PLAY! MUSEUMで見る、酒井駒子初の本格個展と「ぐりとぐら」展
2020年に開館した「絵と言葉」をテーマにした立川のPLAY! MUSEUMで、企画展示「みみをすますように 酒井駒子」展と、年間展示「ぐりとぐら しあわせの本」展が始まった。
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「絵と言葉」をテーマに、昨年6月に開館したPLAY! MUSEUM(東京都立川市)で、企画展示「みみをすますように 酒井駒子」展(4月10日〜7月4日)と、年間展示「ぐりとぐら しあわせの本」展(4月10日〜2021年3月末)が始まった。
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酒井駒子(1966〜)は『よるくま』や『金曜日の砂糖ちゃん』(ともに偕成社)などで知られる絵本作家。『きつねのかみさま』(ポプラ社)で日本絵本賞、『金曜日の砂糖ちゃん』でブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌賞、『ぼく おかあさんのこと…』(文溪堂)でピチュー賞(フランス)と銀の石筆賞(オランダ)を受賞。2009年には『ゆきがやんだら』(学研プラス)がニューヨーク・タイムズの「2009年の子供の絵本最良の10冊」に選ばれるなど、日本だけでなく世界的にも高い評価を得ている。
いっぽうの『ぐりとぐら』は、言わずと知れたふたごの野ねずみぐりとぐらが主役の絵本。中川李枝子と山脇百合子の姉妹が子供たちを喜ばせようとつくった絵本は、国民的な作品のひとつだ。
このふたつの展示について、PLAY!で企画プロデューサーを務める草刈大介は、「両展示とも絵本が作品だが、それを展覧会としてどう見せるかが挑戦だった」としつつ、「酒井駒子は絵をじっくりと見てもらいたいし、ぐりとぐらは空間の中で絵本を読むのとはまた違う体験を提示するもの。対照的な見せ方になった」と振り返る。
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立体感ある会場で物語をめぐる
企画展示「みみをすますように 酒井駒子」展は、酒井にとって初の本格個展となるもの。デビュー作から最新作まで、20冊を超す絵本を中心に、約250点の原画が展示され、物語やことばの断片、映像やオブジェも空間を彩る。
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展示は「ある日」「ひみつ」「こみち」「はらっぱ」「こども」「くらやみ」の6エリアで構成。特徴的なのはその会場構成だ。会場デザインは、フランスと京都を拠点に活動する建築家ユニット「2m26」(セバスチャン・ルノー、メラニー・エレスバク)が担当した。
セバスチャン・ルノーは本展デザインに際し、酒井駒子の作品が人間的であるがゆえに天然の杉材を使うことにこだわったという。また展示台の高さは大小様々で、身体を使い、絵本の世界の中に入っていくことを無意識のうちに促す。
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「この美術館で酒井さんのユニークな作品をどのように見せればいいのか。権威的に作品を見せたくはありませんし、作品と距離を感じる展示にはしません。時にはしゃがんで鑑賞したりするなど、作品の中に入り込めるような親密さを大切にしようとしました」。
なお会場内には酒井が制作を行う山のアトリエ周辺の映像や音、酒井が所有するオブジェなども配置。立体感ある会場の中で、酒井の原画と物語や文の断片をじっくりめぐってほしい。
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大人と子供、異なる目線を空間で表現
いっぽうの「ぐりとぐら しあわせの本」展では、原画は展示されていない。そこに広がるのは、ぐりとぐらの絵本の中の世界だ。
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展示を手がけた青木貴之は、「『ぐりとぐら』は日本で一番知られている絵本。僕たち大人が子供に何ができるのかを考え、子供の視点を振り返るようにデザインした」と語る。
会場には小さな穴や階段、滑り台などがあり、こちらも身体性を意識させられる。また展示室内にある壁は、大人の目線よりは低く、子供の目線よりは高く設計されており、大人と子供では異なる見え方を提示した。「ぐりとぐらが追いかけた景色を見てほしいと思います。ここに来るとぐりとぐらになれるよと伝えたい」。
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