「皇居三の丸尚蔵館」がリニューアルオープン。開館記念展では皇室より受け継がれた美と文化のかたちに注目
開館30周年を迎える三の丸尚蔵館が「皇居三の丸尚蔵館」と名称を新たにリニューアルオープン。これに際し、開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」と特別展示「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代(みよ)を迎えて─天皇皇后両陛下が歩まれた30年」が同館で開幕した。
11月3日、開館30周年を迎える三の丸尚蔵館が「皇居三の丸尚蔵館」と名称を新たにリニューアルオープンした。館長に就任したのは、東京国立博物館文化財部長や同館副館長、九州国立博物館館長を歴任し、現在は独立行政法人国立文化財機構の理事長も務める島谷弘幸。
三の丸尚蔵館は、1989年(平成元年)に上皇陛下と香淳皇后が、宮内庁が管理してきた美術工芸品(以前は「御物」と呼称)を国に寄贈されたことを契機に、1993年(平成5年)に保存・研究や一般公開を目的として開館された施設。今回のリニューアルは、同館の管理・運営が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構に移管されたことによるものだ。旧館を取り壊し新たに建設された新館は、地下1階・地上3階建て。地上1階にはふたつの展示室が設けられ、2・3階には収蔵庫が設置された。
これに際し、開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」も同館にて開幕した。本展は、同館を代表する多種多様な収蔵品を、第1期「三の丸尚蔵館の国宝」(11月3日〜12月24日)、第2期「近代皇室を彩る技と美」(2024年1月4日〜3月3日)、第3期「近世の御所を飾った品々」(2024年3月12日〜5月12日)、第4期「三の丸尚蔵館の名品」(2024年5月21日〜6月23日)に分けて紹介するものだ。
第1期では、高階隆兼《春日権現験記絵》2巻(20巻のうち)、《蒙古襲来絵詞》後巻(2巻のうち)、伊藤若冲《動植綵絵》8幅(30幅のうち)、小野道風《屛風土代》1巻といった、令和3年に国宝指定された宮内庁の美術工芸品5件のうち、4件が公開されている(もう1件の狩野永徳《唐獅子図屏風》は第4期に公開予定)。
さらに隣の展示室では、特別展示として「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代(みよ)を迎えて─天皇皇后両陛下が歩まれた30年」(11月3日〜12月24日)も同時開催。公式の場で着用された装束やプライベートでの研究活動など、天皇皇后両陛下による30年の軌跡を振り返ることができる。あわせて鑑賞することで、古より受け継がれてきた皇室の文化的な取り組みを見ることができるだろう。
これらの展示はオンラインによる「事前予約制」をもって一般公開とされる。館長の島谷は、その意図について「東博や九博では大規模な展覧会を経験したが、来場者数が多ければ良いという考えは必ずしも良いものではない。鑑賞者により適切な環境で作品を見ていただくことを心がけ、あえて事前予約制を設けての公開であることをご理解いただきたい」と述べている。
なお、施設のさらなる拡充のため現在も増築が進められており、2026年(令和8年)のフルオープンが予定されている。