2024.10.18

「T3 PHOTO ASIA」(八重洲ミッドタウン)レポート。アジアの写真の「いま」を見る

アートフォト専門のアートフェア「T3 PHOTO ASIA」が東京ミッドタウン八重洲で開幕。会期は10月21日(18日はプレビュー)まで。会場の様子をレポートする。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

特別展「Discover New Asia/Masters」展示風景より、ジャン・ヨウイの作品
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 アートフォト専門のアートフェア「T3 PHOTO ASIA」が東京ミッドタウン八重洲で開幕した。会期は10月21日(18日はプレビュー)まで。

 今年で6回目を迎える写真祭「T3」は、アジアの写真文化を発展させる包括的な写真プロジェクト。今年は100名以上の作家が参加し、東京・八重洲、日本橋、京橋エリアで国際的なアートフォト作品に出会える写真祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」を開催している。

会場5階のエントランス

 今年はそのプログラムの一貫としてアートフォトを実際に見て購入することができるアートフェア「T3 PHOTO ASIA」も初開催され、国際的に活躍する14のギャラリーが一堂に会し、厳選した作品を展示販売されている。本アートフェアの様子をレポートしたい。

 アートフェアの出展ギャラリーは以下となっている。Yumiko Chiba Associates(東京)、タカ・イシイギャラリーフォトグラフィー/フィルム(東京 / 京都 / 前橋)、KANA KAWANISHI GALLERY(東京)、小山登美夫ギャラリー(東京)、MEM(東京)、PGI(東京)、POETIC SCAPE(東京)、Primary Practice(ソウル)、Sahngup gallery(ソウル)、MISA SHIN GALLERY (東京)、SPACE WILLING N DEALING(ソウル)、The Third Gallery Aya(大阪)、GALLERY YEH(ソウル)、ZEN FOTO GALLERY(東京)。

展示風景より

 会場となっているのは、東京駅からほど近い八重洲ミッドタウンの4階と5階。4階では10のギャラリーがブースを構えている。

 ソウルのGALLERY YEHによる、韓国写真の第一人者である林應植(イム・ウンシク、1912〜2001)の作品展示は韓国の写真史を知るうえで重要な展示といえるだろう。1950年代、朝鮮戦争の際に米国務省所属の従軍写真記者として戦場を記録し林は、その後「生活主義リアリズム」を標榜して、絶対的に非演出なスナップ写真により混乱した韓国社会を切り取るようになる。韓国における写真の地位向上にも尽力したイムは、アジアの写真史において重要な作家のひとりといえる。

展示風景より、GALLERY YEHブースの林應植の作品

 日本のMEMは、北野謙による長時間露光で地球と宇宙をとらえたシリーズを紹介。また、MISA SHIN GALLERYは東松照明、PGIは川田喜久治を紹介するなど、戦後日本の重要作家を展示している。また、KANA KAWANISHI GALLERYの木村伊兵衛写真賞受賞作家・岩根愛の作品も見逃せない。

展示風景より、MEMブースの北野謙の作品
展示風景より、KANA KAWANISHI GALLERYの岩根愛の作品(右)

 5階では特別展「Discover New Asia/Masters」に注目だ。本フェアのディレクターである金廷恩(キム・ジョンウン)が企画した本展は、新たな写真表現を探求する4人のアジア人女性アーティストにフォーカスするものだ。

特別展「Discover New Asia/Masters」展示風景より、オ・ヨンジンの作品

 91年台湾生まれのジャン・ヨウイは、ミレニアル世代として女性の身体を媒介にしたパフォーマティブな作品を制作。93年韓国生まれのオ・ヨンジンはソラリゼーションを使用して、画像を繰り返し露光、現像することで流動体なイメージをつくりあげている。

特別展「Discover New Asia/Masters」展示風景より、ジャン・ヨウイの作品

 90年ベトナム生まれのヒエン・ホアンは、ドイツで活動しながらアジア系移民に対するステレオタイプへの批判性を含む作品を制作。また、83年東京生まれの鈴木のぞみは銀塩写真を様々なメディウムと組み合わせながら、記憶と接続させることを試みる。

特別展「Discover New Asia/Masters」展示風景より、ヒエン・ホアンの作品
特別展「Discover New Asia/Masters」展示風景より、鈴木のぞみの作品

 ほかにも、戦前から現代までの日本の写真を蒐集した丸川コレクションの展示や、カメラ/レンズメーカーのSIGMAによる写真集コレクションのポップアップライブラリーなど、写真を多面的に楽しむことができるアートフェアとなっている。 

SIGMAによる写真集コレクションのポップアップライブラリー