「鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」(東京都写真美術館)開幕レポート。何でもない場所に向かってシャッターを切り続ける
東京都写真美術館で、同館の総合開館30周年を記念した展覧会の第1弾として「鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」がスタートした。会期は6月8日まで。

東京・恵比寿の東京都写真美術館で、同館の総合開館30周年を記念した展覧会の第1弾として「鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」がスタートした。会期は6月8日まで。担当学芸員は遠藤みゆき(東京都写真美術館 学芸員)。
鷹野隆大(1963〜)は、写真集『IN MY ROOM』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在も国内外で活躍を続ける写真家・アーティスト。その写真集に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、「毎日写真」や「カスババ」といった日常のスナップショットを手がけ、さらに東日本大震災以降は、「影」を被写体とした写真の根源にせまるテーマにも取り組んでいる。
今回の展覧会タイトルにもある「カスババ」とは、「カスのような場所」の複数形を指した鷹野による造語だ。「若い頃は、東京の都市景観が乱雑で嫌いだった」と語る鷹野がそれらを撮影し続けたのはなぜか。それは、鷹野が『IN MY ROOM』などでも掘り下げていた「曖昧さ」「わからなさ」にも通ずる視点があるように感じられた。「自分の身近な場所とはその(乱雑な東京の都市景観の)なかにあり、本来あるものをないもののように扱うことが暴力的な行為である気がした。無理矢理シャッターを切り続けることで、そこにおもしろさを見出すようになっていった」。
2021年には大阪の国立国際美術館で大規模な回顧展が開かれていた鷹野。遠藤学芸員は、すでに展示された作品を再編集することで、いかに鷹野作品との新たな出会いを創出することができるかが同展を開催するうえでのテーマであったと語っている。
