坂茂設計の豊田市博物館が開館。豊田市美術館と補完し合う相乗効果を狙う
建築家・坂茂の設計による愛知県の豊田市博物館が、谷口吉生が設計した豊田市美術館の隣に開館した。
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世界的に活躍する建築家・坂茂の設計による愛知県の豊田市博物館が4月26日に開館した。館長を務めるのは、前豊田市美術館館長・村田眞宏だ。
同館が建設されたのは、江戸時代に存在した城郭・「七州城」の遺構。明治以降は豊田市立童子山小学校や愛知県立豊田東高等学校の敷地として利用されており、隣には建築家・谷口吉生が設計した豊田市美術館が1995年に開館している。
坂茂は4月25日に行われた内覧会で、博物館建物の設計にあたり谷口の建築とバランスよく配置し、プロポーションを決めたとしつつ、「美術館に来た人も博物館を発見し、博物館に来た人も自然に美術館に流れていくように並列させた」と話した。
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博物館の造園は、美術館と同じ米国のランドスケープ・デザイナーのピーター・ウオーカーによるもの。もともと遮断されていたふたつの敷地がつながるようになり、鑑賞者が両館を自然に行き来することができ、景観にも一体感と統一感を醸し出す。それにより坂茂は、「両館が補完し合うような相乗効果をもたせることを狙った」と説明している。
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博物館は、4つの異なる目的と機能を持つ建物でつながっている。敷地面積は約4万平米で、延床面積は約7800平米におよぶ。エントランスやロビーとして利用される木造の建物は、豊田市で伐採・調達された木材を使用。その他の3つの鉄筋コンクリート造の建物は、それぞれ常設展示室、企画展示室や収蔵庫、管理エリア、そして体験室やセミナールームなどとして利用される。
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エントランス・ロビー棟の天井に使われた木は、豊田市の市章をモチーフに配列されている。入口の屋根には円形の穴が開いており、正午頃には同市のシンボルマークの影が床に落とされる。
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世界中で展開している災害支援の活動でも知られている坂茂。同館は耐震性に十分配慮しつつ、災害時の公共のシェルターとしてエネルギーが自立できるように太陽光の蓄熱・蓄電も整備されている。また、同館は環境省の「ZEB Ready」(注:基準一次エネルギー消費量の50パーセント以上の削減に適合した建築物)資格を取得した日本初の美術館・博物館でもあるという。
同館の開館とともに、常設展示と、企画展示室を使った坂茂の活動を紹介するふたつの展示が行われている。「豊田の自然と人々の営み」をテーマにした常設展示は、4つのセクションによって構成され、その中核は高さ7.8メートルの4面の集合展示が占める(この集合展示は建物の耐震のコアな構造的要素でもあるという)。ガラス壁の棚には、豊田市の人々の暮らしのなかで使われた様々な道具や衣装、動植物の剥製、昆虫の標本などが並んでいる。
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ほかにも同展示室では、市民から寄せられた、学校生活や祭り、あるいはコロナ禍に関する様々な記憶のカード展示や、様々な歴史的なトピックが混ざった豊田市のジオラマ展示、そして自動車はもちろん、養蚕や製糸業でも栄えた豊田市のものづくりの歴史を紹介するコーナーを見ることもできる。
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パノラマスロープを登ると、常設展示室の2階には図書コーナーやみんなの研究室がある。情報収集や博物館の資料閲覧のために使うことができる。みんなの研究室につなぐ集合展示の2階部分は、「みんなの収蔵」というスペースになっており、市民の研究活動や展覧会の準備、資料の保管などの目的として利用可能だという。
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企画展示室では、坂茂が同館のコンペ参加時に提出した図面やパース、ジオラマなどの資料が展示。同展示室の中心を占めるのは、坂茂が開発した、災害時に避難所で過ごす人々のプライバシーを守るための間仕切りのシステムだ。
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これまで日本やイタリアの地震時、あるいはロシアによる侵攻開始後、ポーランドなどの隣国に避難するウクライナの人々が使ってきたこのシステム。本展では、ポーランドの学生やボランティアが地元の材料でつくった間仕切りを展示している。なかにはウクライナの避難民たちによる詩や写真も紹介されており、展示室のなかではベルリンに避難したウクライナ人の作曲家による音楽も流されている。
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そのほか、博物館のロビーでは豊田市の未来の姿を表した先端的なモビリティなどが展示。館外には、江戸時代に建てられ移築されたむかしの家[旧平岩家住宅(市指定文化財)]や、明治時代に建てられた土蔵、自然観察のための自然体験ゾーンもあり、そちらもあわせてチェックしてほしい。
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