美術館を救うチャリティ・オークション。京都で6000万円超える落札額
京都市が昨年初めて開催した、京都市京セラ美術館 新進作家支援・育成事業等のためのチャリティ・オークション。その2回目が、5月29日に京都市京セラ美術館を会場に行われた。
公立美術館を美術愛好家はいかに支えることができるのか? それを考えるうえで、京都市の試みは注目すべきものだろう。
京都市は昨年5月、数多くの美術愛好家らを集めたチャリティ・オークションを京都市京セラ美術館で初開催した。このオークションは、同館がリニューアル開館以来行っている新進作家の支援・育成スペース「ザ・トライアングル」の事業継続資金を調達するためのものだ(一部は京都市の姉妹都市ウクライナ・キーウ支援にも充てられた)。
「ザ・トライアングル」のように、美術館が新進作家を紹介する意義は大きい。しかし、同プログラムは観覧料を無料としていることから事業自体の運営・維持が課題となっていた。その支援策として行われたのがチャリティオークションだった。
美術館はあくまで会場を貸す側であり、昨年の主催は京都市、株式会社マツシマホールディングス、株式会社ニューアートディフュージョンから組成される実行委員会。160名が参加し、21ロットが3278万円で落札されたという経緯がある。
昨年の成功を受けて2回目となった今年は、京都市、株式会社マツシマホールディングス、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン、株式会社ニューアートディフュージョンの4者から組成される実行委員会が主催。休館日の5月29日、京都市京セラ美術館に170名のゲストが集まり、美術館は熱気に包まれた。
貴賓室でのプレビューと階下の西広間のカクテルを経て、美術館の中央ホールを舞台に行われたディナーとオークション。コレクターのみならず、様々なアート界のプレーヤーが見守るなか、山下有佳子(京都市成長戦略推進アドバイザー、アートプロデューサー)がオークショニアとなり24作品が競売にかけられた。今年の出品作家は青山悟、淺井裕介、石塚源太、伊藤存、岩崎貴宏、大山エンリコイサム、川人綾、鬼頭健吾、黒田アキ、五木田智央、小林正人、近藤亜樹、杉本博司、唐仁原希、中原ちひろ、名和晃平、蜷川実花、水野里奈、南依岐、宮島達男、村上隆、大和美緒、山本太郎、米谷健+ジュリア。若手からベテランまでが揃うなか、もっとも注目を集めていたのは村上隆だ。
来年、京都市京セラ美術館での個展を控える村上は、このチャリティ・オークションのために《京都に咲く花》と題した小型の新作を制作した。村上のトレードマークとも言える「お花」が画面全体を埋め尽くすこの作品は、本オークションでもっとも高額となる予想落札価格900万円〜1200万円。最終的にはこれを超える1540万円(税込)で落札され、オークションに花を添えた。
オークション全体の落札総額は6275万5000円(税込)。前回の約2倍という数字はインパクトが大きい。
主催者の一構成員である京都市の門川大作市長は、オークションに先立ち、「京都は6つの芸術系大学だけでなく、芸術家がどんどん育っている場所。皆で市場を育てる取り組みを、年々増やしていきたい」と、アート政策に注力する姿勢を示した。今回のチャリティ・オークションもその一環と言える。
また、この日は京都に移転した文化庁の都倉俊一長官も姿を見せ、「今後はアートビジネスを育成し、巨大な世界のアートマーケットに参入し、得た資金を還元し、さらなる新しい才能の育成・発信をしなければいけない」と明言。アートビジネスを成長させていくことが文化庁の今後の大きな柱となると強調した。
チャリティ・オークションという手法は、予算減少に直面する地方公立美術館を救う道のひとつであり、京都市の姿勢は評価できる。いっぽうで、公的機関であるならば、本来は国や地方自治体からの十分な予算配分があって然るべきだ。この両輪が揃ってこそ、持続可能な美術館運営が可能となるだろう。