銀座にまつわる記憶を石内都の写真でたどる。資生堂ギャラリーで「石内都 初めての東京は銀座だった」展が開催へ
国内外で高く評価されている写真家・石内都の個展「石内都 初めての東京は銀座だった」が、東京・銀座の資生堂ギャラリーで行われる。会期は8月29日〜10月15日。
日本を代表する写真家として国内外で活躍する石内都の個展「石内都 初めての東京は銀座だった」が、東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催される。会期は8月29日〜10月15日。
石内は1947年群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。1979年、初期三部作のひとつ「APARTMENT」で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。同じ年生まれの女性の手と足をクローズアップした「1・9・4・7」以降、身体の傷跡を撮ったシリーズを展開。2005年、母の遺品を撮影した「Mother's 2000-2005 未来の刻印」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレの日本代表に選出され世界的に注目を集めるようになり、2007年より現在まで続く、原爆で亡くなった人々の遺品を撮影した「ひろしま」も国際的に評価されている。
近年は国内外の美術館やギャラリーで個展を多数開催。2014年には、写真界のノーベル賞と言われるハッセルブラッド国際写真賞を受賞。2015年、J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)の個展「Postwar Shadows」では、「ひろしま」がアメリカの美術館で初公開され、大きな反響を呼んだ。
石内が最初に銀座を訪れたのは、1962年15歳の春だった。東京でバスガール(女子車掌)をしていた叔母に、当時流行っていたジャズ喫茶に連れて行ってもらい、その後、映画鑑賞や美大時代に画材の購入のためしばしば足を運ぶようになる。また、写真家としてのスタートとなった初期の三部作、「絶唱、横須賀ストーリー」(1977)、「APARTMENT」(1978)、「連夜の街」(1980)の個展も銀座で行われた。
資生堂の企業文化誌『花椿』のウェブ版では、銀座の過去と現在について考える連載「現代銀座考」が始まっており、その第2章となる「銀座バラード」(2022年6月〜2023年5月)では、モノの記憶を映し出す石内の写真から、森岡督行が物語を紡ぐかたちで続けられた。
「銀座バラード」では、石内が現在も大切に保管し、銀座を訪れるきっかけとなった歌手のレコードや、月光荘で戦時中に製造・販売されていた絵具など、石内の記憶と結びつくものに加え、資生堂の初めての本格的な香水「香水 花椿」、銀座寿司幸の蛸引き包丁、ミタケボタンのアンティークボタン、銀座天一の天ぷら、銀座もとじの草履、壹番館洋服店の鋏、銀座ボーグの帽子、資生堂パーラーのオムライスなど、銀座の文化をつくってきた店の品々をとらえた写真が紹介されている。
今回の展覧会では、「銀座バラード」のために石内が撮り下ろした写真から、未発表のものも含む約30点のオリジナルプリントが展示。変化していく銀座で石内がとらえた品々から、様々な記憶や物語を想像しながら銀座の魅力に改めて感じてほしい。