2023.10.13

京都髙島屋S.C.の専門店ゾーン「T8」に京都 蔦屋書店が開業。過去最大規模のアートスペースに

京都・四条河原町のシンボルである髙島屋京都店が10月17日、増築された専門店ゾーン「T8」とあわせて「京都髙島屋S.C.」として新たなスタートを切る。その5〜6階の2フロアを占める京都 蔦屋書店に注目だ。

京都 蔦屋書店のエキシビションスペース
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 1831年に京都で創業した髙島屋。1946年に四条に出店として以来、長きに渡り親しまれてきた髙島屋京都店が10月17日、増築された専門店ゾーン「T8」とあわせて「京都髙島屋S.C.」として新たなスタートを切る。

 同館は地下1階から7階に51もの店舗が入居する構成となっており、ラインナップは飲食からファッション、カルチャー、アートまで幅広い。そのなかでもアートファンにとって注目すべきは同館のなかでも大型テナントとなる京都 蔦屋書店だ。同店は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、髙島屋、東神開発が設立したTTC LIFESTYLE株式会社が運営を担う、店舗展開の第1号店となる。

京都 蔦屋書店

 「アートと文化の『伝統と最先端』が共振する場」をコンセプトに掲げる京都 蔦屋書店が位置するのはT8の5階と6階の2フロア。大きな特徴は店舗内各所に設けられたアートスペースだ。

 店舗面積はGINZA SIXにある銀座 蔦屋書店と同規模であるものの、アートスペースはこれまでの蔦屋書店では最大規模を誇る。5階にはエキシビションスペースとBOOK アートウォール、アートショーケースを、6階にはギャラリー、ギャラリーウォール、アートウォール、アートスクエア、アートショーケース、シェアラウンジといった9つもの展示スペースを配置年間60以上の展覧会を開催し、京都で受け継がれてきた素材や技法を使った伝統工芸品から現代アートまでをカバーする。

京都 蔦屋書店

 同店アートスペースでもっとも巨大なエキシビションスペースでは、京都を拠点とする名和晃平がこけら落としを飾る。「KOHEI NAWA | Sandwich「Cell Field」(〜11月7日)は、名和と名和が代表を務める制作スタジオ/プラットフォーム「Sandwich」による展覧会だ。

 油絵具を⽤いた数ヶ月間かけて変化するペインティング「Cell Field」シリーズや、物理シミュレーションによってセルの状態をあらわした版画シリーズなどに加え、UVプリントを用いた平面のほか、テストピースやマテリアルサンプル、各種資料も展示。Sandwichの雰囲気を伝える充実の内容だ。

「KOHEI NAWA | Sandwich「Cell Field」展示風景より
「KOHEI NAWA | Sandwich「Cell Field」展示風景より
「KOHEI NAWA | Sandwich「Cell Field」展示風景より、報道陣を前に公開制作中の名和晃平
「KOHEI NAWA | Sandwich「Cell Field」展示風景より

 また6階で最大の展示スペースとなるギャラリーでは、「MEGAMORI / 森洋史 個展」(〜11月5日)を開催森は様々なモチーフと素材や技法を掛け合わせ、パロディの手法を使った表現で知られる。今回の「MEGAMORI/森洋史 個展」では、森が目指す新たなパロディ、シミュレーショニズムの展開を、平面のみならず、アーケードゲームの筐体を装置として活用した映像インスタレーションなどによって提示する。

「MEGAMORI/森洋史 個展」展示風景より

 また6階アートウォールでは厄災の歴史に着目して作品制作を行っている丹羽優太が、コレラウイルスが蔓延した幕末の伝承などをもとに、虎狼鯰(コロナマズ)という疫病の妖怪をモチーフしながら屏風や掛け軸などに描いた作品を展示(〜11月2日)。このほか、6階ではアートスクエアで桝本佳子(〜11月3日)、ギャラリーウォールではLIAO YUAN YI(〜11月12日)、アートショーケースでは菅原玄奨(〜24年1月8日)、シェアラウンジでは上田良(〜12月18日)がそれぞれ作品を発表する。

アートウォールの丹羽優太「キメラ流行記」より
アートショーケースの菅原玄奨作品
ギャラリーウォールのLIAO YUAN YI「1,770.23」より
シェアラウンジの上田良「MG/SD」より

 髙島屋の村田善郎社長は「文化を発信することは百貨店の役割」と語っており、東神株式会社・田中善哉西日本事業部長も「文化とアートが強いテナントによって百貨店全体の文化的価値を高めていきたい」と、京都 蔦屋書店の役割に期待を寄せる。ヴィンテージを含む膨大なアートブック、アートグッズ、文具とともに、多様なアーティストによる作品と出会うことができる京都 蔦屋書店。コマーシャルギャラリーが比較的少ない京都において、同店は作家にとって重要な発表の場のひとつとなることも期待されるだろう。