2021.11.6

「Taiwan NOW」がKITTEをメイン会場に開催中。リー・ミンウェイの日本初公開作品にも注目

日本と台湾の文化交流と親善を目的にした文化交流事業「Taiwan NOW(台湾ナウ)」が、11月14日まで開催されている。東京駅前の商業施設「KITTE」内メイン会場のほか、バーチャル会場(オンライン)、台湾・高雄でも開催される本イベントは、やなぎみわや林明弘(マイケル・リン)など両国を代表するアーティスト、クリエイターが参加。10月30日に開催された開幕式でも、台湾のアーティストらによるパフォーマンスが披露された。

文=浦島茂世

李明維(リー・ミンウェイ)  如実曲径/私たちのラビリンス useography © UMUT
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 「Taiwan NOW(台湾ナウ)」は、「花と祝福」をコアコンセプトにしたアートイベント。日本と台湾のアーティストたちの創作活動を通じて日台間の理解促進や交流深化を目指している。会場となる東京・丸の内の「KITTE」アトリウムや、インターメディアテクのほか、バーチャル会場において台湾の最新の音楽や映画、演劇を無料で楽しむことができる。

 主催の財団法人文化台湾基金会は、東京オリンピック・パラリンピックに合わせて2020年の本イベントの開催を目指していたが、新型コロナウイルス流行の影響を受け開催を延期、オンライン会場を加えて新しいかたちでの開催となった。

林明弘(マイケル・リン)とアトリエ・ワンによるコラボレーション作品《Untitled Gathering (Tokyo 2020)》

 リアル会場となるKITTEのアトリウムには、台湾のアーティスト・林明弘(マイケル・リン)と、建築事務所「アトリエ・ワン」によるコラボレーション作品《Untitled Gathering (Tokyo 2020)》が設置された。マイケル・リンは華やかな色づかいの作品で日本でも人気の高いアーティスト。日本では金沢21世紀美術館や十和田市現代美術館などで、その作品を見ることができる。

 本作品は、テーブルやベンチ、スツール、そしてスツールが組み合わさって構成されており、配置におり連続性、装飾性のある模様を作り出すことが特長。会期中は、催し物に合わせてベンチやスツールの配置が変更され、華やかな空間に変化を生じさせる。

KITTEアトリウム内に設置された《Untitled Gathering (Tokyo 2020)》

 10月30日に行われた開幕式では、台湾の日本における大使館の役割を果たす台北駐日経済文化代表処の代表・謝長廷(シャ・チョウテイ)、公益財団法人 日本台湾交流協会の専務理事・花木出、共催のアジアNOW実行委員会(一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン)の井上智治がそれぞれ挨拶。コロナウイルスを乗り越え無事に開催にこぎつけたこと、スタッフやアーティストの尽力があったことに対して、各人が厚い感謝の言葉を述べた。

 また、台湾からは、財団法人国家文化芸術基金会の理事長で本イベントの総監督代表の林曼麗(リン・マンレイ)、そしてTaiwan NOWアンバサダーで台湾のデジタル担当政務委員を務める唐鳳(オードリー・タン)が、動画メッセージで登壇。このイベントをきっかけに日本と台湾がさらに密接な関係となるようそれぞれ期待を述べた。

 オードリー・タンは、バーチャル空間のなかで没入型の音楽体験ができる《みんなの花》をはじめ、バーチャル会場で世界中からプログラムを楽しめることを紹介。「誰もが日本と台湾の最先端のクリエイティブにふれることができる」とアピール。11月10日の日本時間15:00からは、オードリー・タンと世界最高齢のプログラマーとして知られる86歳の若宮正子がYouTube上で対談予定だ。

バーチャル会場のオープニング作品であるJL DESIGN × 呉仲倫(ウ・ヂォンルン)× 王希文(オーウェン・ワン)の《みんなの花》
バーチャル会場の映画館《台湾ウェイブ》

 アーティストの代表として登場したのは、美術家のやなぎみわ。やなぎは、かねてより台湾の大衆演劇「歌仔戯」に着目しており、南台湾の歌仔戯3大劇団「歌劇団」、「歌劇団」、「天字戯劇団」とコラボレーション。12月25日(土)に台湾の高雄にて『アフロディーテ 〜阿婆蘭(アポーラン)〜』を上演する。

 本作は台湾原産の胡蝶蘭である阿婆蘭(アポーラン)が、人間に改良され豪華な蘭となって量産されていく過程を通し、人間の姿を描きだすオペラ作品。やなぎは「新型コロナウイルスの影響で、日本での上演はかなわなかったが、いつか日本でも上演したい」と熱意を語った。

世界初演となる台湾オペラ作品『アフロディーテ 〜阿婆蘭(アポーラン)〜』日台合作 台湾歌仔戯 やなぎみわ(演出、脚本)

 このほか、メイン会場ではオープニング特別公演として、台湾で注目される気鋭の振付師、蔡博丞(ベンソン・ツァイ)によるダンス《浮花/フローティング・フラワーズ》が披露された。本作は、民間信仰にある灯籠流しのイメージをコンセプトに創られたもので、日本人ダンサーが出演している。

オープニング特別公演として披露された蔡博丞(ベンソン・ツァイ)によるダンス《浮花/フローティング・フラワーズ》

 また、KITTE内の博物館施設「インターメディアテク」では、李明維(リー・ミンウェイ)によるパフォーマンス《如実曲径/私たちのラビリンス》も開催された。李明維(リー・ミンウェイ)は台湾出身で現在はニューヨークとパリを拠点に国際的に活動。日本においては2014年に森美術館で日本初個展「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」を開催するなど、リレーショナル・アートを代表するアーティストとして知られる。訪れたミャンマーで見かけた掃除のあり方にインスパイアされたという本作は、ダンサーが散らばった米をほうきで掃くように動かし、軌跡を描いていくもの。本パフォーマンスは、会期中毎日開催予定だ。

李明維(リー・ミンウェイ)  如実曲径/私たちのラビリンス useography © UMUT

 困難を乗り越え、開催される運びとなった本イベントは、台湾の文化やテクノロジーを身近に感じることができるまたとない機会だ。メイン会場もオンライン会場も、どちらもたっぷり楽しんでみよう。

  ちなみに、KITTEではこの本イベントを記念し「週末限定!先着100名来場者キャンペーン」を実施。アトリウム1階では、土・日曜限定で先着100人に「Taiwan NOWオリジナル福袋」(ポーチ、コースター、マスクのセット)を配布予定だ。この機会にぜひ足を運んでみてほしい。

Taiwan NOWオリジナル福袋