宮永愛子、落合陽一、風景論からホックニーまで。3連休に見たい展覧会ベスト18
今週開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。
宮永愛子がガラスと対峙して得たものとは。「詩(うた)を包む」(富山市ガラス美術館)
「ガラスの街とやま」を目指したまちづくりの一環として、2015年8月に開館した富山市ガラス美術館。隈研吾によるデザインが特徴的なこの美術館で、宮永愛子の個展「詩(うた)を包む」が開幕した。会場のレポートはこちら。
宮永は1974年京都府生まれ。99年京都造形術大学美術学部彫刻コース卒業、2008年東京藝術大学大学院修了。「変わりながらあり続ける」をテーマとして、ナフタリン、樹脂、ガラスの彫刻や塩、葉脈を用いたインスタレーション作品で高い注目を集めるアーティストだ。代表シリーズに、ナフタリンや樹脂でかたどったトランクを実物とともに配した、旅と時間がテーマのインスタレーション《手紙》(2013-19)や、作家の日々の景色を描き、無数の気泡を含ませた絵画を浮かべた《life》(2018)などがある。
富山市ガラス美術館では初の個展となる本展では、ナフタリンを使った代表的なシリーズのみならず、ガラスを使った新作群が並ぶ。
会期:2023年11月3日~2024年1月28日
会場:富山市ガラス美術館
住所:富山市西町5番1号
電話番号:076-461-3100
開場時間:9:30~18:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
閉場日:第1・3水曜日(1月3日は開場)、年末年始(12月29日~1月1日)1月10日、
料金:一般 1200円 / 大学生 1000円 / 高校生以下無料
橋本麻里によるキュレーション展。日本の美術工芸を世界へ、特別展「ひかりの底」(TERRADA ART COMPLEXⅡ BONDED GALLERY)
世界市場においてアート作品と同様に高く評価されている日本の美術工芸品。その国際的な価値をさらに高めることを目指す「日本の美術工芸を世界へ実行委員会」が、東京・天王洲で展覧会「ひかりの底」をスタートさせた。レポートはこちら。
本展では、キュレーターに橋本麻里(小田原文化財団 甘橘山美術館 開館準備室室長)を迎え、「ひかりの底」をコンセプトに、6人の作家による作品と、京都府所蔵の貴重な作品が展示されている。参加作家は、井本真紀(ガラス)、江里朋子(截金)、山村慎哉(漆工)、橋本知成(陶芸)、誉田屋源兵衛(染織)、かみ添(唐紙)、清水卯一(陶芸、京都府蔵 [京都文化博物館管理] )。
会期:2023年11月1日〜21日
会場:TERRADA ART COMPLEXⅡ BONDED GALLERY
住所:東京都品川区東品川1-32-8 4F
開館時間:11:00~19:00(最終日〜17:00)
休館日:月
料金:無料
長い歴史と伝統のなかに見る、皇室と文化の関わり。皇居三の丸尚蔵館 開館記念展 「皇室のみやび―受け継ぐ美―」(皇居三の丸尚蔵館)
今年11月に開館50周年を迎えるとともに、展示空間の拡大など、その装いを新たにした「皇居三の丸尚蔵館」。その開館を記念した展覧会「皇室のみやび─受け継ぐ美─」が4期にわたって開催されている。
皇室から国への美術品類寄贈を契機に、1992年に皇居東御苑内に開館した三の丸尚蔵館。「皇居三の丸尚蔵館」としての開館は、今年10月にその運営・管理が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へ移管されたことをきっかけとするものだ。
本展は、同館を代表する多種多様な収蔵品を、第1期「三の丸尚蔵館の国宝」、第2期「近代皇室を彩る技と美」、第3期「近世の御所を飾った品々」、第4期「三の丸尚蔵館の名品」に分けて紹介。今月より始まる第1期では、《蒙古襲来絵詞》や《屏風土代》(小野道風)など、近年指定された国宝8件のなかから4件が展示される。
会期:2023年11月3日〜2024年6月23日
第1期「三の丸尚蔵館の国宝」(11月3日〜12月24日)
第2期「近代皇室を彩る技と美」(2024年1月4日〜3月3日)
第3期「近世の御所を飾った品々」(2024年3月12日〜5月12日)
第4期「三の丸尚蔵館の名品」(2024年5月21日〜6月23日)
会場:皇居三の丸尚蔵館
住所:東京都千代田区千代田1-8皇居東御苑内
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月(ただし祝日の場合は開館、翌平日休館)
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生及び18歳以下、満70歳以上無料
邸宅を彩った日本画の在り方に着目。「特別企画展 日本画の棲み家」(泉屋博古館東京)
床の間や座敷を飾る日本画の魅力をコレクションから紹介する「特別企画展 日本画の棲み家」が、東京・六本木の泉屋博古館東京で開催中。会場レポートはこちら。
明治期における西洋文化の到来によって日本画は「床の間芸術」から「展覧会芸術」へと変化してきた。会場では、かつて邸宅を飾った「柔和な」性質と「吉祥的」内容を持つ日本画とその取り合わせを再現的し展覧される。
また、現代の作家が「床の間芸術」をテーマに描いた作品もあわせて展示し、いまの「床の間芸術」とは何かを考えるものとなる。
会期:2023年11月2日〜12月17日
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
開館時間:11:00〜18:00(金〜19:00) ※入館は閉館の30
休館日:月
料金:一般 1000円 / 高大生 600円 / 中学生以下無料
身体で対峙する大巻伸嗣の大作。「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」(国立新美術館)
東京・六本木の国立新美術館で大巻伸嗣の個展「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」が開幕した。会期は12月25日まで。担当学芸員は長屋光枝。レポートはこちら。
今年4月に東北地方初となる個展「⼤巻伸嗣―地平線のゆくえ」を弘前れんが倉庫美術館で開催した大巻が、今度は国立新美術館を舞台に個展「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」をつくりあげた。国立新美術館では、その空間的な広がりを最大限に生かし、3つの大規模なインスタレーションを中心に展覧会が構築されている。
会期:2023年11月1日〜12月25日
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:無料
3回目の開催は、東京のアートコミュニティに何をもたらすのか?「アートウィーク東京 2023」(都内50の美術館、ギャラリーほか)
アート・バーゼルと提携し、一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォームの主催により2021年にソフトローンチされたアートウィーク東京(以下、AWT)が11月2日〜5日の会期で開催されている。レポートはこちら。
東京国立近代美術館や東京都現代美術館、森美術館など、日本のアートシーンを牽引する美術館のほか、銀座メゾンエルメス フォーラム、資生堂ギャラリーといった名だたる施設やギャラリーが参加する同イベント。とくに今年のAWTで注目したいのは、滋賀県立美術館ディレクター・保坂健二朗をアーティスティックディレクターに迎えた新しい企画「AWT FOCUS」だ。
さらに南⻘山の複合ビルemergence aoyama complexに「AWT BAR」がオープンするなど、多角的な楽しみ方ができるのも特徴だ。
会期:2023年11月2日〜11月5日
会場:都内50の美術館/インスティテューション/ギャラリー、大倉集古館(AWT FOCUS)、「AWT BAR」ほか
各プログラム会場料金:
※AWT BUS の乗車無料。
※参加ギャラリーの入場無料。
参加美術館ではAWT会期中に限り所定の展覧会にてAWT特別割引適用。
※AWT FOCUSの入場一般有料(詳細は公式ウェブサイトを参照)、学生・子供無料。
田名網敬一の「屏風」作品が登場。「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI」(プラダ 青山店)
プラダ財団の企画による展覧会「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網敬一」がプラダ 青山店で開催されている。
田名網敬一は1936年東京生まれ。グラフィックデザイナー、イラストレーター、アーティストと、メディアやジャンルにとらわれない表現活動を行っており、1960年代から半世紀以上にわたって、アートシーンを牽引し続ける存在だ。
本展の大きなテーマとなるのは「屏風」。東京展では、歌舞伎の小道具として設置された屏風や12世紀の日本の仏教寺院を由来とし、戦後にも流行した紙芝居の小道具としての屏風に言及しながら、「屏風の物語」を探求する。
会期:2023年11月3日〜24年1月29日
会場:プラダ 青山店 5階
住所:東京都港区南青山5-2-6
開館時間:プラダ 青山店に準ずる
休館日:プラダ 青山店に準ずる
料金:無料
コンセプトは「xenogender 〜 豊かな分断[フォッサマグナ]」。「⼭梨国際芸術祭 ⼋ヶ岳アート・エコロジー 2023」(清春芸術村、中村キース・ヘリング美術館ほか)
地域の自然環境と融和する作品や表現を通して、来場者の思考や属性を解放することを目指す芸術祭「山梨国際芸術祭 八ヶ岳アート・エコロジー2023」が、清春芸術村、中村キース・ヘリング美術館、身曾岐神社、GASBON METABOLISMを会場に開催される。
同芸術祭は、八ヶ岳・南アルプス・金峰山に囲まれ、フォッサマグナによる日本列島の大きな分断に位置する山梨県北杜市を舞台に、ゼノジェンダー(男女に限らず非生物や動植物などとの関係性を性別に取り込む思想)の視点で展開されるもの。
参加作家は、泉太郎、磯村暖、磯崎隼士、落合陽一、加々見太地、SIDE CORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUAD、SCAN THE WORLD、高田冬彦、宮原嵩広、村田美沙、山田リサ子、吉野祥太郎、Yoshirotten、脇田玲、渡辺志桜里+永山祐子。
会期:2023年11月5日〜12月20日
会場:清春芸術村、中村キース・ヘリング美術館、身曾岐神社、GASBON METABOLISM
ありふれたものから深遠な世界を。「今村源 遅れるものの行方」(水戸芸術館 現代美術ギャラリー)
現代美術家・今村源の個展「今村源 遅れるものの行方」が水戸芸術館 現代美術ギャラリーで開催中。
普段気にも留めないありふれたものに、日常と表裏一体にある深遠な世界を鑑賞者に想起させる作風で知られる今村は、1980年代前半より京都を拠点に制作活動をスタートさせ、ボール紙、発泡スチロール、石膏、針金やビニールなど、およそ彫刻らしからぬ軽い素材で、浮遊感溢れる「彫刻」を制作してきた。その根元には、今村が関心を寄せる「キノコの世界」があるという。本展はそんな今村の10年ぶりとなる美術館での個展となっている。
会期:2023年11月3日〜2024年1月28日
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は17:30まで
休館日:月(ただし、1月8日は開館)、12月27日~1月3日、1月9日 、12月9日、10日は近隣でG7大臣会合開催のため休館
料金:一般 900円 / 高校生以下・70歳以上無料
「現代美術の最高峰」を見る。「デイヴィッド・ホックニー展 」(東京都現代美術館)
現代を代表するイギリスの美術家、デイヴィッド・ホックニーの日本で27年ぶりとなる大規模個展「デイヴィッド・ホックニー展」が、東京都現代美術館で11月5日まで。会場のレポートはこちら。
イギリス各地とロサンゼルスで制作された多数の代表作に加えて、豊かな色彩感覚によって芽吹きの季節をダイナミックにとらえた近年の風景画の傑作「春の到来」シリーズや、COVID-19によるロックダウン中にiPadで描かれた全長約90メートルの新作まで120点余の作品が展示されている。本展に並んだ「ものを見る」ということについて実験を試みた作品群からは、ホックニーは現代最高の作家と評価される理由を理解することができるだろう。
会期:2023年7月15日〜11月5日
会場:東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日
料金:一般 2300円 / 大学生・65歳以上 1600円 / 中・高生 1000円 / 小学生以下無料
伝統的な住宅を立体曼荼羅に。落合陽一「ヌル即是計算機自然:符号化された永遠, オブジェクト指向本願」(日下部民藝館)
重要文化財である岐阜・高山の日下部家住宅は、日下部民藝館として建物の公開と日下部家所蔵の文物を展示、また建物を活かした多様な文化事業を行ってきた。この場所でメディア・アーティストの落合陽一が、飛騨の歴史や文化と「デジタルネイチャー」の思想を組み合わせた展覧会「ヌル即是計算機自然:符号化された永遠, オブジェクト指向本願」を開催している。会場レポートはこちら。
本展では日下部家住宅を巨大な立体曼荼羅に見立て、伝統的な職人技と現代のテクノロジーを融合させたデジタルファブリケーションによる木彫や、身体性を有したオルタナティヴ・プロセスであるプラチナプリントで映しとった裸の身体、無限の空間を表現するインフィニティーミラーの立体と LLMs(大規模言語モデル)を用いた対話型インスタレーションを複雑に交わらせ、空間に浮遊する真言密教的モチーフと過去の肉声を組み合わせたインスタレーションを展開。また、落合が本展のために新たに手掛けた「オブジェクト指向菩薩」を展示し、曼荼羅における大日如来と対をなし、自然と生命の全体を理解する新たな視点を与えるという。
会期:2023年9月17日〜11月5日
会場:日下部民藝館
住所:岐阜県高山市大新町1-52
休館日:火
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 小・中学生 500 円
新作、ガラスのトーチと炬火台。「吉岡徳仁 FLAME ガラスのトーチとモニュメント」(21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3)
デザインや建築、アートの領域で国際的に活動するデザイナー・アーティストの吉岡徳仁(1967~)。その新作発表展となる「吉岡徳仁 FLAME ガラスのトーチとモニュメント」が東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3で開催されている。会期は11月5日まで。会場レポートはこちら。
新作のひとつは、《ガラスのトーチ》(2022)だ。透明のトーチは炎が空中に浮遊するように設計されており、全体を二重構造にすることで熱が分散できるほか、空気を通して燃焼を持続させることが可能。もうひとつの新作である《ガラスの炬火台》(2022)は屋外に展示されている。こちらもトーチ同様に点火をすると炎が浮遊するように見える設計となっており、囲いの隙間から風が吹き込むことでトルネードの炎を生み出す。
会期:2023年9月14日〜11月5日
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
開館時間:10:00〜19:00 ※最終入場は18:50まで
休館日:火
料金:無料
「知らない」と「わかる」の狭間で。「あ、共感とかじゃなくて。」 (東京都現代美術館)
東京都現代美術館で、日々生まれている「共感」とこれをあえて避けることに焦点を当てた展示「あ、共感とかじゃなくて。」が開催されている。レポートはこちら。
本展には、ひきこもりの経験を持ちながら当事者をケアする活動家・アーティストの渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)、有川滋男、武田力、中島伽耶子、山本麻紀子の5組が参加。それぞれが抱く「知りたい」と「知ってほしい」から生まれた作品が並び、「これはわかる」と「わからない」の両方と出会うような空間になっている。
会期:2023年7月15日~11月5日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:一般 1300 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 900円 / 中高生 500円 / 小学生以下 無料
大切なのは「目を開くこと」。「ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室」
画家、デザイナー、美術教師としても知られているジョセフ・アルバース(1888~1976)。その作品や授業風景、学生らの制作物を紹介し、アルバースの制作者、そして教師という両側面に迫る展覧会「ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室」が千葉・佐倉のDIC川村記念美術館で開催されている。会場レポートはこちら。
ドイツで生まれたアルバースは、造形学校バウハウスで学び、のちに同校の教師として基礎教育を担当した。1933年に同校が閉鎖されると渡米し、ブラックマウンテン・カレッジや、イェール大学に勤務。戦後アメリカの重要な芸術家たちの育成に尽力した。本展では全4章にわたり、アルバースの研究作品や学生の作品約100点を時系列順に展示。それらを通じて、素材や色彩、造形への探究の変遷や新たな可能性として発見された事例を紹介している。
会期:2023年7月29日〜2023年11月5日 ※会期中に一部展示替えあり(前期:7月29日~9月18日/後期:9月20日~11月5日)
会場:DIC川村記念美術館
住所:千葉県佐倉市坂戸631
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日
料金:一般 1800円 / 学生・65歳以上 1600円 / 高校生以下 無料
つながりのないふたりの共通項。「土方久功と柚木沙弥郎 ――熱き体験と創作の愉しみ」(世田谷美術館)
世田谷美術館で「土方久功と柚木沙弥郎 ――熱き体験と創作の愉しみ」が開催中。土方久功(1900〜1977)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科を卒業後、1929年から42年まで、当時日本の委任統治領であったパラオ諸島や、カロリン諸島中部のサタワル島で過ごす。現地の人々と生活しながら制作に励むいっぽうで、周辺の島々を巡り、生活様式や儀礼、神話などの詳細な調査も熱心に行なった。
いっぽうの柚木沙弥郎(1992〜)は東京帝国大学(現・東京大学)文学部美学美術史科で学んだ後、柳宗悦が提唱する「民藝」の思想と、芹沢銈介の型染カレンダーとの出会いを機に染色の道を志すようになる。以来、鮮やかな色彩と大胆な構図の型染による作品を発表するほか、立体作品、絵本まで精力的な創作活動を展開している。100歳を迎えてなお活躍を続ける柚木の作家人生においては、海外でメキシコの玩具などを目にした経験が、より自由な表現へ向かう契機と言える。
両者に直接的な接点はないものの、多彩な表現の広がりをみせる土方と柚木の作品世界は、不思議と共通項を見出すことができる。本展では世田谷美術館の収蔵品に作家や遺族の方が所蔵する作品と資料を加え、パラオ諸島や周辺の島々での稀有な体験、そして日常の身近なものや出来事に潜む面白さを源泉として生まれた二人の創造の世界を紹介する。
会期:2023年9月9日~11月5日
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
電話:03-3415-6011
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月、9月19日、10月10日は休館(9月18日、10月9日は開館)
観覧料:一般 500円 / 65歳以上 400円 / 大高生 400円 / 中小生 300円
「描く」行為のアップデートを図る。「宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」(練馬区立美術館)
1980年代末より映像作家、グラフィックデザイナー、VJ、文筆家、キュレーターなど多岐にわたる活動を展開する現“在”美術家・宇川直宏(1968〜)。その個展「宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」が東京・練馬の練馬区立美術館で11月5日まで。
宇川は、1990年代末より活動の舞台を現代アート表現にも拡張し、国内外で様々な作品を発表。2010年には世界に先駆けてライブストリーミング・チャンネル「DOMMUNE(ドミューン)」を開局し、毎夜、多種多様なトーク、DJプレイ、ライブやトークセッション等を世界に配信するなど、国内外の先端的なアートシーンに大きな影響を与えてきた。本展は、13年間のDOMMUNEの膨大な番組アーカイブを紹介するとともに、それらの映像を素材として、絵画や立体作品など他のメディアに拡張・変換・創造し、“描く”という行為の歴史的なアップデートを図るものだ。
会期:2023年9月10日~11月5日
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
電話番号:03-3577-1821
開館時間:10:00~18:00 ※入館は17:30まで
休館日:月
料金:一般 1000円 / 高校・大学生および65~74歳 800円 / 中学生以下および75歳以上 無料
写真は風景をいかにつくり出してきたか。「風景論以後」(東京都写真美術館)
東京都写真美術館で「風景論以後」が開催されている。1970年前後の日本に現れた「風景とは何か」という風景論は、社会的構造や美的基盤のあり方を語り、不安な時代や社会状況を契機として登場した。視覚芸術を通じて、文化、社会、政治との関係から風景を表現していくその実験は、同時代の写真家、映像作家に大きな影響を与えた。
本展では、1970年前後の風景論と、その理論と連動した写真映像表現を再考し、現在にいたるまでの作品群を結ぶことで、風景論以後の写真映像表現の可能性を概観する。91点(うち映像作品10点、写真作品43点、資料38点)の展示を通して、写真映像表現を改めて見つめる展覧会となっている。
会期:2023年8月11日~11月5日
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話:03-3280-0099
開館時間:10:00~(金~20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
観覧料:一般 700円 / 学生 560円 / 中高生・65歳以上 350円
名作を資料で振り返る。連載50周年記念「手塚治虫 ブラック・ジャック展」(東京シティビュー)
東京シティビューで、連載50周年記念「手塚治虫 ブラック・ジャック展」が開催されている。
本展は、500点以上の原稿に加え、連載当時の『週刊少年チャンピオン』や、1970年代に発行された単行本、200以上のエピソードの直筆原稿が展示される『ブラック・ジャック』史上最大規模の展覧会となっている。『ブラック・ジャック』が描かれた昭和の当時の様々な出来事に影響を受けた作品や、手塚治虫の情熱と執念が感じられる当時の関係資料、『ブラック・ジャック』が生まれたときの秘密が解き明かされる証言映像なども展示されている。
会期:2023年10月6日~11月6日
会場:東京シティビュー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52F
電話:03-6406-6652(受付時間 10:00~20:00)
開館時間:10:00~21:00
休館日:会期中無休
観覧料:一般 2300円 / 学生(高校・大学生) 1700円 / 子ども(4 歳~中学生) 900円 / シニア(65 歳以上) 2000円