個人コレクションの史上最高額を更新。ポール・G・アレンの遺品が約2200億円で全品落札

　マイクロソフトの共同創設者であるポール・G・アレン（1953～2018）のコレクションが、2部にわけてクリスティーズで競売にかけられている。11月9日にクリスティーズ・ニューヨークで行われた第1部である「Visionary: The Paul G. Allen Collection, Part I」イブニングセールで60点の作品がすべて落札され、合計15億638万6000ドル（約2200億円）の売上高を記録した。

　この数字は、オークションに出品された個人コレクションとして史上最高額であり、事前の最低予想落札価格の122パーセントとなっている。すべての収益は、アレンの遺志により全額慈善事業に寄付されるという。

　同セールには、ヤン・ブリューゲル（子）からターナー、マネ、ゴッホ、スーラ、ゴーギャン、モネ、クリムト、オキーフ、ベーコン、フロイトまで、過去5世紀にわたる巨匠たちの作品が出品。なかでもシングルセールでは史上最多となる5点の作品がそれぞれ1億ドル以上の価格で落札され、各アーティストのオークション記録を更新した。

　ジョルジュ・スーラの点描画《Les Poseuses, Ensemble (Petite version)》は、同セールの最高額である1億4924万ドル（約218億円）で落札。続いてポール・セザンヌの風景画《La Montagne Sainte-Victoire》とフィンセント・ファン・ゴッホの《Verger avec cyprès》は、それぞれ1億3790万ドル（約202億円）と1億1718万ドル（約171億円）で競り落とされた。

　また、ポール・ゴーギャンが1899年に描いた作品《Maternité II》は1億573万ドル（約155億円）、グスタフ・クリムトが白樺林を描いた作品《Birch Forest》は1億458万ドル（約153億円）で落札。いずれも美術史の大物であり、シングルセールで同時にオークション記録を更新するのは前代未聞のことだ。

　クリスティーズのリリースによると、半数のロットはアメリカ大陸の顧客によって落札。38パーセントはヨーロッパ、中東及びアフリカ地域（EMEA）、12パーセントはアジア太平洋地域（APAC）の顧客によって購入されたという。

　オークション記録を更新した上記のアーティスト5人に加え、さらに15人のアーティストが新たなオークション記録を樹立（そのうち2人は紙作品の記録を更新）。ルシアン・フロイト《Large Interior, W11 (After Watteau)》（8626万ドル）やジャスパー・ジョーンズ《Small False Start》（5535万ドル）、ポール・シニャック《Concarneau, calm de matin》（3932万ドル）など記録を更新した作品のほか、モネの《Waterloo Bridge, soleil voilé》（6451万ドル）、ボッティチェリの《The Madonna of the Magnificat》（4848万ドル）なども高額で落札された。

　クリスティーズ・アメリカズ会長のマーク・ポーターは声明文で、今回の落札結果や収益の慈善事業への寄付に感謝を述べつつ、「これは、ひとりの男の情熱的な追求と、世界をより良い場所にするためのコミットメントによって可能になったということ。ポール・アレン氏のおかげで、この重要な夜に私たちの価値観を実現することができたのだ」とコメントしている。

　なおセールの第2部である「Visionary: The Paul G. Allen Collection Part II」は、11月10日に開催。20世紀に制作された作品を中心に95のロットが出品される。