2025.2.19

江戸時代の「メディア王」の顔に迫る。特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が東京国立博物館で開催へ

江戸時代後期の出版業界に多大な影響を与えた蔦屋重三郎(1750〜97)。その業績を紹介する特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が、4月22日~6月15日に東京国立博物館で開催される。

礒田湖龍斎筆 雛形若菜初模様 丁字屋内ひな鶴 安永4年(1775)頃 東京国立博物館蔵 展示期間:前期(4月22日~5月18日)
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 江戸時代の傑出した出版業者・蔦重こと蔦屋重三郎(1750〜97)の業績を紹介する特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が東京国立博物館 平成館で開催される。会期は4月22日~6月15日。

 蔦重は、浮世絵師・喜多川歌麿や東洲斎写楽を世に送り出し、江戸時代後期の出版業界に多大な影響を与えた人物。また、浮世絵や戯作、狂歌など、様々な文化的コンテンツを結びつけ、時代をリードする存在となった。蔦重の出版した作品は、当時の江戸の人々にとって新たな楽しみと刺激を提供し、出版業界における「メディア王」としての名を馳せた。

北尾重政・勝川春章画 青楼美人合姿鏡 安永5年(1776) 東京国立博物館蔵 展示期間:通期展示 ※会期中、頁替えあり

 本展では、蔦重の多岐にわたる出版活動を、約250点の作品を通じて紹介する。会場は3章と附章で構成される。

 蔦重の出版活動は、たんに本を発行するだけでなく、時代の流れを読み取り、優れた作者を見出し、彼らの才能を最大限に引き出すことにあった。第1章「吉原細見・洒落本・黄表紙の革新」では、彼が手がけた情報誌『吉原細見』や黄表紙、洒落本など、江戸文化の発展に寄与した作品が展示され、蔦重の出版活動がどれほど時代を先取りしていたかが明らかにされる。

山東京伝作 箱入娘面屋人魚 寛政3年(1791) 東京国立博物館蔵 展示期間:通期展示 ※会期中、頁替えあり

 また、狂歌が隆盛を極めた天明期には、蔦重が「蔦唐丸」として狂歌活動を展開し、当時の文化人たちとの交流を通じて狂歌集や狂歌絵本を世に送り出した。第2章「狂歌隆盛――蔦唐丸、文化人たちとの交流」では、江戸文化を広めるプロデューサーとしての蔦重の顔を取り上げる。

宿屋飯盛撰/喜多川歌麿画 画本虫撰 天明8年(1788) 千葉市美術館蔵 展示期間:前期(4月22日~5月18日、後期は別本を展示)
平賀源内作 重要文化財「エレキテル」 江戸時代(18世紀) 郵政博物館蔵 展示期間:前期(4月22日~5月18日、後期は複製を展示)

 さらに、浮世絵の分野では、蔦重は歌麿や写楽、栄松斎長喜などの絵師を発掘し、その魅力を最大限に引き出して出版した。第3章「浮世絵師発掘――歌麿、写楽、栄松斎長喜」では、歌麿や写楽が人物の内面を描き、江戸時代の人々の感情や個性を映し出す「大首絵」といった蔦重版の特徴的な作品を楽しむことができるだろう。

喜多川歌麿筆 婦女人相十品 ポッピンを吹く娘 寛政4~5年(1792~93)頃 東京国立博物館蔵 展示期間:前期(4月22日~5月18日)
喜多川歌麿筆 歌撰恋之部 物思恋 寛政5~6年(1793~94)頃 東京国立博物館蔵 展示期間:後期(5月20日~6月15日)

 なお、本展では現在放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)との連携展示も見どころだ。附章「天明寛政、江戸の街」では、蔦重が活躍した江戸時代の街並みが再現され、来場者は当時の江戸にタイムスリップしたかのような体験ができるという。

 江戸時代の出版業界を革新した蔦屋重三郎の足跡をたどり、彼が送り出した様々な作品を知る機会となる本展。この展覧会を通じて、江戸時代の文化の奥深さを感じ取ってみてはいかがだろうか。