2025.3.11

「鴨治晃次 展|不必要な物で全体が混乱しないように」がワタリウム美術館で開催。66年ぶりの帰国展

ワタリウム美術館で、ポーランドを拠点に活動する美術家・鴨治晃次の日本初の展覧会「鴨治晃次展|不必要な物で全体が混乱しないように」が開催される。会期は4月8日〜6月22日。

鴨治晃次 静物 2003/2013 水、グラス、アルミニウム板 作家蔵 photo: Hans-Wulf Kunze 2025.3.1

 東京・外苑前のワタリウム美術館で、ポーランドを拠点に活動を続ける美術家・鴨治晃次の日本初の展覧会「鴨治晃次展|不必要な物で全体が混乱しないように」が開催される。会期は4月8日〜6月22日。

 鴨治は1935年東京生まれ。1953年から58年にかけて武蔵野美術大学で麻生三郎、山口長男に師事した。伯父の梅田良忠(東欧史学者、ポーランド文学翻訳家、ワルシャワ大学日本語講師)の話に影響を受け、ワルシャワ留学を決意。59年、ポーランドへの船旅に出る。2ヶ月半の航海で感じた空間、水、空気の感覚はその後の鴨治の作品に大きな影響を与えた。

 1960年ワルシャワ美術アカデミー入学。画家アルトゥール・ナハト=サンボルスキーのもとで学び始め、66年に修了。65年、クラクフのクシシュトフォリー・ギャラリーでレシェック・ヴァリツキとともに初めての展覧会を開催。アカデミー卒業後の67年にはフォクサル・ギャラリーで活動を始めた。その活動はポーランドの現代美術の発展史において重要な役割を果たしており、現在もポーランドを拠点に活動を続けている。

 本展は、鴨治の小回顧展として、ポーランドのザヘンタ国立美術館とアダム・ミツキェヴィチ・インスティテュートによって企画されるもの。鴨治の60年代から今日までに制作された約20点の絵画、9点の立体作品、80点のデッサン、3点のインスタレーションが展示される。

 本展で展示されている「お寺の壁に」シリーズ(1963-1967)や《ラグーン》(1964-67)など、60年代半ばに制作された「プルシュクフ絵画群」と呼ばれるレリーフのような絵画シリーズは、作家の制作活動の出発点を思い起こさせる重要なものとなる。

 また、日本の伝統に影響を受けたとされる、抽象絵画と中央に置かれた石のインスタレーション《二つの極》(1972)や、友人の自死という悲劇的な出来事への回帰が作品として表現された《佐々木の月》(1995)といった作品も展示。さらに、数年かけて制作した一連の《デッサン》(2011-15)など、一貫して紙と筆と墨と白い絵具だけを使ったシンプルな作品も見どころとなる。