進化中のアートフェア。規模拡大の「Art Chengdu(アート・チェンドゥ)」を振り返る
中国南西部の経済的・文化的中心地である成都で、今年2回目となる現代美術のアートフェア「Art Chengdu(アート・チェンドゥ)」が、4月28日から5日間にわたって開催された。2年目に入ったこのフェアは、どのようなアップグレードが行われたのか? レポートでお届けする。
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中国南西部の経済的・文化的中心地であり、北京と上海に次いで「中国の現代美術都市第3位」とも呼ばれる成都。ここで、今年2回目となる現代美術のアートフェア「Art Chengdu(アート・チェンドゥ)」が、4月28日〜5月2日に開催された。
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今回のフェアの開催にあたり、創設者のひとりである黄在(ホワン・ツァイ)は、「アートフェアの初回はいくつかの欠陥があっても許してもらえますが、2年目に入ったら一般来場者やアート専門家もより厳しくなっています」とし、「そのため、私たちは昨年の経験をもとに、今回のフェアの様々な面でアップグレードをしました」と語る。そのアップグレードはどのようなものなのか、このレポートで紹介する。
まず、今年5日間に延長されたフェアの会場は、昨年成都中心部の繁華街・春熙路(チュンシーロード)の広場に仮設された室外のテントから、成都市内南部の「成都世紀城新国際会展中心(チェンドゥ・センチュリー・シティ・ニュー・インターナショナル・エキシビション・アンド・コンベンション・センター)」の室内スペースに移転。会場面積は3000平米から8000平米に拡大されたいっぽう、輸送や倉庫などフェアの関連施設も昨年と比べて改善されたという。
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また、参加ギャラリー数は昨年の31軒から46軒に増加。メガギャラリーとして知られる「ペース」や、北京、香港、バンコクにスペースを持つ「当代唐人芸術中心(タン・コンテンポラリー・アート)」、そして成都を代表するギャラリー「千高原芸術空間(サウザン・プラトー・アートスペース)」など2回目に参加したギャラリーのほか、日本、韓国、イギリス、スペインなどから、26軒のギャラリーが初めて出展した。
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初出展のギャラリーのなか、日本のホワイトストーンギャラリーは、草間彌生や奈良美智、白髪一雄、田中敦子、前川強、桑山忠明など10名以上の作家を紹介。同ギャラリーの代表者は、「中国南西部のアートファンやコレクターは、以前上海、香港、そして日本でしか見られない日本の優れた現代美術作品を地元で楽しめることを喜んでいます」と話す。
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韓国のアラリオギャラリーは、名和晃平の「Villus」シリーズや、韓国人のアーティスト、キム・ビョンホによる彫刻作品などを展示。スペイン・マドリードのガレリア・マルタ・サルベラは、成都出身で現在ニューヨークを拠点に活動するアーティストのダビッド・ディアオや、ベルナール・ピファレッティを紹介した。
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また今年新たに設立した、巨大なインスタレーション作品を会場内で展示する「パブリック・プロジェクト」も大きな存在感を放っていた。加えて、障害のある学生を支援してそれらの学生による作品を展示する「五彩基金(ファイブ・カラーズ・ファンデーション)」や、成都拠点の作家にフォーカスしたグループ展「Z Project」などの「スペシャル・プロジェクト」、そして中国のハイエンドECサイト「寺庫(スークー)」と共同で開催した期間限定のオンラインアートフェアも今年のアップグレードだ。
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なおフェアの開催に合わせて、成都市内の美術館や美術機関では様々な展覧会が開幕。隈研吾が建築デザインを手がけた知・美術館では、中国の書家と画家の魏立剛(ウェイ・リーガン)の大回顧展「万物」(〜8月18日)、成都博物館ではブルガリのジュエリー展「Serpenti Form」(〜8月25日)、麓湖・A4美術館では何翔宇(へ・シャンユ)と梁琛(リャン・チェン)の二人展「Roots」と「Aleph」(〜7月28日)などが開催されている。
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黄在は、「これからのアートフェアは前年と比べて少しずつ穏やかに拡大していきます。皆で力を合わせれば物事は立派に成功する。アートフェアは、地元や海外の人やリソースを集めるものであり、成都のアートシーンはこれから一層良くなるでしょう」と期待を寄せた。
毎年進化しているアート・チェンドゥは、次にどのようなアップグレードを見せるのか。今後の進化に注目したい。