松方コレクション流転の歴史。国立西洋美術館「松方コレクション展」でモネの大作復元後の初公開も
国立西洋美術館開館の礎となった、実業家・松方幸次郎のコレクションである「松方コレクション」。その100年におよぶ歴史を振り返る展覧会「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」が、6月より開催。本展では、修復を経たモネの大作《睡蓮、柳の反映》が初公開される。
神戸の実業家・松方幸次郎が、1910年代半ばから1920年代半ばにかけて収集した西洋美術のコレクション「松方コレクション」。その歴史を振り返る展覧会が、国立西洋美術館で6月より開催される。
「松方コレクション」は、モネやマネ、ゴーギャン、ゴッホなど近代フランス美術の名品を含む一大コレクションとして知られているが、その歴史には紆余曲折があった。当初、パリで買い戻した浮世絵約8000点を含めば1万点ほどにおよんだ松方コレクションだったが、関東大震災と昭和金融恐慌によってコレクションは散逸。ロンドン(約900点)、パリ(約400点)、そして日本(約1000点以上)で分散したコレクションはそれぞれの道を辿ることとなった。このうち、パリから戦後返還された375点が、1959年の国立西洋美術館開館へとつながっていく。
本展では、「松方コレクションとは本来どのようなものだったのか」「松方コレクションはどのように形成され、散逸したのか」を軸に、時系列で会場を構成。
モネ《睡蓮》(1916)やロダン《考える人》(1881-82)をはじめとする国立西洋美術館所蔵(松方コレクション)の代表的な作品が並ぶのはもちろん、ゴッホ《アルルの寝室》(1889)など、過去に散逸し、現在は別の所有者のもとにある「元松方コレクション」が集結する機会となる。
加えて、本展には大きな注目ポイントが二つある。
まずひとつ目は、松方コレクションのガラス乾板だ。これは、2018年7月にフランスの建築文化財メディアテーク写真部門で発見されたもので、ロダン美術館礼拝堂に保管されていた348点をフランス人カメラマンのピエール・シュモフが撮影したもの。本展ではこれらのうち一部(10点前後)が公開される。
次いで注目したいのは、60年にわたって行方不明だったモネの大作《睡蓮、柳の反映》(1916)の修復後初公開だ。同作は、2016年9月にパリ・ルーヴル美術館の一角で発見された横幅約4メートルの大作で、18年にその詳細が発表された。発見時には作品の大半が欠損しており、1年間にわたり修復が続けられてきたが、今回の展覧会で初めて展示(現存部分のみを展示)。同館研究員・邊牟木尚美によると、この欠損は「大変酷い状態」で、これだけの大作を扱った大規模な修復作業は「世界的にも珍しいケース」だという。
本展はこれら様々な作品を通して、日本を代表する西洋美術コレクションである松方コレクションの歴史を振り返る貴重な機会となる。