヴェネツィアの姿も紹介。また、カナレットの後継者たちがどのようにヴェネツィアを描き、20世紀初頭のモネに至るまでその魅力がどのように変化したかを探る。

会期:2024年10月12日~2025年1月5日
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし10月14日、11月4日は開館)、年末年始
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 小中高校生 無料