「がまくんとかえるくん」を描いた絵本作家、アーノルド・ローベルの日本初展覧会が開幕。原画や資料でその人生と作品に迫る
「がまくんとかえるくん」シリーズで知られる絵本作家、アーノルド・ローベル(1933〜1987)。その原画や資料を紹介し作家の人生に迫る日本初展覧会「アーノルド・ローベル」展が、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開幕した。会期は1月9日〜3月28日。
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「がまくんとかえるくん」シリーズで知られる絵本作家、アーノルド・ローベル(1933〜1987)の日本初の展覧会「アーノルド・ローベル」展が、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開幕した。会期は1月9日〜3月28日。
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同展の展示は全6章構成。前半の第1〜5章と、後半の第6章で、大きくふたつに分かれている。前半は代表的なシリーズ「がまくんとかえるくん」以外の作品の原画約100点と、ローベル個人を知るための写真などを展示。後半は「がまくんとかえるくん」シリーズの原画やレイアウト、そして本展のために制作されたアニメーションを中心に展示をする。この構成は、ローベルの創作を時系列で追うのではなく、テーマに沿った作品からその思いを浮かび上がらせることを意図したためだ。
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ローベルは生涯で107冊の絵本を残したが、そのうちの35冊が自ら物語も考えたオリジナル絵本、残りの72冊はイラストレーションを手がけた絵本となっている。前半の第1章「ぼく この みちを いくよ!」や第2章「きみが いてくれて うれしいよ」では、ローベルのオリジナル絵本とともに、その生い立ちや人柄をたどり、なぜ絵本をつくるようになったのか、そして自身の経験が作品にどのように現れたのかを探る。
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ローベルは幼い頃から両親と離れて暮らし、また病気のために学校も長く休んでいた。そんなローベルを救ったのが本や映画で、それらに親しむうちに、やがて自身で物語をつくるようになったという。オリジナル絵本の原画には、少し変わっていても自由でのびのびと生きるキャラクターが描かれている。こうしたキャラクターの造形からは、幼少期に孤独や寂しさ、悲しさを感じたローベルがたどり着いた、ユニークさの肯定や多様性の大切さといったメッセージが受け取れる。
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第3章「お絵かきはデザート、お話づくりはホウレン草」では、ローベルが絵のみを担当した絵本の原画を展示。ローベルは絵だけを担当する際に、自分のテイストではなく、物語をよく吟味したうえで、作品にふさわしいテイストを模索。楽しみながら創作していたという。ここでは、『がまくんとかえるくん』とはまた異なる、その多彩な作風を知ることができる。
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また、第4章「お説教はまっぴら」や、第5章「ぼくは舞台監督で、衣装デザイナーで、幕を引く者」では、ローベルのオリジナル絵本のなかでも、動物が登場する作品の原画が多く展示されている。ローベルは、動物を主人公に据えることで、読む人によって様々な感情が移入できるようにしたという。
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さらに、展示室の床には足跡がつけられている箇所があり、たどっていくと足跡の主が描かれた原画が展示してある。多くの子供が訪れるPLAY!ならではの、子供の視点から楽しめる工夫となっている。
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さらに、ローベルの人となりがわかる写真やビデオなどが展示されたスペースにも注目したい。展示されているのはローベルのふたりの子どもから提供されたという写真や、その子供たちを撮影した8ミリビデオの映像だ。その表情や子供たちをみる眼差しからは、人を喜ばせるのが好きだったというローベルの人柄を感じることができるだろう。
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第1〜5章のタイトルはすべてローベルの言葉から取られている。展示空間のデザインを担当した建築家の齋藤名穂はこの意図について次のように語っている。「描かれてから長い時間が経過した作品が多いなか、2021年にいまいちどその原画と出会うことにどういう意味があるのかを考えた。ユーモアとウィットに富みながらも、核心をつくようなローベルの言葉を糸口に、その人生の道のりを原画とともに知ってほしい」。
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展示後半は、代表作である「がまくんとかえるくん」シリーズを紹介する第6章「がまくんとかえるくんの世界」だ。同作の物語のひとつ『おてがみ』(1970)のパネル展示をたどっていくと、天井にかかる布が少しづつ大きくなり、先が細くなるトンネルを抜けるような演出となる。齋藤はこのデザインについて「がまくんやかえるくんの住む小さな世界に来館者を導くような演出を意図した」と語っており、トンネルを抜けた先には岩をイメージさせるダンボール製の大型の什器や、池をイメージさせる円形のカーペットスペースが現れる。
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「がまくんとかえるくん」シリーズの絵本の制作過程は、ダンボールの什器を中心とした空間で紹介。段階を追った原画やレイアウトを展示するほか、ローベルと編集者がどのようなやり取りをし、いかに赤字を反映しながら絵本を作り上げたのかを、解説つきで見ることができる。本展のグラフィックデザインを手がけた菊地敦己は展示の注目ポイントを次のように語った。「とくに『書き分け版』と呼ばれる、印刷時の色の重なりを想像しながら描き分けた版に注目してほしい。ローベルの高い技術がうかがえる」と語っている。
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また、円状の丸い池のようなカーペットのスペースに足を運ぶと『がまくんとかえるくん』最後の物語「ひとりきり」を聞くことができ、目で見るのみならず、読み聞かせという形態から作品の世界に浸ることができる。
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展示の最後には、アニメーション作家・加藤久仁生による、「がまくんとかえるくん」シリーズのアニメーション作品を見ることができる。作中の様々なエピソードのなかからキーとなる場面を抽出して、アニメーション化したこのアニメーションについて、加藤は次のように語った。「ローベルが当時から好んで見ていたという昔の映画のような、クラシカルな雰囲気にしあげた。がまくんやかえるくんの動きを想像してアニメーション化したので、ふたりの歩き方や仕草から、いつも仲良しでいっしょにいるけれど、じつはまったく異なるそれぞれの個性を感じてほしい」。
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原画資料を展示するという、絵本作品の展覧会の基礎に忠実でありながら、その世界を様々なかたちで感じられるように工夫された本展。「がまくんとかえるくん」シリーズの詳細のみならず、ローベルというひとりの作家の人生や技術を、その世界観とともに味わえる展覧会だ。
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