2024.11.2

「GOOD DESIGN EXHIBITION 2024」(東京ミッドタウン)開幕レポート。社会課題に立ち向かった勇気あるデザインにも注目

10月16日に「2024年度グッドデザイン賞」の受賞結果が発表された。その受賞展が六本木の東京ミッドタウン内で11月5日まで開催されている。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

東京ミッドタウン地下1階 ホール展示風景より
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 10月16日、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「グッドデザイン賞」の2024年度の受賞結果が発表。「勇気と有機のあるデザイン」をテーマに受賞した1579件を一堂に紹介する展覧会「GOOD DESIGN EXHIBITION 2024」が六本木の東京ミッドタウン内各所でスタートした。

 グッドデザイン賞とは、1957年に設立された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組み。今年度は審査委員長に齋藤精一、審査副委員長に倉本仁、永山祐子、ほか101名の審査員を迎え、各賞の選出を行っている。選出された1579件のうち今年度は20件が金賞を受賞。現在は、審査委員と金賞受賞者によってこの20件から大賞を決めるオンライン投票が行われており、11月5日の受賞祝賀会にて発表される予定となっている。

 会場は、東京ミッドタウン地下1階ホール、アクアリウム、4階カンファレンスルーム、5階デザインハブ、と受賞ジャンルごとに各所で展示。まずはメイン会場となっているホールから見ていこう。

東京ミッドタウン地下1階 ホール展示風景より

 いままでの受賞結果とも通ずる部分はあるが、今回は現状の社会課題や1月1日に発生した能登半島地震を受けて、福祉関連や防災関連の受賞が増加したようだ。また、非常時のみならず常時も兼用で使用できる仕立てのプロダクトも数多く見られたと担当者は語っている。

東京ミッドタウン地下1階 ホールA展示風景より、金賞を受賞した株式会社ADDIXによる教科用図書「くらしに役立つ」シリーズ。知的障害特別支援学校高等部生徒向けに刊行された、将来の自立した生活を営むための知識と教養を楽しみながら学べるものとなっている
東京ミッドタウン地下1階 ホールA展示風景より。地域コミュニティの創出を促すようなアイデアも
東京ミッドタウン地下1階 ホールA展示風景より、金賞を受賞した株式会社ジャクエツによる遊具研究プロジェクト「RESILIENCE PLAYGROUND」。「障害の有無に関わらず誰もが遊ぶことができる遊具」の開発を医療と遊具の分野を越えて実現したもので、社内理解を進めるところから取り組んだ勇気あるプロジェクトとしても評価されたという
東京ミッドタウン地下1階 ホールB展示風景より

 ほかにも同会場では、金賞20件から来場者による一般投票を経て決定される「みんなの選んだグッドデザイン」が実施されているほか、大学や専門学校などに在学中の学⽣や卒業・修了直後の新卒社会人によるデザインを対象とした「グッドデザイン・ニューホープ賞」も発表されている。

東京ミッドタウン地下1階 ホール展示風景より
東京ミッドタウン地下1階 ホール展示風景より

 東京ミッドタウン地下1階 アトリウムには、長年にわたり機能と価値が広く認められ、将来においてもそれらを発揮し続けることが望まれる「ロングライフデザイン賞」が展示。さらに、手前のポップストアでは、歴代から今年度までの受賞作も実際に購入することができるようになっている。

東京ミッドタウン地下1階 アトリウム展示風景より

 ユニークなアイデアが実現されたプロダクトももちろん興味深いのだが、現在の社会課題に真摯に向きあいながらも、それを解決に導く新しいアイデアと生活者らがどのように接点を持つことができるのかといった体験設計、そして場所や利用者を限定せず、それを雛形として誰もが生活のなかに取り入れていくことができるアイデアというものがより評価されていくのではないか。本展の取材を経てそのように感じている。そして、すべての受賞作を総覧することによって、現代社会の様相を俯瞰して見ることができるのもグッドデザイン受賞展のおもしろいところと言えるだろう。

東京ミッドタウン5階 デザインハブ展示風景より
東京ミッドタウン4階 カンファレンスルーム展示風景より