ジャズミュージシャンへのオマージュ。バスキアの大作《Now's the Time》がオークションデビュー
アメリカのジャズミュージシャンであるチャーリー・パーカーへのオマージュとして、ジャン=ミシェル・バスキアが1985年に制作したレコード盤状の大作《Now's the Time》(1985)が、サザビーズ・ニューヨークのオークションに初出品される。予想落札価格は3000万ドル以上(約40億4500万円)。
ジャン=ミシェル・バスキアの作品のなかでもっともユニークなひとつで、レコード盤を模した直径約1.5メートルを超える大作《Now's the Time》(1985)が、5月18日にサザビーズ・ニューヨークで行われるイヴニングセールに出品される。
同作は制作以来、アメリカの実業家であるピーター・ブラントのコレクションに収蔵されており、今回がオークションへの初出品となる。予想落札価格は3000万ドル以上(約40億4500万円)と推定されている。
アメリカのジャズミュージシャンでアルトサックス奏者であるチャーリー・パーカーが1945年に作曲した『Now's the Time』のレコード盤を再現した不規則な形状のこの作品には、、黒いマットな表面にわずかな文字が書き込まれている。タイトルの「Now's the Time(いまこそ、そのときだ)」は、パーカーが生きた第二次世界大戦後の人種隔離を終わらせる行動への呼びかけとしてもとらえられる。
バスキアは、父親の影響でクラシック音楽とジャズを愛し、絵画へのアプローチだけでなく、その人生のほぼすべての面で大きな影響を与えた。1983年以降、バスキアはジャズを作品の中心的な主題のひとつとするようになり、パーカーへのオマージュとして30点以上の作品を制作している。
今回の作品は、彼の音楽への情熱を反映しながら、過去と現在の黒人アーティストに対する賞賛を示すものでもあり、バスキア自身の活動の特徴である自由と即興の精神も表現している。過去にはブルックリン美術館やバーゼルのバイエラー財団、オンタリオ美術館での回顧展でハイライトとして展示され、モントリオール美術館で開催された「Seeing Loud: Basquiat and Music」展のカタログの表紙にも使われている。
サザビーズ・ニューヨークのコンテンポラリー・イブニング・オークションの責任者であるケルシー・レオナードは声明文で、次のようにコメントしている。「『Now's the Time』というたった3つの言葉で、バスキアは自分の作品に大きな影響を与えた伝説のジャズミュージシャン、チャーリー・パーカーに敬意を表するだけでなく、彼が賞賛する黒人芸術家のアイコンのパンテオンに自分も入ることを宣言している。そして、彼の芸術的表現が広く知られるようになった今日、この真っ黒でミニマルなレコードは、バスキアのキャリアを象徴する傑作として、紛れもなく傑出している」。