幕末明治の鬼才・河鍋暁斎の全貌が明らかに。没後130年を記念する展覧会が兵庫県立美術館で開催へ
幕末から明治にかけて活躍し、幅広い画業で知られる河鍋暁斎。その全貌を明らかにする展覧会「没後130年 河鍋暁斎」が、兵庫県立美術館で開催される。同展では掛け軸や絵巻だけでなく、暁斎が手がけた挿絵本や工芸品のほか、制作プロセスを示す下絵類も紹介。会期は4月6日〜29日(前期)、30日〜5月19日(後期)。
幕末から明治初期にかけて活躍した河鍋暁斎(1831〜89)。歌川国芳に浮世絵を学んだ後、狩野派に入門し伝統的な官学派の絵画を学び、無数の作品を発表した。そんな暁斎の画業を「ネットワーク」というキーワードのもとに考察する展覧会が、兵庫県立美術館で開催される。
同展では掛軸や屏風、絵馬などのほか、作品が持つ時代背景と人々の関わりに着目。例えば外国人との交流を背景に持つ作品、神社や寺へ奉納された作品のほか、明治憲法発布を記念して制作された作品などを展示し、多くの画題をさまざまな表現技法で描いた暁斎の画業を紹介する。
また、河鍋暁斎記念美術館が2200点あまりを所蔵する「下絵類」の一部も登場。「下絵類」とは、下絵(実際に完成作品が存在するもの)、版下絵(錦絵制作のための作品)、画稿(構想中、部分的なもの)、写生(実際に見て描いたもの)などを示すもの。制作プロセスの最初期の段階から、暁斎の圧倒的な作品世界を見ることができる。
さらに同展では、歌川国芳のもとで諷刺や批評的精神を培った暁斎の錦絵に加え、挿絵本や工芸品のデザインなども展示。暁斎の描き出すイメージがどのように幕末明治期の人々に浸透していったのかを検証する。
また、その多彩な画業の傍らで、生々しい地獄や幽霊像も追求してきた暁斎の「生と死」にまつわる作品も紹介。晩年、観音像を日課として描きつづけた《日課観音》は、幕末明治の人々の心情の変化と重なるような奥深さを持つ。
そのほかにも、暁斎と親交の深かったエルヴィン・フォン・ベルツの旧蔵品で、現在はドイツのビーティヒハイム・ビシンゲン市立博物館所蔵の暁斎作品も特集展示。暁斎を「日本最大の画家」と称えたベルツが収集した、暁斎の代表的な作品を楽しむことができる。
なお、東京・六本木のサントリー美術館では「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」が2月6日〜3月31日に開催。こちらもあわせてチェックしたい。