ロッカクアヤコ初の美術館個展が千葉県立美術館で開幕。「魔法の手」が操る色彩に注目
海外を拠点に活動をつづけてきたアーティストのロッカクアヤコ。指で描かれるアイコニックな「女の子」の絵画作品が、アートコレクターからも人気を集めている。その、国内初となる美術館での展覧会「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」が開幕した。会期は10月31日〜2021年1月11日。
海外を拠点に活動をつづけてきたアーティストのロッカクアヤコ。指でアイコニックな「女の子」を描いた絵画作品が、アートコレクターからも人気を集めている。その、初となる美術館での展覧会「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」が千葉県立美術館で開幕した。会期は2021年1月11日まで。
ロッカクは1982年に東京都に生まれ、千葉県で育った。幼い頃から落書きが好きだったというロッカクは、2006年に村上隆が主催する「GEISAI」でスカウト賞を受賞。その頃より日本とアムステルダムを行き来するようになり、10年には渡独しベルリンに移住。さらに19年にはポルトガルに拠点を移しており、日本での作品発表の機会は限られてきた。
今回の展覧会は、千葉県立美術館の第3展示室と第8展示室で開催されている。まず、常設展示スペースを抜けると左手に見えてくるのが、三角形の屋根が特徴的な第8展示室だ。この展示室では膨大な数の作品が並んでおり、すべてが新作。なかでも、奥に据えられた巨大なペイント作品《Magic Hand》(2020)が存在感を放っている。
本作は、展覧会タイトルにもなっている「Magic Hand(魔法の手)」と名づけられた。ロッカクが活動初期から使用している段ボールを組み合わせ、展示室の屋根のかたちと呼応するような山なりのシルエットを創出。迫力あるアクリル絵具の筆致を、ぜひ間近で感じてほしい。また、作品の左右には段ボールに描かれた大量の作品が重ねて展示されており、キャンバスとはまた異なる自由な筆致が目を引く。
展示室中央に展示されているのは、木製の一輪挿しシリーズ「flower vase」だ。作品のベースとなった一輪挿しは、伝統工芸・静岡挽物のブランド「SeeSee」によるもので、ろくろや旋盤を用いてタモ材を成形している。器胎の周囲にカラフルな色彩で描かれた「女の子」は、平面作品とはまた異なる新鮮な構図を見せている。
「宇宙戦争」シリーズ(2020)は、ロッカクのドローイングに基づいてつくられたシェイプド・キャンバスに描かれた作品群で、新たな試みとなる。重力から解放されたように壁面に自由に配置された、雲や飛行機に乗った「女の子」。四角形のキャンバスとはまた異なる、その開放的な表現が見どころだ。
第3展示室では、ロッカクが久々に挑戦したという木版画作品に注目したい。版を重ねて作品がつくられていく過程がわかるように展示されており、同時に制作で使用した版も紹介。ロッカクによる個性的な筆致を木版で再現する技術が可視化され、わかりやすく解説されている。加えて、絵画の制作時に使用された絵具や紙皿も作品とともに展示。ロッカクの作品をつくり出す絵具の質感を間近で感じることができる。
また、千葉駅に直結したショッピングセンター・ペリエ千葉のリニューアル時に制作された、キービジュアルの原画も展示している。今回、千葉県立美術館でロッカクの展示が実現したのも、自身の地元という点も大きいというところもある。ロッカク自身も「友人等に見てもらえるので地元で展示ができるのは嬉しい」と語っており、これまであまり可視化されてこなかったロッカクと地元・千葉とのつながりも見えてくる。
国内ではかつてないほどの規模で開催されるロッカクの個展。「女の子」という同じモチーフを描きながらも、大量の新作からは指と絵具でつくりあげたその色彩の多様性を感じるられる。ダンボール、キャンバス、木製の花瓶、木版など、素材を選ばずにロッカクが走らせた自由な線と色を、会場で感じてみてはいかがだろうか。