2025.3.21

クレカ決済でミュージアムを支援。エポスカードと国立美術館がコラボした「ミュージアム エポスカード」とは?

丸井グループが、国立美術館・国立文化財機構・国立科学博物館の3法人とコラボレーションしたクレジットカード「ミュージアム エポスカード」を3月21日からスタートさせた。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

ミュージアム エポスカード
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初のコラボ

 これまでにないクレジットカードが登場した。丸井グループが、国立美術館、国立文化財機構、国立科学博物館とコラボレーションしたクレジットカード、「ミュージアム エポスカード」を3月21日からスタートさせた。

 近年、美術館・博物館では光熱費の高騰や増え続ける所蔵品の維持管理費用が膨らみ、大きな問題となっている。その一例として、国立科学博物館がコロナ禍による入館料収入の減少や、燃料価格の高騰による光熱費関連の支出の増加により、同館の「標本・資料の収集・保管」が資金的な危機を迎えたことを受け、クラウドファンディングでその切実な現状を訴え、約9億円を集めたことは記憶に新しいだろう。

 国の文化予算が増加することはなく、国立館も「自ら稼ぐ」ことを求められるなか、丸井グループと独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構、独立行政法人国立科学博物館が協働し、誕生したのが「ミュージアム エポスカード」だ。

 独立行政法人国立美術館は、国立西洋美術館国立新美術館東京国立近代美術館京都国立近代美術館国立工芸館国立国際美術館国立映画アーカイブ・国立アートリサーチセンターを設置・運営する法人。また国立文化財機構は東京国立博物館京都国立博物館奈良国立博物館九州国立博物館などを設置・運営する。これら3法人が同じ枠内で協働すること自体が珍しいケースだ。

「ミュージアムエポスカード」デビュー記者発表会登壇者。左から、相田昭一(丸井グループ常務執行役員 CDO)、小松弥生(東京国立近代美術館館長)、三橋真唯(新宿マルイ)、水田功(国立文化財機構理事)、栗原祐司(国立科学博物館理事・副館長)

カード利用がミュージアムの寄付に

 丸井グループの相田昭一・常務執行役員 CDOは、「世の中はメリハリ消費にシフトしている。コスパ経済とは対極の『好き』が駆動する経済に注目し、新たな市場創造を目指している」と語る。そのため、同社では「好き」を応援するカードを88企画展開。その会員数は約101万人に及ぶ。

 ミュージアム エポスカードもこの流れにあるもので、社内コンクールでの提案によって実現した。提案者である新宿マルイの三橋真唯は、同カードを提案した理由として、「私がミュージアムから受け取ったものを少しでもお返しする機会であり、ミュージアムを気軽に支えられる仕組みができれば。カードを通して、好きという気持ちが未来につながることを多くの人に実感してもらいたい」と語っている。

 カードは新規入会1件につき1000円が3法人に寄付。また、カード利用金額に応じた加算ポイントから、利用金額の0.1%がその券面デザインに応じた美術館・博物館に寄付される。また利用者は入会から3ヶ月以内に3万円以上利用すると、法人ごとに異なる特典が得られる。

ミュージアム エポスカード

 カード券面は、3法人が所蔵する作品・文化財から4つずつ選ばれた合計12デザイン。国立美術館からは、クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》やポール・セザンヌ《大きな花束》、アルフォンス・ミュシャ《サラ・ベルナール アメリカン・ツアー》、千種掃雲《南国》の4種、国立文化財機構からは遮光器土偶、埴輪、菱川師宣《見返り美人図》、円山応挙《朝顔狗子図杉戸》の4種、国立科学博物館からはフタバススキリュウ、筑波実験植物園、生き物たちの日本列島、ニホンオオカミの4種がラインナップされている。

ミュージアム エポスカード

 この取り組みについて、東京国立近代美術館の小松弥生館長は、「カードを使うたびに美術館のことを思い出してもらえる。またカードを使うお店の方にも、美術館のことや仕組みを拡散してもらえる」とその意義を強調。「寄付金は鑑賞者がよりよい環境で美術を楽しめるように活用させていただきたい」と語る。

 また国立科学博物館の栗原祐司理事・副館長は、「ミュージアムファンにとってみれば、よくやってくれたという取り組み。これをきっかけに、これまであまり当館に来館していない世代にも足を運んでもらえれば」と期待を寄せる。

 丸井は、このカードの結果次第で、ほかの美術館にも同様の取り組みを広げていきたい考えを示している。

東京国立近代美術館・小松弥生館長
ミュージアム エポスカード