キーファーの大規模展「Sag mir wo die Blumen sind」が2つの美術館で開幕
今年80歳を迎えたアンゼルム・キーファーの展覧会「Anselm Kiefer - Sag mir wo die Blumen sind」が、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館とアムステルダム市立美術館(ステデライク美術館)で開幕。新作を含む25作品が並ぶ本展を現地レポートでお届けする。

Sag mir wo die Blumen sind/Where have all the flowers gone (花はどこへ行ったの)
展覧会「Sag mir wo die Blumen sind」は、ファン・ゴッホ美術館とアムステルダム市立美術館の2館にまたがって開催されている。ファン・ゴッホ美術館では、アンゼルム・キーファーがフィンセント・ファン・ゴッホに受けた影響を探り、アムステルダム市立美術館では、新作を中心に、生命の循環や戦争の遺産といったキーファーの主要なテーマを追うものだ。
1945年、第二次世界大戦の終戦直前に生まれたキーファーは、荒廃した戦後ドイツで育った。展覧会タイトルであり、新作タイトルでもある「Sag mir wo die Blumen sind」は、1955年にアメリカのフォーク歌手ピート・シーガーが発表した反戦歌「Where Have All the Flowers Gone?」に由来する。1962年にはマレーネ・ディートリヒがドイツ語でカバーし、ドイツをはじめ世界各国で広く知られるようになった。
《Sag mir wo die Blumen sind》(2024)は、アムステルダム市立美術館の中央階段を上った2階ホールのために制作された5枚のパネルからなる24メートルのインスタレーション。

(c) anselm kiefer
Photo (c) atelier anselm kiefer
作品は重ねられたキャンバス上に金箔、加工金属、ドライフラワー、布、鉄、木炭などの多様な素材を組み合わせて表現され、枯れたバラは床にも広がる。とくに強烈な印象を与えるのは、分厚く塗り重ねられた絵の具と粘土の層で覆われ、キャンバスから突き出すように掛けられた制服だ。制服を前にすると、1969年にキーファーが父の軍服を着てナチスの敬礼を模した写真が想起される。
しかし、キーファーは展示と新作のタイトル「Sag mir wo die Blumen sind」を通じて、戦争というテーマに直接的に言及するのではなく、より広い視点から問いを投げかける。

(C) Anselm Kiefer
Photo by Atelier Anselm Kiefer