2025.2.14

今週末に見たい展覧会ベスト12。青木野枝/三嶋りつ惠、ゴミうんち、恵比寿映像祭にビアズリーまで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」(東京都庭園美術館)、本館3階ウインターガーデンでの展示風景より
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もうすぐ閉幕

「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」(東京都庭園美術館

展示風景より、三嶋りつ惠《光の海》(2024、部分)

 鉄とガラスという異なる素材を扱う現代アーティスト、青木野枝三嶋りつ惠。ふたりが東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)を舞台に、それぞれの視点から光と空間の新たな可能性を探る展覧会「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」が2月16日まで。会場レポートはこちら

 青木は、本展で鉄を溶断する際に現れる「透明な光」にインスパイアされた作品を展示。重厚でありながら有機的なフォルムを持つ作品群は、旧朝香宮邸の装飾と対話しながら空間を豊かにしている。

 いっぽうの三嶋は、旧朝香宮邸のアール・デコ様式に着目した作品を発表。例えば、本館大広間で展示されている《光の海》(2024)は、天井に設置された40個のライトに呼応するかたちで並べられた40点の透明なガラスの作品で、光の揺らぎや厚みを繊細に表現し、空間全体に広がるエネルギーを生み出した。

会期:2024年11月30日~2025年2月16日
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
住所:東京都港区白金台5-21-9
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1400円 / 大学生(専修・各種専門学校含む) 1120円 / 中・高校生 700円 / 65歳以上 700円

恵比寿映像祭2025「Docs ―これはイメージです―」(東京都写真美術館ほか)

展示風景より、カウィータ・ヴァタナジャンクール《A Symphony Dyed Blue》(2021)

 東京・恵比寿の東京都写真美術館をはじめとする周辺施設で「恵比寿映像祭2025」が2月16日まで開催されている。会場レポートはこちら

 17回目の開催となる今年の恵比寿映像祭には、11の国と地域から39名のアーティストらが参加。「Docs ―これはイメージです―」をテーマに掲げ、メディアの変容に着目し、幅広い作品群をイメージと言葉からひも解くことで、「ドキュメント/ドキュメンタリー」を再考することを試みるものとなっている。

 映像祭のメイン展示は、おもに2階・1階・地下1階で展開。現代アーティストらによる新作や近作が並ぶいっぽうで、同館のコレクション作品もあわせてキュレーションされているのがこの映像祭の醍醐味となっている。

会期:2025年1月31日~2月16日 ※コミッション・プロジェクト(3F展示室)は3月23日まで
会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所ほか
開館時間:10:00~20:00(1月31日~2月15日、最終日は~18:00) 
料金:入場無料 ※一部のプログラム(上映など)は有料

「ゴミうんち展」(21_21 DESIGN SIGHT

展示風景より、「糞驚異の部屋」

 東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催中の企画展「ゴミうんち展」は、2025年2月16日まで。展覧会ディレクターは佐藤卓(グラフィックデザイナー、21_21 DESIGN SIGHT ディレクター・館長)、竹村眞一(京都芸術大学教授、NPO法人ELP代表、「触れる地球」SPHERE開発者)。会場レポートはこちら

 自然界の循環において「ゴミ」や「うんち」は必ず含まれるものだが、それらはブラックボックスで隠され、我々生活者が目の当たりにする機会は今日少ないだろう。

 本展は、そういった社会問題にもなってしまっているこのふたつの存在にフォーカス。身の回りから宇宙までの様々な「ゴミうんち」を取り上げじっくり観察することで、社会問題のみにとどまらない多様な面を提示するものとなっている。

会期:2024年9月27日〜2025年2月16日
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
電話番号:03-3475-2121 
開館時間:10:00〜19:00(六本木アートナイト特別開館時間:9月27日、28日は〜22:00) 
※入場は閉館の30分前まで
料金:一般 1400円 / 大学生 800円 / 高校生 500円 / 中学生以下無料

今週開幕

「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」(森美術館

展示風景より、ルー・ヤン《独生独死―流動》

 東京・六本木の森美術館で、人類とテクノロジーの関係を考察しながら、未来の歩き方を想像する「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展が開幕した。会期は2025年6月8日まで。会場レポートはこちら

 本展覧会の開催意図について、同館館長の片岡真実は次のように説明している。「生成AIは頻繁に報道されているように、広く社会を変革するものとして注目を集めている。そしてビデオゲームは世界の全人口の40パーセントがプレイをしているという統計もある。こうした状況が現代美術にどのような影響をもたらしているのかを考える展覧会としたい」。

 参加作家はビープル、ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレル、ディムート、藤倉麻子、シュウ・ジャウェイ(許家維)、キム・アヨン、ルー・ヤン(陸揚)、佐藤瞭太郎、ジャコルビー・サッターホワイト、ヤコブ・クスク・ステンセン、アドリアン・ビシャル・ロハス、アニカ・イの12名。大きく分けて3つのセクションで構成されており、美術が技術と人間の狭間のどこにあるのかを問いかける。

会期:2025年2月13日〜6月8日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜22:00(火〜17:00、ただし4月29日、5月6日は〜22:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:[平日]一般 2000円 / 学生(高校・大学生) 1400円 / 子供(中学生以下) 無料 / シニア(65歳以上) 1700円 [土日祝]一般 2200円 / 学生(高校・大学生) 1500円 / 子供(中学生以下) 無料 / シニア(65歳以上) 1900円

「異端の奇才―ビアズリー」(三菱一号館美術館

オーブリー・ビアズリー クライマックス 1893(原画) ライン・ブロック ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

 昨年11月にリニューアルオープンした東京・丸の内の三菱一号館美術館が、画家オーブリー・ビアズリー(1872〜1898)の回顧展「異端の奇才―ビアズリー」を開催する。会期は2月15日~5月11日。

 ビアズリーは25歳で世を去った英国の異才。ろうそくの光をたよりに、精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる、きわめて洗練された作品を描きつづけた。

 本展は、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)との共同企画。出世作のマロリー著『アーサー王の死』(1893-94)や日本でもよく知られるワイルド著『サロメ』(1894)、後期の傑作ゴーティエ著『モーパン嬢』(1897)をはじめとする、初期から晩年までの挿絵や希少な直筆の素描に加え、彩色されたポスターや同時代の装飾など、約200点を通じてビアズリーの芸術を展覧する。

会期:2025年2月15日~5月11日
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00 (祝除く金、第2水、会期最終週平日、4月5日は~20:00) (入館は閉館時間の30分前まで)
休館日:月(2月24日、3月31日、4月28日、5月5日は開館)
観覧料:一般 2300円 / 大学生 1300円 / 高校生 1000円※詳しくは公式サイトを確認してほしい

「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」(水戸芸術館 現代美術ギャラリー

近藤亜樹 ザ・オーケストラ 2024 ©The artist. Courtesy of ShugoArts. 撮影=武藤滋生

 茨城・水戸の水戸芸術館 現代美術ギャラリーで「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」が開催される。

 近藤亜樹は、東日本大震災の余波に人々の心が揺らぐ2012年に画家としてデビュー。日常の事物や記憶に残る人々の面影、植物、幼子の言葉といったプライベートなモチーフから、生と死や超越的な自然の力といったテーマまでを自身のなかに受け止め、それらを描くことで異なる者同士が「いま・ここ」につながりあう世界を展望してきた。ときに抗しがたい出来事に向きあい、他者の存在やつながりを感じ取るなかで生み出されてきたその作品は、小さくささやかな存在や名状しがたい兆しに光をあて、人間の感受性を呼び覚ます。

 本展では、生への肯定や他者とともにあること、人間的な尺度を越えた自然の世界、植物とのささやかな交感、芸術の根源に対する問いなどをテーマに、絵画表現の可能性を切り開く近藤の現在を、建築家・青木淳による展示構成によって展覧。会場では、近藤の2022年以降の作品と、今展に向けて制作された50点を越える新作を一挙に展示する。

会期:2025年2月15日~5月6日
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
開館時間:10:00~18:00 ※入場は17:30まで 
休館日:月(ただし、2月24日、5月5日は開館 )、2月25日
料金:一般 900円 / 高校生以下、70歳以上、障害者手帳などをお持ちの方と付き添いの方1名は無料

「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」(サントリー美術館

エミール・ガレ ランプ「ひとよ茸」 1902年頃 サントリー美術館

 サントリー美術館で「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」が開催される。

 エミール・ガレ(1846〜1904)の没後120年を記念する本展では、ガレの地位を築いたパリとの関係に焦点をあて、ガレの創造性の展開を顧みる。フランスのパリ装飾美術館から万博出品作をはじめとした伝来の明らかな優品が多数出品されるほか、近年サントリー美術館に収蔵されたパリでガレの代理店を営んだデグペルス家伝来資料を初公開する。

 ガレとパリとの関係性を物語る、ガラス、陶器、家具、そしてガレ自筆文書などの資料類、計110件を通じて、青年期から最晩年に至るまでのガレの芸術世界を展覧する。※会期中展示替えあり

会期:2025年2月15日~4月13日
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4(東京ミッドタウン ガレリア3F)
電話:03-3479-8600
開館時間:10:00~18:00※金、3月19日、4月12日は〜20:00 ※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火(4月8日は18:00まで開館)
観覧料:一般 1700円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下 無

「今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト 〈感覚の点P〉展」(東京都渋谷公園通りギャラリー

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  東京都渋谷公園通りギャラリーで、「今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト 〈感覚の点P〉展」が開催される。会期は2月15日〜5月11日。

 本展タイトルの「感覚の点P」とは、数学の問題に用いられる「任意の点P」を「ある人が持つ独自の感覚」になぞらえたもので、ひとりひとり異なる感覚を通して、多様な世界の在り方にふれてみることを試みることを表している。

 目の見える今村遼佑と全盲の光島貴之、ふたりのアーティストによるリサーチは2022年に石庭を眺めることから始まり、見える人もしくは見えない人のように、二項対立構造的な説明では表現できない複雑さをもってきた。その内容は、野外彫刻や森の木にふれる、点訳本(点字図書)について考察する、光島の感覚をたどりながら近所を歩く、スルーネットピンポン(誰もが同じルールでプレーできるバリアフリースポーツ)をするなど、多岐に渡ふ。本展では、10件を超えるリサーチの記録を一堂に展示・報告する。

会期:2025年2月15日〜5月11日
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
住所:東京都渋谷区神南1-19-8
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月 (2月24日、5月5日は開館)、2月25日、5月7日
料金:無料

「来たる世界2075 テクノロジーと崇高」(GYRE GALLERY

展示風景より、井田大介《シノプテス》(2023)

 技術が人間のスケールや理解の限界を超え、引き起こす畏怖や不安を「技術的崇高」と称し、それを感じさせる作品を紹介する展覧会「来たる世界2075 テクノロジーと崇高」が、東京・表参道のGYRE GALLERYで開幕した。企画は飯田高誉、キュレーション・展示統括は高橋洋介。会場レポートはこちら

 本展の狙いについて高橋は「これまでの自然とつながる崇高ではなく、技術とつながるものとして、新たな崇高のかたちを考えたい」と本展の狙いについて語っている。

 本展の参加作家は、アンドレア・サモリー、牧田愛井田大介、イオナ・ズールの4組。会場では哲学者ユク・ホイとニース近現代美術館館長エレーヌ・ゲナンによる特別寄稿も読むことができるので、作品とあわせて確認してほしい。

会期:2025年2月11日〜3月16日
会場:GYRE GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
電話番号:0570-05-6990(ナビダイヤル)
開館時間:GYREに準ずる
休館日:2月17日
料金:無料

内藤礼「breath」(タカ・イシイギャラリー 六本木

内藤礼 タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください) 2023 水、ステンレスに塗装 ミュンヘン州立版画素描館「breath」展展示風景 撮影=畠山直哉

 昨年、東京国立博物館銀座メゾンエルメス フォーラムで「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」を開催した内藤礼が、タカ・イシイギャラリー 六本木で新たな個展「breath」を開催する。会期は2月15日〜3月29日。

 本展で発表されるのは《color beginning / breath》だ。同作は2020年、紙に絵具を置き「色彩(生)」が顕れた瞬間に心に沸き起こる純真な驚きと喜びの経験を契機とし、人間の無意識を見つめようとした《color beginning》から始まった平面作品。同作品群は2023年にMtK Contemporary Artで発表され、ミュンヘン州立版画素描館での展覧会へとつながっていった。

 また「生まれておいで 生きておいで」では《color beginning / breath》へと発展し、縄文時代の土製品との出会いを通して、何億年もの間にこの世から旅立った幾多の生を投影する空間としての広がりを持ち始めた。本展で発表される《color beginning / breath》がどのような景色を見せてくれるのか、注目が集まる。

会期:2025年2月15日〜3月29日
会場:タカ・イシイギャラリー 六本木
住所:東京都港区六本木6-5-24
開館時間:12:00~19:00
休館日:日月祝
料金:無料

佐々木類個展「不在の記憶」(WALL_alternative

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 エイベックス・クリエイター・エージェンシーが運営するオルタナティヴ・スペース「WALL_alternative」で、佐々木類の個展「不在の記憶」が開催される。会期は2月14日〜3月8日。

 佐々木は1984年高知県生まれ。北欧やアメリカを中心に滞在制作を行い、国内外の美術館で活躍している。最近の個展には、2023年にアメリカのポートランド日本庭園で開催された「Subtle Intimacy: Here and There」や、24年のアートコートギャラリーでの「雪の中の青」などがあり、ニューヨーク・タイムズ紙や日本経済新聞でも特集が組まれるなど、国際的に注目されている作家。また、その作品はラトビア国立美術館や金沢21世紀美術館など、多くの美術館に収蔵されている。

 佐々木は、身近な自然や生活環境にインスピレーションを得て、その土地や場所に関連する記憶をガラスという素材に封じ込める。これまでに、金沢で採集した植物をモチーフにした「土地の記憶」シリーズや、「忘れじの庭」シリーズを発表しており、今回の個展では、さらに新たな試みとして、西麻布を中心とした地域で採集した植物を使用した作品を展示する。

会期:2025年2月14日〜3月8日
会場:WALL_alternative
住所:東京都港区西麻布4-2-4 1F
開館時間:18:00〜24:00
休館日:日
料金:無料・予約不要 ※2月14日・15日の一部時間のみ事前申込が必要

「積丹温泉芸術祭」(岬の湯しゃこたん)

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 北海道積丹町にある温泉施設「岬の湯しゃこたん」を舞台に、実験的な芸術祭として「積丹温泉芸術祭」が初開催される。会期は2月15日〜24日の10日間。

 同芸術祭では、道内外の現代アーティストらを中心に招待し、岬の湯しゃこたん内外に作品が展示される。参加アーティストおよびクリエイターは、高橋喜代史、SUMA、Chim↑Pom from Smappa!Group、加藤翼、クスミエリカ、OBA、小町谷健彦、荒井純一ら。

 また、岩内町の荒井記念美術館の協力でピカソによる作品3点を展示する「BARピカソ」も出現するという。

会期:2025年2月15日〜24日
会場:「岬の湯 しゃこたん」および周辺エリア
住所:北海道積丹郡積丹町野塚町