30周年の節目となる今年の光州ビエンナーレには30ヶ国から70組を超えるのアーティストが参加。「関係性の美学」で知られるキュレーターで美術批評家のニコラ・ブリオーがアーティスティック・ディレクターを務め、「パンソリ 21世紀のサウンドスケープ(Pansori a soundscape of the 21st century)」をテーマに本展示が展開されている(「パンソリ[パン(空間や場)・ソリ(音や歌)]」とは、17世紀に韓国南西部でシャーマンの儀式に合わせて生まれた伝統的な口踊芸能のことで、韓国語では「公共の場からの音」のことを指す)。
今回の日本パビリオンは国主体のものではなく、出展・主催者は福岡市。福岡市は2022年には「Fukuoka Art Next(FaN)」事業をスタートさせ、市内に交流拠点となる「Artist Cafe Fukuoka(ACF)」をオープンするなど、アーティスト支援に積極的に取り組む姿勢を打ち出してきた。また福岡アジア美術館をはじめ、これまでアジアとの交流を盛んに行ってきた歴史を持つことから、このパビリオンを福岡市が担うこととなった。同市は、ACFにおける海外展開事業のひとつとして国際美術展に出展することはアーティストの成長支援のみならず、今後の現代アートを通じたアジアとの交流に貢献していく契機となると期待を寄せている。
内海のインスタレーション《The sounds ringing here now will echo sometime, somewhere》が展示されているのは、ホテル「Culture Hotel LAAM」の1階に位置する広大なホワイトキューブ。薄暗く、ひんやりとした空間には、100本を超える異なる長さの金属棒が天井から吊るされ、ゆっくりと動く。その棒同士が当たることでわずかな音が発生し、連鎖を生み出す。