名建築を堪能しよう。東京都庭園美術館で「1933年の室内装飾」が開幕
元朝香宮邸として知られる東京・白金の東京都庭園美術館。この美術館の建築そのものに焦点を当てた展覧会「1933年の室内装飾」が始まった。アール・デコ様式をいまに伝えるこの美術館をじっくりと堪能する機会だ。
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年に一度のペースで本館の建築自体にテーマにした展覧会を行ってきた、白金台にある東京都庭園美術館。「1933年の室内装飾」展でフォーカスするのは、室内を構成する木材や石材、タイル、壁紙といった装飾だ。
東京都庭園美術館は、1933年に竣工した朝香宮邸を転用した美術館として広く知られている。この建築には、朝香宮鳩彦王(1887〜1981)が1920年代のパリ滞在中に魅せられたアール・デコ様式を取り入れており、主要な部屋はフランスの装飾美術家、アンリ・ラパンがデザイン。日本側からは宮内省内匠寮の技師・権藤要吉が設計に携わった。
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宮家の退去後も、吉田茂の外務大臣・首相公邸(1947〜54)、迎賓館(1955〜74)などの役割を経て、83年に美術館として開館した朝香宮邸。1993年には東京都の有形文化財に、2015年には国の重要文化財に指定されている。
当時のアール・デコの様子を現在も正確に留める同館。本展では、その室内を構成する様々な要素に焦点を当て、その素材や技法、あるいは職人たちなどについて解き明かすものとなっている。
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東京都庭園美術館は通常、展示される作品がメインとなるが、本展では建物の壁紙やガラス、タイルなどに目を凝らしてほしい。例えば朝香宮邸の室内には色や模様の異なる20種類以上の石材が使用されており、そのいずれもが国内外の希少な石材。会場ではその見本を一覧で見ることもできる。
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また新館では、アンリ・ラパンが手がけた書斎家具や、朝香宮邸の大客室および大食堂のスライドドアなどを手がけたマックス・アングランによる巨大な油彩画、朝香宮邸の大客室ガラス扉上のタンパン(半円形の飾り部分)をデザインしたレイモン・シュブによるテーブルと肘掛け椅子など、室内を彩る様々な家具や美術品を展示。
加えて、朝香宮邸建築に関わった会社や焦点、個人の伝票(領収書)を綴った23冊からなる資料「朝香宮邸新築関係費書類」などの貴重な資料も展示されている。
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なお、本展では通常非公開の本館3階「ウィンターガーデン」を特別公開。温室として設えられたこの場所は、白と黒の市松模様の床、朝香宮が購入したマルセル・ブロイヤーの椅子など、いま見てもモダンな空間だ。
本展では本館内の写真撮影が可能。色褪せることのないこの名建築を、家具や内装、素材、技術という視点からじっくりと堪能してみてはいかがだろうか。
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