王露「BANG 幇」

　ふげん社で、王露による個展「BANG 幇」が開催されている。

　1989年中国・山西省生まれの王露は、2016年に来日し、東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻修士課程を修了後、現在は東京を拠点に写真家として活動。急激な発展によって移り変わる故郷・太原市と、その変化から取り残されるようにして暮らす自身の家族をテーマにした作品《Frozen are Winds of Time》は、2019年にキヤノン第2回SHINESに入選。2022年にふげん社から写真集が出版された。

　本展では、2021年から現在まで取り組んでいるプロジェクト「BANG 幇」を展示。王は、中国人留学生として日本で生活するなかで、在日中国人のアイデンティティや互助組織、先人の移住者たちが築いてきた文化やコミュニティに興味を持つようになった。

「幇（Bang）」とは、経済活動を中心とする互助的な中国人のグループのことで、異郷において、同郷・同族の人たちによって構成。日本における「幇」の拠点は、中国商人たちが江戸時代から住み始め、中華街として現代に残っている長崎に始まり、神戸、横浜などが主要な都市となっている。

　王は大判カメラを用いて、在日中国人の生活空間とポートレート、長崎や横浜の景色の中に見つけた中国的アイデンティティを写した。加えて、中国原産でありながら日本で生育する植物のドローイングも展示。自国の文化が、移民によってどのように異国へ伝わり、根付いていくのか。そこから立ち現れる風景とは何か。展示空間を用いて、個人と場所、文化のアイデンティティの交わりの様相を、写真とドローイングで表現し、個人のアイデンティティに場所がどのように影響するのかを探究する。