今週末に行きたい展覧会ベスト13。中尊寺金色堂、モネ、キュビスムにカプーアまで
今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。
間近で見る国宝仏像。建立900年 特別展「中尊寺金色堂」(東京国立博物館)
国宝・中尊寺金色堂の建立900年を記念し、東京国立博物館で建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が始まった。会場レポートはこちら。
中尊寺金色堂は天治元年(1124)、藤原清衡(1056〜1128)によって建立された東北地方現存最古の建造物。建物の内外は金色で飾られ、螺鈿蒔絵の漆工技法を駆使した装飾が施された絢爛豪華な姿を持つ。都から離れたこの地で栄華を極めた奥州藤原氏が眠る聖地であり、世界遺産に登録される岩手・平泉の文化遺産のシンボルとなっている。
本展は、この金色堂の中央壇の壇上に安置される11体の国宝仏像をすべて展示。寺の外で中央壇上のすべての仏像がそろって展示されるのは初めてのこととなる。
会期:2024年1月23日〜4月14日
会場:東京国立博物館 本館特別5室
住所:東京都台東区上野13-9
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(2月12日、3月25日は開館)、2月13日
料金:一般 1600円 / 大学生 900円 / 高校生 600円
アメリカの印象派の足跡を知る。「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」(東京都美術館)
第1回印象派展から150周年を迎える2024年、印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした衝撃と影響をたどる展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が、東京都美術館で開幕した。
19世紀後半、大都市パリには国外からも多くの画家が集った。パリで印象派に触れ、学んだ画家たちは、新しい絵画の表現手法を自国へ持ち帰る。本展は、西洋美術の伝統を覆した印象派の革新性とその広がり、とりわけアメリカ各地で展開した印象派の諸相に注目するものだ。
アメリカ・ボストン近郊に位置するウスター美術館は、1898年の開館当初から印象派の作品を積極的に収集してきた。本展ではほとんどが初来日となる同館の印象派コレクションを中心に、日本でもよく知られるモネ、ルノワールなどフランスの印象派にくわえ、ドイツや北欧の作家、国際的に活動したサージェント、さらにはアメリカの印象派を代表するハッサムらの作品が一堂に会す機会となる。
会期:2024年1月27日~4月7日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:30(金〜20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休館日:月(ただし2月12日、3月11日、3月25日は開室)、2月13日
九州派とは何だったのか。「オチ・オサム展」(福岡市美術館)
福岡市美術館で、美術家、オチ・オサム(1936〜2015)の回顧展「オチ・オサム展」が開催される。会期は1月24日~3月24日。
オチは福岡を拠点とする前衛美術グループ「九州派」の中心メンバーとして活動。九州派時代はアスファルトなど身近な事物を絵画やオブジェの素材とした作品を制作。1960年代後半から70年代にかけ、二度にわたり渡米。同地でヒッピー文化に刺激され、絵画制作に取り組んだ。この頃より登場する空間に浮かぶ球体というモチーフはオチの代名詞となる。自宅では膨大なドローイングやコラージュを制作。生活に根ざした表現を日々探求した。
本展はオチの美術館初の回顧展となる。九州派時代から晩年までの作品・資料約180点を紹介し、幅広い活動をたどる。出品作品の図版や年譜を収録した展覧会図録も刊行予定。近年の作品等の調査を踏まえた展覧会となりそうだ。
会期:2024年1月24日〜3月24日
会場:福岡市美術館
住所:福岡市中央区大濠公園1-6
電話番号: 092-714-6051(代表)
開館時間:9:30~17:30 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(2月12日は開館)、2月13日
料金:一般 200円、高大生 150円、中学生以下無料
人気シリーズを深掘り。「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」(横尾忠則現代美術館)
神戸の横尾忠則現代美術館で、横尾忠則の「Y字路」シリーズに焦点を当てた展覧会が開幕した。
2000年、故郷の西脇で、横尾忠則は夜の三叉路をストロボ撮影した。すると見慣れたはずの景色が、全く異なる風景となって立ち現れた。この写真からインスピレーションを得た横尾は「Y字路」シリーズに着手、それらはやがて彼にとって重要なライフワークとなっていった。内省的な光と闇の世界は、祝祭的な色彩の爆発を経て、さらに変幻自在なバリエーションを生み出しつつ今日に至っている。
2015年、同館では2006〜2015年の作品による「横尾忠則 続・Y字路」を開催。本展はいわばそれを補完するもので、シリーズの原点である初期作品(2000〜2005年)、および新近作(2016年〜)により、多彩な「Y字路」シリーズの魅力に迫る。
会期:1月27日〜5月6日
会場:横尾忠則現代美術館
住所:神戸市灘区原田通3-8-30
電話番号:078-855-5607
開館時間:10:00-18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(2月12日、4月29日、5月6日は開館)2月13日、4月30日
料金:一般 700 / 大学生 550円
歴史を俯瞰する美術の試み。ローラン・グラッソ展「Orchid Island」(ペロタン東京)
フランス人アーティスト、ローラン・グラッソの個展「Orchid Island」が東京・六本木のペロタン東京で開幕した。
ローラン・グラッソは、映像、絵画、彫刻、建築、インスタレーションなど多岐にわたる手法で作品を発表しており、特に、未来から過去へ、過去から未来へと、文明史を自由に跳躍しながら俯瞰する視点で知られている。
日本ではこれまでに、2015年に銀座メゾンエルメス フォーラムにて個展「Soleil Noir」(黒い太陽)を開催、また2016年には森美術館の「宇宙と芸術展」に出展。本展では、19世紀の植民地表象や台湾の自然に取材した映像作品などを組み合わせ、歴史の複雑性とそこに生まれる美術的な試みを、絵画、映像、立体などを組み合わせて探求する。
会期:2024年1月26日~2月24日
会場:ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階 ペロタン東京
開館時間:11:00〜19:00
休館日:日、月、祝日
料金:無料
キュビスムの歴史を改めて考える。「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ 」(国立西洋美術館)
パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって生み出されたキュビスムに焦点を当てた展覧会「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ 」が、東京・上野の国立西洋美術館で1月28日まで。会場レポートはこちら。
本展は、世界屈指の近現代美術のコレクションを誇るパリ・ポンピドゥー・センターよりキュビスムの歴史を語るうえで外せない名作が多数来日。そのうち50点以上が日本初出品となる。主要作家約40人による絵画をはじめ、彫刻、素描、版画、映像、資料など約130点が展示される。
なお、ピカソ12点、ブラック15点が来日し、まとまった作品数でふたりの画家が展開したキュビスムの実験的な営みを追体験できる貴重な機会となっている。
会期:2023年10月3日~2024年1月28日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
※京都市京セラ美術館に2024年3月20日~7月7日に巡回
創成期の能に思いを馳せる。「国宝 雪松図と能面✕能の意匠」(三井記念美術館)
東京・日本橋の三井記念美術館で「国宝 雪松図と能面✕能の意匠」は1月27日まで。会場レポートはこちら。
年末年始の恒例行事となっている、同館所蔵の国宝 円山応挙筆《雪松図屏風》(18世紀後半)の展示。本展は、この《雪松図屏風》とともに同館が所蔵する旧金剛家伝来の重要文化財の能面や、能装束、能楽器などを鑑賞できる展覧会だ。
会場に並ぶのは三井家伝来の貴重な能面の数々。能という芸能が成立した直後の室町〜桃山期の希少な能面が、往時の能に携わった人々の思想の一端を物語っている。
会期:2023年12月7日〜2024年1月27日
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下 無料
夢と現実を結ぶデザインを辿る。「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」(世田谷美術館)
東京都世田谷区の世田谷美術館で開催中の「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」は1月27日まで。1960年代以降のデザイン界において、世界的に高い評価を受けたデザイナー・倉俣史朗(1934〜1991)の詩情あふれるデザインを読み解き直すものだ。会場のレポートはこちら。
会場は、倉俣が当初勤めていた株式会社三愛所属時代の仕事を紹介するプロローグに始まり、テーマごとに仕事を取り上げる4つのパート、そして倉俣による未公開のスケッチなどを紹介するエピローグで構成されている。
没後30年を迎えた倉俣によるデザインの数々が一堂に集まる、大変貴重な機会。エピローグでは、いままで公開されてこなかった倉俣によるスケッチや夢日記も展示されている。スケッチと夢日記が次第に交わっていき、それらがインテリアというかたちで現実に落とし込まれていく。倉俣がなぜこのようなデザインを生み出すことができたのか、その一端を知ることができる資料であり、本展の醍醐味となっている。
会期:2023年11月18日〜2024年1月28日
会場:世田谷美術館住所:東京都世田谷区砧公園1-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は17:30まで
料金:一般 1200円 / 65歳以上 1000円 / 大高生 800円 / 中小生 500円
著名な連作が集結。「モネ 連作の情景」(上野の森美術館)
1874年に第1回印象派展が開催されてから150年の節目を迎えることを記念して、クロード・モネの作品60点以上が一堂に会する展覧会「モネ 連作の情景」が上野の森美術館で開催されている。レポートはこちら。
本展は、クロード・モネの代表作である《積みわら》や《睡蓮》などをモチーフとした「連作」に焦点を当てながら、時間や光との対話を続けた画家の生涯をたどるもの。
会場は「第1章 印象派以前のモネ」「第2章 印象派の画家、モネ」「第3章 テーマへの集中」「第4章 連作の画家、モネ」「第5章 『睡蓮』とジヴェルニーの庭」の全5章で構成され、印象派以前の作品であり日本初公開となる《昼食》を含む、国内外のモネの代表作60点以上が一堂に会する機会となっている。
会期:2023年10月20日〜2024年1月28日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) ※全日9:00〜20:00受付
開館時間:9:00〜17:00(金土日〜19:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:2023年12月31日、2024年1月1日
料金:一般 平日 2800円、土日祝 3000円 / 大学・専門学校生・高校生 平日 1600円、土日祝 1800円 / 中小学生 平日 1000円、土日祝 1200円
ワタリウム美術館そのものを焦点に。梅田哲也展「wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ」(ワタリウム美術館)
現代美術家・梅田哲也の展覧会「wait this is my favorite part / 待ってここ好きなとこなんだ」が、東京・外苑前のワタリウム美術館で1月28日まで開催されている。展覧会レポートはこちら。
梅田は、ワタリウム美術館そのものにフォーカスし、ひとつのパフォーマンス公演のように展覧会を構成した。展示作品は同館の建築的な側面に焦点を当てて制作されており、鑑賞者がツアー進行中のところどころで登場するキャストの行動に誘導されながら、館内の展示室やバックヤードを巡って体験する展示となっている。
鑑賞者が各フロアを移動しながら、これまで展示室として使用されていなかっ たスペースを身近に体験することで、マリオ・ボッタによる美術館の建築をより直感的にとらえることができる。
会期:2023年12月1日〜1月28日
会場:ワタリウム美術館+空地
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話番号:03-3402-3001ツアー
時間:13:00〜19:00 (毎20分ごとにスタート、所要時間:約50分、最終入館:18:00)定員:各回6名
料金:一般 2800円 / U25、O65 2000円 / 小学生以下・障害者手帳所持者とその同伴者1名 無料 / ツアー・フリーパス 5000円(会期中何度でも鑑賞可能) ※事前予約制
宮永愛子がガラスと対峙して得たものとは。「詩(うた)を包む」(富山市ガラス美術館)
「ガラスの街とやま」を目指したまちづくりの一環として、2015年8月に開館した富山市ガラス美術館。隈研吾によるデザインが特徴的なこの美術館で、宮永愛子の個展「詩(うた)を包む」で1月28日まで開催されている。会場のレポートはこちら・
宮永は1974年京都府生まれ。99年京都造形術大学美術学部彫刻コース卒業、2008年東京藝術大学大学院修了。「変わりながらあり続ける」をテーマとして、ナフタリン、樹脂、ガラスの彫刻や塩、葉脈を用いたインスタレーション作品で高い注目を集めるアーティストだ。代表シリーズに、ナフタリンや樹脂でかたどったトランクを実物とともに配した、旅と時間がテーマのインスタレーション《手紙》(2013-19)や、作家の日々の景色を描き、無数の気泡を含ませた絵画を浮かべた《life》(2018)などがある。
富山市ガラス美術館では初の個展となる本展では、ナフタリンを使った代表的なシリーズのみならず、ガラスを使った新作群が並ぶ。
会期:2023年11月3日~1月28日
会場:富山市ガラス美術館
住所:富山市西町5番1号
電話番号:076-461-3100
開場時間:9:30~18:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
料金:一般 1200円 / 大学生 1000円 / 高校生以下無料
作品を通じて見る現代の監視社会。「アニッシュ・カプーア_奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」(GYRE GALLERY)
インド文明とヨーロッパのモダニズムを融合させ、シンプルなフォルムのなかに深い精神性を表す作品で知られている国際的な現代アーティスト、アニッシュ・カプーア。その個展「アニッシュ・カプーア_奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」が、東京・神宮前のGYRE GALLERYで1月28日まで開催中。レポートはこちら。
ひとつの作品に二重の意味合いを込めた「両義性の作家」とも評されているカプーア。本展では、我々の社会に組み込まれている不可視の監視システムを浮かび上がらせる絵画と立体作品を展示している。
会期:2023年11月23日〜2024年1月28日
会場:GYRE GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE 3F
電話番号:0570-056990
休館日:12月31日、1月1日
料金:無料
100年前に新しさを見る。「100年前の未来:移動するモダニズム 1920-1930」(神奈川県立近代美術館 葉山)
神奈川県立近代美術館 葉山で 「葉山館20周年記念 100年前の未来:移動するモダニズム 1920-1930」が1月28日まで開催されている。
本展では、葉山館の開館20周年を記念して、同館が館名に掲げる 「近代(モダン)」の文化が多様に展開した20世紀の20年代を再考。1917年のロシア革命と1918年終結の第1次世界大戦により、国際的な移動と伝播の時代が到来し、スペイン風邪によるパンデミック後の世界で、芸術家たちは国境を越えて活動した。
会場では、中村彝と鶴田吾郎が描いたエスペランティストの詩人ヴァシリー・エロシェンコの肖像を筆頭に、夭折画家・久米民十郎、土田麦僊や前田寛治、藤田嗣治などの滞欧・滞米作品、石本喜久治らが招来したドイツ新興美術、MAVOや三科など1923年の関東大震災とその復興を挟んで都会に展開した前衛諸派、シュルレアリスムの端緒から魯迅の木版画運動まで、大正から昭和へと移る100年前の世界が夢見た新しさの諸相を紹介している。
会期:2023年10月7日~2024年1月28日
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
住所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
電話:046-875-2800
開館時間:09:30~17:00※入場は閉館の30分前まで
観覧料:一般 1200円 / 20歳未満・学生 1050円 / 65歳以上 600円 / 高校生 100円 / 中学生以下 無料