五感で楽しむ蜷川実花の極彩色の世界。「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」が見せる「桃源郷」
虎ノ門のTOKYO NODE GALLERYで「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」がスタートした。蜷川実花、宮田裕章、Enzoらで結成されたクリエイティブチーム「EiM(エイム)」による没入型インスタレーションが展開されている。
東京・虎ノ門のTOKYO NODE GALLERYで「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」がスタートした。会期は2024年2月25日まで。
写真家・映画監督として知られる蜷川実花にとって史上最大となる本展では、宮田裕章(データサイエンティスト)、Enzo(セットデザイナー)らとともに結成したクリエイティブチーム「EiM(エイム)」による没入型のインスタレーションをメインに展開。「桃源郷」をテーマに、匂いや触感、音楽、食など五感での体験を重視した設計となっている。
今回の展覧会について蜷川は次のように語る。「日常のなかに隠れている美しい物事をどのように表現するかを突き詰め、世界の見方を変えるだけでその美しさに気づくことができる展覧会。また、全体にはストーリー性があり、映画監督を務めたときの知見を全面に生かした。アートへの入り口を広く制作することを心がけているため、気軽に遊びにきてほしい」。
また、EiMのリーダーを務めた宮田は会場体験についての意図をこう語る。「日常の延長として誰しもが出会える心象風景をメインとし、TOKYO NODEだからこそできる体験を届けられたらと思う。人が認識できるのは100万色あると言われているいっぽう、多様性を理由に世界から色が消えている現状もある。その多様性と色の可能性を改めて感じ、未来に向かってもらう機会としたい」。
本展は会場を進むにつれて、緩やかなストーリーに沿った、蜷川特有の極彩色の空間に包まれていくことができる。例えば《Unchained in Chains》では、蜷川の代表的なモチーフでもある金魚がテーマだ。見世物としての金魚を人間社会に重ね、決められたシステムのなかでどのようにつながり、生きていくのかを問いかけるものとなっている。
TOKYO NODEの特徴でもあるドーム型空間では、その形状を生かしたダイナミックな映像を鑑賞することができる。金魚や都市の光、空など次々と変わりゆく景色はまるで夢のなかのようだ。クッションに身を預けることで、よりいっそう没入感ある体験を味わうことができるだろう。
会場でも一際華やかなのが、この《Intersecting Future 蝶の舞う景色》エリアだ。360度が花に囲まれたこの空間の随所にある小部屋には、蜷川によって撮影された庭園や公園の花壇に咲く花の写真が展示されている。人と自然が調和する環境に蝶は現れるというコンセプトで展開されるこの空間は、まさに「桃源郷」であり、あるべき未来のひとつとして提案されるものだ。
中国・宋の思想家である荘子の説話として知られる『胡蝶の夢』。それに由来する《胡蝶のめぐる季節 Seasons: Flight with Butterfly》では、季節折々の風景映像の鑑賞体験ができる。加工を施されていないこれらの映像はもちろん現実のものであるのだが、膜のようなスクリーンに投影され、レイヤーのように重なる幻想的な空間を歩く体験は夢のなかにいるようでもある。
会場にはほかにもインスタレーション作品が用意されているほか、グッズや飲食店とのコラボメニューも登場予定だ。それらもあわせて、蜷川による華やかなインスタレーションをさらに楽しむことができるだろう。