「全宇宙」を理解するために異能の画家が描いたものとは? 『美術手帖』2025年4月号は「ヒルマ・アフ・クリント」特集
『美術手帖』2025年4月号「ヒルマ・アフ・クリント」特集が3月7日に発売される。東京国立近代美術館で開催中の大規模展覧会にあわせた本特集では、「神殿のための絵画」をはじめとする代表作シリーズのほか、スピリチュアリズム、スウェーデン・フォークアート、ジェンダーと性など多彩な切り口からなる論考、そして造形作家・岡﨑乾二郎と同展キュレーター・三輪建仁による対談などを掲載。また、アーティスト・インタビューではウェンデリン・ ファン・ オルデンボルフを紹介する。

「全宇宙」を理解するために異能の画家が描いたものとは?
スウェーデンに生まれた画家ヒルマ・アフ・クリント(1862〜1944)は、81年にわたる人生のなかで1000点を超える作品を残した。20世紀初頭に流行したスピリチュアリズム、宗教、自然科学、科学技術などの影響が見て取れるその作品群は、きわめて体系的そして計画的に制作され、その膨大で高度な仕事は驚くべきものがある。
しかし、同時代に生きたヴァシリー・カンディンスキーやピート・モンドリアンのような抽象画家が美術史に名声を残すいっぽうで、彼らに先駆けていた彼女の抽象表現やその活動が美術館で紹介され始めたのは、近年になってからだ。


2013年に開催されたストックホルム近代美術館での個展をきっかけにその衝撃は広がり、2018〜19年ニューヨークのグッゲンハイム美術館の回顧展では同館史上最多の約60万人の来場者を記録。日本ではドキュメンタリー映画『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』(ハリナ・ディルシュカ監督、2019)が、作品に先立つかたちで2022年に公開されるとひそかに話題となり、日本で展示の実現が切望されていた。
そしてこのたび、東京国立近代美術館で大規模展覧会が開催されることとなった (3月4日~6月15日)。


同展にあわせた本特集は、「神殿のための絵画」をはじめとする代表作シリーズや水彩画、ノートブックなどの解説、人生の軌跡を追うクロノロジー、スピリチュアリズムやスウェーデン・フォークアート、ジェンダーと性など多彩な切り口からなる論考を掲載。そして、いち早くアフ・クリントの重要性に言及してきた造形作家・岡﨑乾二郎と同展キュレーター・三輪建仁の特別対談から、彼女の思想や作品の核心へとせまるものとなっている。

また、アーティスト・インタビューでは、映像やインスタレーションを通じて、フェミニズムやジェンダー、植民地主義などの支配的言説や権力構造にアプローチしてきたウェンデリン・ ファン・ オルデンボルフを紹介。2度目となる日本での個展を開催中の作家に、作品の背景にある問題意識や制作プロセスについて、キュレーターの原田美緒が話を聞いた。
