「舟越桂 森へ行く日」(彫刻の森美術館)レポート。舟越桂が遺したもの
彫刻の森美術館が開館55周年を記念して、今年3月に逝去した彫刻家・舟越桂の展覧会「舟越桂 森へ行く日」を開催している。舟越の遺志を継ぎ、日常の美しさや人間の存在を考察する本展をレポートする。
神奈川・箱根の彫刻の森美術館で、今年3月に逝去した彫刻家・舟越桂(1951~2024)の展覧会「舟越桂 森へ行く日」が行われている。会期は11月4日まで。
本展は、同館の開館55周年を記念し、昨年3月に舟越に依頼して企画されたもの。今年、舟越の逝去を受け、最期までこの展覧会の実現を望み励んでいた作家本人の意思と、遺族の意向を尊重して実現することとなった。
会場は4つの展示室で構成され、それぞれが舟越の多彩な作品世界を紹介する。展示室1は「僕が気に入っている」と題し、舟越のアトリエを再現。日々の創作活動を垣間みれるデッサンやメモ、舟越が実際の制作に使っていた手製の作業台やデッサン用の一本足のイスなど、日常で愛用していたものや、アトリエに置かれていた代表作《妻の肖像》(1979-80)などが展示されている。
その意図について、本展の担当学芸員・黒河内卓郎は次のように語っている。「展示構成について考えたときに、私たちが打ち合わせでアトリエにお邪魔した際のアトリエの雰囲気がとても良かったことを思い出した。小さな民家だが、中に入ると木の香りが漂い、舟越さんが愛用している道具やオブジェがたくさんあった。まるで子供の秘密基地のようで、とても面白かったのだ。その雰囲気を来館者にも感じていただきたい」。