2024.10.31

「artKYOTO 2024」(渉成園)開幕レポート。日本の美意識を次世代に広げるアートフェア

これまで京都の元離宮二条城や京都国立博物館で開催されてきたアートフェア「artKYOTO」が、今年初めて東本願寺の飛地境内にある名勝・渉成園を舞台に開催。その様子をレポートする。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術美術」編集部)

渉成園 臨池亭・滴翠軒外観
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 2019年から京都の元離宮二条城や京都国立博物館で開催されてきたアートフェア「artKYOTO」。今年は東本願寺の飛地境内にある名勝・渉成園を新たな舞台に始まった。会期は10月31日、11月2日〜3日。

 今年のフェアには、古美術や工芸、近代美術、現代美術など幅広いジャンルの作品を取り扱う16のギャラリーや美術商が出展。加えて、京都市とArt Rhizome KYOTOが主催する「逆旅京都(げきりょ きょうと)」の関連企画として京都市特別企画展「超適応:新しい時代の工芸と表現」も展開されている。

展示風景より

 会場となるのは、池泉回遊式の渉成園内に点在する4ヶ所の建物。artKYOTO 2024 実行委員会・ユニバーサルアドネットワーク代表の川上尚志は開幕にあたり、「展示では、日本の伝統的な美意識を感じるものも多く、観覧者の皆様がご自宅で取り入れたくなるような新たなアイディアを得るきっかけにもなるかと思う。日本の美術を次世代、さらには外国人も含めた広い世代に伝えたい」と語っている。

展示風景より

 今年の展示は、「日本の美意識」をテーマとしたブース構成。例えば、滴翠軒では古美術 柳とギャラリー志、KANEGAE<KOGEI Next>がコラボレーションし、緊張感を持つ薄いガラスが空間と柔らかに調和する作品が特徴的な田中里姫などの作家の作品を紹介している。代笠席では、Artglorieux GALLERY OF TOKYOによって紹介されている、西陣の金属箔技術を用いた裕人礫翔の球体の作品が目を惹く。

古美術 柳とギャラリー志、KANEGAEがコラボレーションしたブースの風景
Artglorieux GALLERY OF TOKYOのブースより、裕人礫翔の作品

 閬風亭では、工芸と近現代美術の作品を中心に展示。しぶや黒田陶苑のブースでは、卵殻や螺鈿といった素材を用いた現代工芸作家・時田早苗の作品が見られる。TAV GALLERYとRitsuki Fujisaki Galleryが合同でブースを構え、坂爪康太郎の「BLINKERS」シリーズと町田太一の「OK Warriors」シリーズを紹介している。

展示風景より
TAV GALLERYとRitsuki Fujisaki Galleryの合同ブース

 また蘆菴では、大阪のWa.galleryが、ハタノワタルの和紙、土、顔料などが重ねられた平面作品や藤井桃子によるしめ縄の作品などを展示。いっぽうの京都市特別企画展「超適応:新しい時代の工芸と表現」では、ミシン糸や石膏、珪藻土といった異素材を用いた宮田彩加の刺繍作品をはじめ、桑田卓郎、品川亮、桝本佳子、手塚愛子、森夕香らの作品が集まっている。

Wa.galleryのブースより
Wa.galleryのブースより
京都市特別企画展「超適応:新しい時代の工芸と表現」の展示風景より、右は宮田彩加の刺繍作品
京都市特別企画展「超適応:新しい時代の工芸と表現」

 今年のartKYOTOは、11月1日から国立京都国際会館で始まる「Art Collaboration Kyoto」と初めて同時開催されることとなっている。京都市内の様々な展示プログラムを含めて、今年の秋、京都のアートシーンはより大きな盛り上がりを見せている。国の名勝である渉成園で、京都ならではの伝統美と様々な美術作品が共鳴する独自のアートフェアをぜひ堪能してほしい。

展示風景より
展示風景より
展示風景より
展示風景より