2024.12.20

今週末に見たい展覧会ベスト12。ハニワと土偶、阪神・淡路大震災30年企画展、坂本龍一に歌川国芳まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ハニワと土偶の近代」(東京国立近代美術館)展示風景より
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もうすぐ閉幕

「ハニワと土偶の近代」(東京国立近代美術館

展示風景より、都路華香《埴輪》(1916頃)京都国立近代美術館

 ハニワや土偶が各時代でいかにとらえられ、美術を中心に創作のモチーフとなってきたのか、その系譜をたどる展覧会「ハニワと土偶の近代」が、東京・竹橋の東京国立近代美術館で12月22日まで開催されている。会場のレポートはこちら

 本展では、ハニワや土偶の実物がずらりと並ぶわけではない。ハニワや土偶が各時代においてどのようにとらえられ、どんな作品のモチーフとなってきたのか。はたまた、ハニワや土偶のブームがいかにして起こったか。こうした美術としての受容を掘り起こし読み解くものとなっている。

会期:2024年10月1日〜12月22日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料

「フェミニズムと映像表現」(東京国立近代美術館

遠藤麻衣×百瀬文 Love Condition 2020

 東京国立近代美術館のギャラリー4で、同館コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」が開催されている。会期は12月22日まで。会場のレポートはこちら

 本展ではダラ・バーンバウム、出光真子ら8組を取り上げ、1970年代から現代までのフェミニズムに関わる映像表現を紹介。小規模ながら多角的で、複数のキーワードに該当する作品もあれば、作品同士の響きあいも楽しめる。企画は、同館の小林紗由里、松田貴子、森卓也、横山由季子。主担当の小林に取材した企画経緯などとあわせて展示作品を紹介している。

会期:2024年9月3日〜12月22日
会場:東京国立近代美術館ギャラリー4
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00)※入館は閉館の30分前まで 
料金:一般 500円 / 大学生 250円 / 高校生以下および18歳未満 無料

「公家の書-古筆・絵巻・古文書」「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」(皇居三の丸尚蔵館)

「公家の書-古筆・絵巻・古文書」展示風景より、国宝《金沢本万葉集》(12世紀)

 東京・丸の内の皇居三の丸尚蔵館で「公家の書-古筆・絵巻・古文書」と「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」が、12月22日まで開催されている。会場レポートはこちら

 公家の社会で必要とされた教養のひとつが和漢の典籍や詠歌、そして書だった。「公家の書-古筆・絵巻・古文書」は平安時代から江戸時代まで、禁裏(皇室)を支えた続けた公家たちが書き写した古筆の名品とともに、朝廷の政まつりごとの実務として作成した古文書や書状等などを紹介するもので、公家の書のもつ多彩な面が味わえる。

 いっぽう、「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」では、明治から昭和にかけて行われた新古美術品展覧会、帝国美術院展覧会、東京大正博覧会、内国勧業博覧会など11の博覧会や展覧会で、宮内庁御買上となった作品が並ぶ。

会期:2024年10月29日~12月22日
会場:皇居三の丸尚蔵館
住所:東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:00(11月29日をのぞく金土〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下無料

今週開幕

阪神・淡路大震災30年 企画展「1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち」(兵庫県立美術館

束芋 dolefullhouse 2007 兵庫県立美術館蔵 (参考) ©Tabaimo/Courtesy of Gallery Koyanagi

 兵庫県立美術館で、阪神・淡路大震災から30年を迎えるに際し、阪神・淡路大震災30年 企画展「1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち」が12月21日より開催される。

 1995年1月17日の震災では、兵庫県立美術館の前身である兵庫県立近代美術館(1970〜2001)も建物や収蔵品に大きな被害を受けた。兵庫県立近代美術館を引き継ぎ、2002年に震災復興の文化的シンボルとして開館した兵庫県立美術館では、これまでも震災後の節目の年に関連展示を開催してきたが、今回が初めての特別展会場での自主企画展となる。

 1995年から2025年までの30年のあいだに、世界は多くの自然災害や紛争に見舞われてきた。本展は、そんな明るい未来を想像することがますます困難な状況となっている時代に求められる希望とは、という問いを考え続けるための、ひとつの場になることを目指している。展覧会のタイトルには、いまそれぞれに生きる「わたしたち」こそ「希望」の出発点にほかならない、という思いが込めている。出展作家は、束芋、米田知子、やなぎみわ、國府理、田村友一郎、森山未來、梅田哲也。森山と梅田は、コラボレーションによる制作と発表する。

会期:2024年12月21日~2025年3月9日
会場:兵庫県立美術館
住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
電話:078-262-1011
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月

「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」(東京都現代美術館

坂本龍一 Photo by Neo Sora ©2017 Kab Inc.

 東京・清澄白河の東京都現代美術館で、坂本龍一(1952〜2023)の大型インスタレーション作品を包括的に紹介する展覧会「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」が12月21日に開幕する。

 多彩な表現活動を通して、時代の先端を切り拓いてきた坂本。2000年代以降は、様々なアーティストとの協働を通して、音を展示空間に立体的に設置する試みを積極的に思考/実践した。今回の展覧会では、生前坂本が本展のために構想した新作と、これまでの代表作を美術館屋内外の空間に構成・展開し、クロニクル展示を加えて、坂本の先駆的・実験的な創作活動の軌跡をたどるという。

会期:2024年12月21日~2025年3月30日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:未定
休館日:月、12月28日〜1月1日、1月14日、2月25日(1月13日、2月24日は開館)
料金:一般 2400円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 1700円 / 中高生 960円 / 小学生以下 無料

「sakamotocommon GINZA」(Ginza Sony Park)

展示風景より、Opera Piano

 坂本龍一が遺したものを共有化し、未来のクリエイターのために利活用することを目指す「sakamotocommon(サカモトコモン)」が、Ginza Sony Parkと共同で初号プログラム「sakamotocommon GINZA」を12月16日からスタートさせた。会期は12月25日まで。会場レポートはこちら

 sakamotocommonは、「坂本龍一が遺したものを利活用し、新しいクリエイションを生み出すこと」「坂本龍一が遺したものとクリエイターの接点をつくること」、そして「坂本龍一が遺したものと人々が触れることのできる場をつくること」の3つを趣旨としており、本展はその趣旨を体現する展覧会となっている。

会期:2024年12月16日〜 25日
会場:Ginza Sony Park
住所:東京都中央区銀座5-3-1
開館時間:11:00~19:00
入場料:クラウドファンディング(https://ubgoe.com/projects/798)参加者のみ入場可能

「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」(大阪中之島美術館

歌川国芳 相馬の古内裏 1845〜46(弘化2〜3年)頃 個人蔵

 大阪で13年ぶりとなる大規模な歌川国芳の個展「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」が大阪中之島美術館で開幕する。会期は12月21日〜2025年2月24日。

 歌川国芳(1797〜1861)は、江戸末期の浮世絵師。無尽の想像力と圧倒的な画力によって、斬新な作品を数多く世に生み出した。その奇想天外なアイデア、現代にも通ずるデザイン力やユーモアは、浮世絵という枠や時代を超えて多くの人々を魅了し、国内外でいまなお高い人気を誇る。本展は、「国芳展の決定版」として、武者絵や戯画をはじめとした幅広い画題の浮世絵版画や貴重な肉筆画など約400点が展示される。

会期:2024年12月21日〜2025年2月24日(前期:12月21日~2025年1月19日/後期:1月21日~2月24日)
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
開場時間:10:00~17:00 ※入場は16:30まで
休館日:月(ただし、1月13日、2月24は開館)12月31日、1月1日
料金:一般 1800円 / 高大生 1500円 / 小中生 500円

「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」(大阪中之島美術館

チューリッヒにて、吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン 1965頃 Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation

 大阪中之島美術館で、スイスを代表するグラフィックデザイナー、タイポグラファーであるヨゼフ・ミューラー=ブロックマン(1914〜1996)と、そのパートナーであり日本人芸術家の吉川静子(1934〜2019)の2人の活動と作品を紹介する展覧会「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」が開幕する。会期は12月21日〜2025年3月2日。

 ​​​​​​​ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンは、紙面における文字組みと構成の方法論についてまとめ命名した「グリッドシステム」で知られている。吉川静子は、ドイツのウルム造形大学に留学しデザインを学んだのち、ミューラー=ブロックマンの事務所に所属。のちに結婚し、ともにチューリッヒを拠点に芸術活動を行った。

 本展は、吉川没後初となる二人展であり、スイスと日本の国交樹立160周年(2024)を記念した大回顧展。吉川の芸術性、ミューラー=ブロックマンの構成的デザインを表現した作品を展示し、分野を超えたふたりの活動の軌跡を堪能できるものが目指される。

会期:2024年12月21日〜2025年3月2日 ※会期中一部作品の展示替えあり
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
電話番号:06-4301-7285(なにわコール、8:00〜21:00) 
開場時間:10:00〜17:00 ※入場は16:30まで
休館日:月(ただし、1月13日、2月24日は開館)、12月31日、1月1日、1月14日、2月25日
料金:一般 1700円 / 高大生 1100円

「雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」(ワタリウム美術館

雨宮庸介 Apple 2023 林檎材に油絵具 林檎実物大(8cm×11.8cm×6.2cm) 作家蔵

 アーティスト・雨宮庸介の東京の美術館で初個展「雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」が東京・外苑前のワタリウム美術館で12月21日から開催される。

 雨宮庸介は1975年茨城県生まれ、山梨県在住。Sandberg Institute(アムステルダム)Fine Art Course修士課程を主席にて修了。ドローイング、彫刻、パフォーマンスなど多岐にわたるメディウムによって作品を制作してきた。とくに2014-3314年にかけて行われているプロジェクト「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」はライフワークであり、リンゴや石や人間などのありふれたモチーフを扱いながら、超絶技巧や独自の話法などにより、いつのまにか違う位相に身をふれてしまう感覚や、認識のアクセルとブレーキを同時に踏み込むような体験を提供している。

 本展はワタリウム美術館を舞台に制作された最新VR作品を中心としつつ、「溶けたりんごの彫刻」や「石巻13分」の記録映像、「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」のペーパーなど、その代表作を一堂に体験できる展覧会となる。

会期:2024年12月21日〜2025年3月30日
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話番号:03-3402-3001 
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月(1月13日、2月24日は開館)、12月30日〜2025年1月3日
料金:一般 1500円 / 大学生・高校生 1300円 / 小・中学生 500円

「生誕120年 人間国宝 黒田辰秋―木と漆と螺鈿の旅―」(京都国立近代美術館

展示風景より

 京都国立近代美術館で、生誕120年を迎える人間国宝・黒田辰秋(1904~1982)の回顧展「生誕120年 人間国宝 黒田辰秋―木と漆と螺鈿の旅―」が開催されている。会場レポートはこちら

 黒田は出身地である京都を拠点に活動した日本を代表する木漆工芸家であり、1970年には木工芸の分野において初めてとなる重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された人物だ。木と漆を用いた実用性と美の両立を追求し、図案・素地づくりから装飾までを一貫して自身で手がけることで独自の創作世界を切り開いた。会場では、黒田の生涯と作品を「第1部 黒田辰秋の軌跡『黒田辰秋 人と作品』より」「第2部 用と美の邂逅」の2部構成、233点によって紹介している。

会期:2024年12月17日~2025年3月2日
会場:京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00)
休館日:月(ただし、1月13日、2月24日は開館)、1月14日、2月25日、年末年始(12月29日~1月3日)
料金:一般 1200円 / 大学生 500円

「日本の巨大ロボット群像 -巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現-」(サンシャインシティ)

福岡市美術館での展示風景より 撮影=編集部

 2023年の福岡市美術館を皮切りに各地へ巡回してきた展覧会「日本の巨大ロボット群像 -巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現-」が、東京の池袋・サンシャインシティに巡回。会期は12月21日~2025年1月13日。

 本展は、日本で初めての巨大ロボットアニメである『鉄人28号』放映から60年を記念に開催されており、日本のアニメーションにおける巨大ロボットのデザインとその映像表現の歴史をたどることで、「巨大ロボットとは何か」を問うものとなっている。 

会期:2024年12月21日~2025年1月13日
会場:池袋・サンシャインシティ 展示ホールB(文化会館ビル4F)
住所:東京都豊島区東池袋3-1
電話:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00
観覧料:一般 2200円 / 中高生 1600円 / 小学生 800円

「動き出す浮世絵展 TOKYO」(寺田倉庫 G1ビル)

 葛飾北斎や歌川広重といった浮世絵師たちの名作300点以上をもとに、3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングなどの最新技術で再現された空間を体感型のデジタルアートミュージアムが12月21日にオープン。

 これまでに名古屋、ミラノ、鹿児島と国内外で開催された本展。会場では「藍」「眺」「彩」「麗」「遊」「瀧」「錦」「豪」「雅」の9つの立体映像空間で浮世絵の世界に没入できるだろう。

会期:2024年12月21日~2025年3月31日
会場:寺田倉庫 G1ビル
住所:東京都品川区東品川2-6-4
開館時間:9:30~20:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:12月31日、2025年1月1日
観覧料:一般 2700円 / シニア(65歳以上)2500円 / 学生 1900円 / 4歳以上中学生以下 1200円